表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/53

【おまけ7】天誅と天罰と慈悲?(前)




 拙作にお立ち寄りいただきまして、ありがとうございますm(_ _)m



 前後編です。




 ※おしらせ※


 【おまけ5】冬休みと空飛ぶ毛糸? にて、主人公が馬車に乗ってしまったので、修正いたしました。彼女のお小遣いでは 馬車ではなく獣車じゃないと乗れませんm(_ _)m






「ねぇ、アーシャ。僕とデートしよ♪」



 そう言って にっこり微笑むのは、そこらの女の子よりも可憐な天使である。うん、とても可愛らしい。和む。おませさんにも「でーと」とか言っているのが、逆に微笑ましさを加速させている。



「ん。どこ行く?」



「あれ? デートだよ? 良いの?」



「ん。おでかけでしょ?」



「う~ん、まぁ、そうなんだけどさ」



 ちょっと拍子抜けした様子で「なんか思ってたのと反応が……」なんて言っているけれど。要は2人でおでかけである。ティタリアも一緒にだったけど ウォルセンとおでかけするのは初めてでもないし、彼の軽い調子も相俟って 友達同士の気安い軽口として簡単に承諾する。




 今は年が明けて5日ほど経った日の朝である。主要な式典を終えたらしいウォルセンは、早々に学校へとやってきて 私の周りに出没しては“元気の補充”をしているそうだ。よほど お貴族様たちに辟易していたらしい。


 そんなウォルセンに誘われて行くことになったのは、先日の毛糸屋さんだ。今も彼の両手を包む手袋の素材に興味を持った妾妃様ことウォルセンのお母さんに、毛糸を買ってきて欲しいと頼まれたそうだ。彼(いわ)く、元気で明るい方みたいだけど……なんでも、昔の怪我が原因で足がお悪いのだとか。だから、自分でふらっと買いに行けないのを残念そうにしながら「代わりに買ってきて」と 言われたそうだ。自分で買いに行きたいとか、妾妃様 意外とアクティブだな。



「じゃあ、僕はクリスティン保健師への伝言と馬車の手配をしてくるから用意しておいで。正門で待ってるからね。……できれば、明るい所でこの前の格好が見たいな~。僕のあげた髪留めも付けてくれたら嬉しいんだけどな~(チラチラ)」



「……ん」



 とてもわざとらしい。先日から立て続けにアレを着ている気もするけど、リクエストとあらば仕方ないか。他に デート(笑)に着て行ける服も……実は 化粧品のお礼に“お下がり”とかもいただいたから、あるにはあるんだけどね。むしろ、そっちの方が皇子様とのデート(笑)には相応しいのではなかろうか?


 あと、あの髪留め。普段使いとか怖すぎてできないので いつものやつを付けてたんだけど、やっぱり使わないとダメだろうか……。壊しちゃったらどうしよう。



 そんなことを考えながら 医務棟(アルバイト)へ行こうとしていた足を部屋へ向け、ウォルセンを待たせないように急いで着替える。




~*~*~*~




(気まずい。非常に気まずい……)



 聖都の商業区画へ向かう馬車の中。ウォルセン(皇族)用なので、乗り心地は 一人で買い物に行った時の乗り合い獣車とは雲泥の差なのだけれど……。



(なんだか ものすごく睨まれている気がして仕方ないんだけど)



 にこにこと機嫌よく向かいに座っているウォルセンの隣にいる護衛の人。ナゼかは知らないけど、目力で威嚇でもしているのかと思ってしまうほど 鋭い眼差しで見下ろされている。なんか よくわからないけどゴメンナサイ。



「確か、アーシャが毛糸を買ったお店は 大通りから路地に入った所にあるんだったよね? だったら、せっかくの“デート”だし 商業区画の入り口で馬車を降りて 大通りを少し散策してから買いに行こうよ」



「ん。賛成」



 あくまで デート(笑)に拘るらしいウォルセンに 癒されながら、ちょっぴり気取ってエスコートしてくれる彼の手を借りて馬車を降り、そのまま手を繋いで大通りを歩き出す。はぐれて迷子になったら大変だしね。どちらが とは言わないけど。護衛さんは、ウォルセンに言われて渋々と距離を開けて付いてくるようだ。



 歩くうち、野菜や果物の並ぶ八百屋さんから漂う果物の甘く爽やかな香りに 私が釣られそうになったり、こちらを向いていたウォルセンが後ろの魚屋さんの威勢のいい呼び掛けに びくっとして おじさんに平謝られていたり、品揃えが良くてお手頃価格なアクセサリーの露店商の品物を手に取って見せてもらう私の横で、なにやら衝撃を受けたらしく「や、安……」と呟くウォルセンがいたりした。そういえば、庶民が多いこっちの方は初めてなんだっけ?



(さもありなんってやつだね。ほとんど身分の頂点にいるんだから、感覚が違うのも仕方ないのかな)



 折角だから庶民の味覚も味わってもらおう。少し早いけど、お昼は屋台で 細く刻んだジャガイモとベーコンに軽く味を付けて薄く焼いただけのカリカリなガレットとか、やきとり…ではなく ほんのり焦げ目の付いた何かのお肉の肉汁じゅわっと滴る串焼きなど、庶民っぽいものを買ってみた。


 支払いでウォルセンが金色の何かを出そうとして お店の人と私の目がチカチカするアクシデントもあったけれど、ささっと出てきた護衛さんがウォルセンの手から眩い金色を取り上げて 代わりに少し優しい輝きの銀色をそっと乗せてくれたお蔭で 事なきを得た。金色が出てきたウォルセンの硬貨入れに、9枚ずつ小さい金色と銀色を足してから 取り上げた金色を懐に仕舞った彼は、硬貨入れを返却して 素知らぬ顔で自分の分も買って去って行った。お主、やるな。



