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04 昼飯時の喧騒


 此度は楽しい楽しい昼飯時。ここの食堂の飯は旨いと評判らしいが簡潔に言う。

 席がなかった。


「がああやっちまった! 悪目立ちはイカンとか言いつつ全力で喧嘩吹っ掛けちまった畜生!!」

「です! 最高に格好良かったですギル様!」


 という訳で、バカ広い校内を適当に散策して暇を潰すお昼どき。マトモな会話も出来ない阿呆を一度一蹴しつつ、二度翻すような勢いで奴を見て。


「つーかそもそも元はと言えば! お前があんな事すっから収拾付かなくなったんだろが! 鉄拳粉砕ってのは抑止力止まりで十二分なんだよ粉砕したの机だけど!」

「あ、あれは! ギル様が。馬鹿に、されていたからで――――ぐす」

「嘘泣きすんな!!」


 そう言って奴の頭を掴むが肩の震えは止まらない。あれこれまさかガチなヤツか――と気付いた頃にはもう遅く、涙が零れる三秒前。ああもうらしくねえなとは思うけれど、そもそもらしくないのは双方最初からだろうと。


「あーもう阿呆が泣いてんじゃねえ。悪気がないことなんざ分かってんの」

「……ぎ、ぎう様!」

「机の弁償分はこっちでお前の給料から引いとくから。心配すんな」

「はう!」


 華麗に飴と鞭を使い分けながら、俺はチラリと周囲に目を回す。そこには道行く生徒達や、お日様と共に飯を食らう健康集団が居るわけなのだが――途端、何人かが慌てて目を逸した様子だった。


「……本当にするもんじゃねえな、悪目立ち」


 首を傾げるレーナを見て。

 やはりこういう所くらいは見習わなきゃと思いつつ。


「うし、レーナ。暇だし飯はねえし腹も減ったし。おさらいでもしとくか」

「了解です! 何のでしょうか!」

「今回俺達がこの学園に通う上でのルール」


 つっても一つだけなワケだけど。

 人差し指を静かに立てるとレーナは頷きながら口を開いた。


「肝に銘じてます!」

「言ってみ」

「ギル様の正体がバレないこと!」


 そう。それが俺とレーナがこの学園に通う上での唯一のルール。まあバレれば何をせずとも学校なんざ通えなくなるのだろうが、誰か一人にでも俺が魔王だとバレれば強制自主退学。エルゼ達と話し合って決めた。


 正体を隠し続ける以外に、ここに留まるすべはない。


「でもまあ、今の所は上手くいってるかな。上々上々悪くない」

「はい! 先程の自己紹介の時も、後ろの輩がギル様に魔王などと無粋なあだ名を付けようとしていたので私が止めさせました!」


 それはもうどうなのだろう。ほぼバレ掛けてるのではあるまいか。

 割ともう駄目なんじゃ無いでしょうか。


「私言ってやりました! ギル様は魔王も戦く大魔王だと言ってやりました!!」

「そうかそうかそれは確かに大丈夫だな歯を食いしばれッ!!」


 とまあそんな風に冗談を交わし合いながら、今の冗談は中々良かったと思いつつ、ねえ冗談だよねと祈りつつ――妙な人混みに俺達はぶち当たった。




 喧嘩かとも思ったが、どうやら決闘が行われているらしい。


 人の円をぐるりと一周するように歩いてみるが、存外数が多く中が見えない。野次馬に加わることを潔く諦めた俺は片方の手を振ってみせる。


「決闘なんて字面で誤魔化しちゃいるが、俺に言わせりゃあんなモン喧嘩以外の何物でもねーよ。野蛮、蛮族、類人猿。見る方もどうかしてるね」

「その通りです。言葉を交わす前に拳で語り合うなんて猿以下です!」


 そんな事を言う鉄拳机粉砕女をの頭を撫ぜるように押さえ付け、くるりと踵を返す。この学園に置ける昼休みという時間はかなり長く、まだ昼飯を食らう時間は十二分にある。そろそろ食堂の席も空く頃合だろう。


「ギル様見てくださいあの木に登れば中が見えそうです!」

「でかした行くぞレーナ!」


 駆け寄ると共に地と幹を蹴り適当な枝に手を掛ける。そのまま軽く揺らして強度を確かめた後、飛び込んで来たレーナを引っ張り枝の根元に乗せてやる猿具合。


 俺とレーナはキラッキラの眼差しを円陣の中心部へと向けて――。


「……うわ」


 決闘を行っていると思しき二人のうち、一人に見覚えがあって嘆息する。見覚えというかもはや同じクラス。言葉的な何かも交したばかり。

 イチャモン大好き金髪縦ロール、ラシャーナ=シャルエルムがそこに居た。


「レーナ。情報収集頼めるか? 全力スマイル引き連れて」

「任せて下さい!」


 そう言って奴はすぐさま木の幹を駆け下りる。奴の阿呆具合を鑑みるに俺が直々に聞き込んだ方が良いのだろうが、如何せん試験の不正の噂が邪魔をするかも知れない。レーナの容姿は聞き込みに持ってこいだろうし、そもそも奴は確かに阿呆だが馬鹿ではないのだ。


