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【おまけ4】主人公は知らない




 拙作にお立ち寄りいただきまして、ありがとうございます。



 おまけの()()()は“後付け”と“思い付き”でできていますm(_ _)m ……【おまけ2】の後書きを書いていた時点では、こうなる予定は無かったのですが( ̄▽ ̄;)






〔とある薬屋視点〕




「は~ぁ……今月も赤字か~ぁ」



 目の前にあるのは、文字は黒いけれど 今月も真っ赤っ赤な 店の出納帳。何度となく見返してみても、現実(数字)は都合の良い値に変わってはくれない。うぅ、世知辛い。



「やっぱり、聖都で出店とか 早まっちゃったかな」



 私はしがない薬屋の店主 兼 調薬師だ。幼い頃から聖都に近い街の大きな薬屋で修行をし、コツコツ貯めていた資金を元手に1年前から聖都に小さな薬屋を開いたけれど……今は経営不振に喘いでいる。


 修行していた店の徒弟の中でも 私の調薬の腕は頭ひとつ分ほど抜きん出ていて、可愛がってくれた師匠は、私の夢であった独立を 惜しみながらも応援してくれた。きっと、聖都で一旗上げてみせる と意気込んではいたものの、人も物も集まる聖都の熾烈な顧客争奪戦から 見事に弾き出されてしまった。



「もう少し 質を落としてでも、安くして多く売るべきなのかな……」



 より良い物を作りたい自分の信条を思うと、なるべくなら避けたい。しかしながら、貴族に売ろうにも伝は無く、庶民に売るには割高であるこのお店の薬は どうにも売れにくい。それでも、僅かながらに「ここの薬が良い」と言って買いに来てくれるお客も居るので、今まで意地を通してきた。……が、そろそろ限界のようだ。




「それは ちょっと困るかな」



「っ!? すみませんっ! いらっしゃい…ま……せ……?」



 物思いに耽るうちに零れていた独り言へ返ってきた応答の声に胆を潰して、慌てて お客へ対応しようと立ち上がるが。



「ここの薬を少し見せてもらっても良いかな?」



「は? ……あ。はい!お好きなだけどうぞ!!」



 出入り口に佇んで居たのは、保護者と言うよりは護衛らしき男を従えた小さな令嬢……じゃないな、小さな若君だ。どちらにしても、身体をすっぽりと覆う長いローブの質やチラリと見える靴と装飾品、そして 気さくなようでいて傅かれることに慣れた様子の物腰を見れば、こんな小さな薬屋へ薬を買いに来ずとも「具合が悪い」の一声で 立派な店や診療所でふんぞり返っている 一流の調薬師や治療師が、血相を変えてお屋敷に飛んで行くような身分のお子であるように見える。冷やかしにしても物好きな御方だ。




「わ、若君様……何かお探しの物でもございましょうか?」



 それでも、お客はお客だ。震える膝を叱咤して、なけなしの勇気を掻き集め、熱心な様子で並べられた薬の見本を検分する若君に声を掛ける。



「うん。実はね、腕が良くて、ある程度 自由が利いて、僕の要望へ柔軟に応えてくれそうな 若い調薬師を捜しているんだ」



 薬を置いて振り向き、ニコリと微笑んで 探し物(捜し者)の条件を話す若君に 自然と喉が鳴る。これは、大きな商機か はたまた危険な商談か……。無邪気そうに ニコニコと笑う若君の表情からは、何も読み取れない。






「わ、私の力が及ぶ限り、ご期待に添えるよう尽力致します」



 確実に分かる事は、この若君の機嫌を損ねる事があれば、私なぞ 店諸共 聖都から簡単に吹き飛ばされてしまうだろうと言う事だ。彼に目をつけられた時点で、望みに応えるか 拒んで破滅するか のどちらかしか残っていないのではないか と、本能が全力で警鐘を鳴らしている。



「うん、良かった。なかなか条件に合いそうな人がいないから、少しだけ困っていたんだ」



 少女のような甘やかな笑顔へ 微かに困った雰囲気を滲ませた若君の言葉に、3軒先の斜向かいにあった 私から言わせれば粗悪な薬で荒稼ぎしていた薬屋が、先日 急に店を畳んだ事を思い出した。彼とは無関係であって欲しいと切望した。



「じゃあ、今日は様子見のつもりだったから 詳しい話は専門家も交えてまた今度ね。とりあえず手付金を渡しておくね。もう少し美味しいものを食べて血色を良くして、身綺麗にしておいてくれるかな」



「お、仰せのままにっ」



 微かな金属音と共に、目配せを受けた護衛から私に手渡されたのは……我が価値に曇りや汚れなど許されない とばかりに燦然と輝く数枚の大金貨。手付け金と言ったよな? この若君、店の負債ごと私を買い上げるつもりか?



「よろしくね」



「は、はい!! またのお越しをお待ち申し上げておりますっ!!」



 寂れた扉を潜り、ちらつく雪さえも畏れ多いとばかりに避けて落ちるかのような 若君の後ろ姿へ深々と 頭を垂れ(跪い) たまま、未だに現実感の薄い意識で、手の中で確かな感触を持って存在を主張する 大金貨を今一度見やる。私は一体“何者”と契約を交わしてしまったのだろうか。






 何故か思い出されるのは、古来から母親が幼子に語り聞かせる伝承のひとつ……禁術によって異界より招き入れられ、恐ろしい対価と引き換えに人の欲望を満たすと言う“ディヴィラ”や“サターヌ”と呼ばれる 美しくも狡猾にして凶悪なる魔物の話だった。









 決して、若君が破滅させる訳ではありません。経営不振で勝手に破滅するのを、特に何もせずに見守るだけです。


 そして残念な事に、閉店したお店と無関係ではありませんでした。


 見るからにお金持ちそうな お嬢ちゃん(見抜けなかった)に、色々とぼった……売りつけようとした所で、調薬の荒さや管理の悪さを流れるように次々と指摘され、信用と自信がボロ雑巾のようになった挙げ句に 護衛から“お嬢ちゃん”の正体を耳打ちされ、店主は夜逃げするように聖都を去りました。……という 何の意味もない裏事情ばかり浮かんでくるんです。助けてください(´;ω;`)



[ゆる~い設定]


《大金貨》


 とりあえず、その日暮らしの庶民には 目も眩むような大金。生活に困っていない“とある若君”には 毎年決まった額を お小遣い的に貰う(支給される)けれど、時々 異国の珍しい土産物を買う以外で 特に使う予定も無く「未来への投資に使えばいいか」と思い立って少しずつ使い始めた程度のもの。……無駄遣いをすると庶民派な“母さん”に怒られます。



《ディヴィラとサターヌ》


 ハイ。雰囲気でお察しかもしれませぬが、地球で言うところの デビル(悪魔)サタン(魔王)のようなものです。小悪魔とか堕天使的な意味合いなら、危機察知能力の冴え渡る調薬師さんの喩えはそう間違っていないかも??? バチ☆……_(⌒(_×ω×)_~゜

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こぼれ話や番外なお話→ 欠片の一粒~小話をします~
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