 何はともあれ、温かいうちにいただこう。戻ってきた小さな銀色や銅色をしげしげと眺める お坊っちゃま(ウォルセン)を促して、買ったものを手に 少し移動する。






「ちょっと野趣に溢れた調理法だけど、思ったよりずっと美味しいね」



「ん」



 大掛かりな結界でもあるのか、屋外なのにあまり寒くない広場に点在するテーブルのひとつ。


 始めは恐る恐る口に入れていたウォルセンだけど、一口食べて目を丸くしてからは にこにこしながら食べている。意外と適応力が高い。


 学校にある 庶民も出入りする大食堂と比べても、もっと簡素で質素なものばかりだが、妙にクセになって時々食べたくなるような素朴な美味しさなのだ。……ハズレの屋台は酷いけどね と、思いながら 私は葉物野菜やチーズやハムを挟んだ小ぶりなベーグルっぽいものを もきゅもきゅと咀嚼する。良かった。これも 普通に美味しい。






『ごちそうさまでした』



 流石に 歴史の中で日本人らしき名前がチラチラしている国である。ファンタジニアス(この国の名前。覚えてる?)にも ばっちり「いただきます」と「ごちそうさまでした」が浸透している。お蔭で、転生者として一人だけ挨拶が違って奇異の視線を浴びる などという事態は避けられているのでありがたい。



「じゃあ、そろそろ 毛糸を買いに行こうか? そこの路地に入って少し奥の方なんだよね?」



「ん。本屋さんと雑貨屋さんの間の道。赤い屋根で木の看板の……古めなお店だった」



 ボロいとは言っちゃいけない。お婆さんはいい人だったし、毛糸の質はとても良かった。きっと、値段が良心的すぎて利幅が小さいせいなのだ。今日は私は買えないけど、ウォルセンが色々と買うって言ってたから 少しは恩返しになったら良いな。“皇族も買い求める毛糸”って感じで大繁盛したり。


 とりとめの無いことを考えながら入った毛糸屋さんのお婆さんは、以前 来店した私を覚えていたようである。ウォルセンの手袋を見ながら「おやおや……素敵ねぇ」と糸目がシワに隠れそうなほど微笑む。そんなお婆さんから 今度は無事に毛糸を購入した私たちは、大通りに向かう道を歩いていた。

 


「アーシャ、ちょっとだけ付いてきて」



「?」



 小声でそう言うやいなや、 私の手を引いて急に走り出したウォルセンと共に路地の曲がり角を曲がる。帰り道はこっちじゃなかったハズだけど。そのまま奥に走り出す……と、見せかけて 建物の出っ張った柱の陰に身を寄せた。



「どうして……」



「し。静かにね《影よ》」



 そして、ご丁寧にも闇魔法でほんの少し この場所の影を濃くして隠れようとしているようだ。すぐ近くを 護衛さんが駆け抜けて行った。



(あらら。ウォルセンって、結構 悪戯っ子なところがあるよね。今回は私も共犯になっちゃったけど)



「さぁ、アーシャ、今だよ」



 そして、私はウォルセンに手を引かれるまま、護衛さんの駆けて行った方とは逆に走り出す。






 寂れた古本屋、怪しげな魔法具店、夢のように浮世離れした雰囲気の小物店に、やけに丁寧な対応のイケメン薬屋さん。護衛さんを撒いてしまった私たちは、興味の向くままに大通りとは違った風情の路地のお店を冷やかしてゆく。正直なところ、すごく楽しい。幻想(ファンタジー)小説に出てきそうなお店もあって、つい テンションが上がってしまったりもした。



 それでも、路地を彷徨くうちに人気のない奥まった場所まで来てしまい 流石にそろそろ護衛さんに合流して帰らなきゃダメかな と思い始めた頃。長い前髪に目もとが隠れた陰気な雰囲気の中年近い男に声をかけられた。



「少々よろしいかい? 君、すごく可愛いねぇ……」



「アーシャ、下がって。何のご用かな? 僕たちはそろそろ帰らないといけないんだけど」



「なぁに、すぐに済む用事なんだがね」



 粘っこい口調で 歯を剥くようにして笑う男は、警戒心も露に後退さる私たちを路地の壁際に追い詰めるように歩み寄り、前髪から覗く目をぎらぎらさせて、勢い良く両腕を掴んできた。






 ……ウォルセンの。






「ふひひ、なんて可愛い少年だろうなぁ……俺と少し遊んでくれないかなぁ?」



((……変態(ホンモノ)だ!!!))



 たぶん、この時の私とウォルセンが上げた心の叫びは 同じだったのではなかろうか。









 続きは明日。ウォルセンの運命や如何に!!




~*~*~*~



 我が子が後生大事に持ち歩く手袋。もちろん“母さん”が見逃す筈ありません。質問攻めです。


 手袋を編んでくれたという“友達”の説明をする殿下の様子をつぶさに見つめ、ニヤニヤしながら「良い毛糸だから私も欲しいけど、この足じゃね~。誰か、その子と一緒に買ってきてくれないかな~? あ、でも 2人きりで出掛けたら デートと間違われちゃうかな~(チラチラ)」という お願い(入れ知恵) が なされたかもしれない。




 そして、殿下と真の“安物”との邂逅。流石に出歩けない“母さん”では庶民の感覚を語って聞かせられても、実感させるのは難しかった模様。一応 銀色や銅色の硬貨の存在は知っている。


 豊饒祭の食べ物や主人公へのお菓子は誰が買ったかって?


 彼にも雑用や伝言をさせる者の1人や2人くらいは付いているのですよ。物語では姿が見えないですが(8話とかで存在を匂わせていたつもり)。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こぼれ話や番外なお話→ 欠片の一粒~小話をします~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