 何だかんだで彼女なら多分上手く状況を把握させてくれる。


「どうやら例の金髪と1組の首席による決闘との事です。もちろん学内ですので命のやりとりではありませんが負けた方は退学するとの事です」

「……レーナお前まじか」


 何だかんだ本当に迅速かつ的確な収集をしやがった事実に驚きが隠せません。


「いや、つか退学って。何でまたそんな」

「食堂の席に関するイザコザとのことです」

「…………」


 女って馬鹿だよね。


 そうは思いながらも行く末くらいは見守ってやろうか、というワケで再度円陣の中心部へと目を向ける。決闘ってのはどうやら直剣で削り合うらしく、二人の女が打ち合う度にギャラリーが湧き上がるこの狂いっぷり。


「どう思うレーナ」

「金髪女が負けるでしょうね」


 まあそれもそうだろう、レーナによれば相手は1組の主席とのこと。厳格なカースト制度が施行されるこの学園において、あの金髪女に勝機があると思っている者は野次馬の中にもほとんど居ないだろう。


 でもまあその点においては先程金髪自身が述べた通り。俺が獲物を狩り尽くしたからこそのゼロ組落ちであり、本来奴は主席に選ばれてもおかしくはないレベルの猛者である可能性も――まあ、無きにしも非ずなのだが。


「……開き始めたな」


 そう。次第に実力の差が顕著になり始めた。なにをどうやっても金髪女が1歩出遅れる。スタミナが切れたのか集中が切れたのか、はたまたどこかの主席様が飽きて本気を出し始めたのか――。


 と、その時。俺達が観戦を始めてから三十数手目。ラシャーナ=シャルエルムの持つ直剣が弾き飛ばされる。

瞬間湧き上がるオーディエンス。ゼロは帰れとコールが始まる。


「……は、最低。胸糞悪いが金髪ざまみろもっとやれ」

「ギル様を馬鹿にした報いですね! さっさと泣いて帰りやがれですね!」


 俺達はゆるりと息を吐く。


 この場のエキストラはかなり多い。退学を掛けてというのがもしもその場の成り行きで致し方なくだったとしても、これだけの人数に知れ渡ってしまえばもう知りませんでは済まされないだろう。


 多分、例のくるくる金髪縦ロールを見ることは一もう生無い。


「…………んじゃな」

「はい。ご武運を」


 それはそれできっと清々するのだろうが。

 目覚めが悪いだろうさ。





「マジで馬鹿だろお前」

「…………」


 唐突に空から降って来たいけ好かねぇ野郎がそんな事を言ったのだ。

 そりゃあそんな顔もしますよね。


「相手は首席でお前はゼロ組。試験じゃ実力を出せなかったから学年一位ぶっ倒して認められようとでも思ったか? それとも積もった鬱憤の捌け口も選べない程度に馬鹿なのか? 脳みそ無いなら夢と菓子でも詰めときゃいいじゃないってか?」

「……るさいですわ」


 どうやら割とマジでキてるらしい。

 これじゃ弄ることも呆れることも照れ隠しも出来やしないと思いつつ。


「つーわけで」


 振り返る。


「俺とも一戦いいかな首席殿?」

「今の会話のどこをどう拗らせたらそうなるのよ。と言うか、誰よアンタ」


 彼女は風に真っ赤な髪を揺らしながらそう言った。右手には決闘用と思しき模擬剣。瞳の中で揺れる光は盛る炎のようで、汗一つ無く、冷ややかで。


 暫し眉を潜めて――彼女は気が付いたらしい。


「……アンタ、入学式の日に会った石飛ばし野郎ね」

「それは誰にどう聞いてもお前だからな大炎上女」


 奴は――そう、あの日草むらから出てきた成績優良最低女は。

 やはり息を吐く。


「とにかく俺はあの日小石がぶち当たったおでこが痛くて夜も眠れねえの。だからここで一勝上げて気持ちよく眠ろうって算段だよさあ構えろ」

「……アンタ馬鹿でしょう」


 少し笑うと奴は不機嫌そうに鼻を鳴らす。


「私は一組でアンタはドブ。それも私は首席でアンタは見るからに頭の悪そうな小石野郎。勝機は万に一つだって無いし、そもそもそんな暇もないの」

「縦ロールをイビって遊ぶ暇はあるのにな。可哀想に、退学なんだろ?」


 言うと、赤髪女は一瞬だけ動きを止めた。


「別に、辞めたくないなら無視すればいいじゃない」

「本当に出来ると思ってんのか? このエキストラの数で」

「…………」


 沈黙には嘆息で返そう。


「あーそうかつまりお前あれか。最初はビビらす程度のつもりで決闘吹っ掛けてみたら予想外に乗って来て困ってたクチか。悪りいけどウチの縦ロールはお馬鹿だから喧嘩の文句が安売りしてたら買っちまう馬鹿なんだわ馬鹿だから」


 背後で妙な殺気を感じた気がするけど無視貫徹。

 鈍感それ即ち最強なり!


「決闘しようぜ赤髪女! もし俺が負けたら俺も退学してやるよ!」

「……はあ? アンタそんなの私が受けると思って」

「その代わりもしも俺が勝ったらコイツの退学を取り消せ炎上女」


 その一言でこの場の空気が変わった。妙なイチャモン男が出て来たとザワついていた野次馬共のざわめきが更に増し、目の前の赤髪は目を細め、背後の金髪縦ロールが飛び起きて唐突に俺の後頭部を掴み。


「何を言ってるんですの! そんな気遣いもお節介も大きなお世話で大迷惑ですわ! 外野はさっさと帰って教室の隅で震えてればいいのですわ――」

「いででッ今の外野ははお前だろうが大人しく指でもしゃぶって髪離せ!」


 ようやく自由になった髪を優しく撫ぜつつ地面に転がる剣をたんと踏む。

 くるくると周りながら手中に納まったそれを見て、俺は。


「ルールは?」

「ねえアンタ、やるとは一言も言ってないんだけど」

「ばーかばーかアホンダラ。ムカついたかなムカついたんだろさあ構えろ」


 これには流石の奴も呆れたように踵を返した。

 やべえやべえと掻っ切る奥の手一丁。


「…………この野〇ソ女」

「基本は通常通りの1on1。各自校章結界を発動。相手のそれを破壊することが勝利条件。相手の結界破壊後に攻撃を加えた場合は敗北とする」


 赤髪女のその言葉に背後の金髪縦ロールが狼狽えたのを理解する。

 してやったりと、くるりと、直剣を弄ぶ俺に。


「別に挑発に乗ったんじゃない。アンタの顔を今後一切見なくていいならそれもいいかなと思っただけ。だから、さっきの条件でも手は抜かないから」

「上等」

「私の結界はさっきのがまだ残ってる。アンタもさっさと起動して」


 うん、と首を傾げる俺を見て奴は呆れたように肩を竦めて、自分の襟元を何度かつついて見せる。

 見様見真似でそれを押すと、不可視の魔力に身を包まれるのを感じた。


「蓄積型。衝撃魔法B級相当のダメージまでは防いでくれる。最背式扱いだからバフを掛けるときに変な気は使わなくていいわ」

「気遣い有難う、でも、俺って肉体派じゃん? 魔法って使えねーんだわ」

「…………」


 マジかコイツ本物の雑魚かコイツとでも思っているのだろうか。

 にしても、ちらりと周囲を仰ぐが若干さっきまでよりも人が増えてる気がする。悪目立ちどころの話ではないことも理解している。


「……貴方、ギル=ベルクルス。今ならまだ間に合いますわ、さっさと――」

「ぶっちゃけ殴ってもいいの?」

「当たり前。結界がある以上その剣も魔法も拳も可」


 くるっと右手で放って左手に持ち変える。向こうさんは少し嫌そうにその光景を見ているが咎めることもない。俺は最後に少しだけ肩を竦め。


「終わったら飯をたらふく奢れ」

「は――」

「赤髪」


 くるりと、今までよりも少しだけ高く直剣を放る。

 どこぞのジャグラー顔負けです。


「もういいな」

「良いけど一つだけ」


 今日は快晴。キラリと頭の上で刀身が日光を反射して。

 彼女は言った。


「エルナバード=エルゼベルデ。この名を胸に燃え尽きなさいよ小石男」

「ギル=ベルクルス。マジでおでこ痛いんだからな。泣かすぜ大炎上女」


 何も見上げることなく片手を出す。するとくるりと回転しながら直剣がものの見事に吸い込まれ――掛けたものの空を切って地面へ落ちる。


「……は?」


 アレだけ大口叩いといてコイツ何やってんの――周囲の野次馬共が目を見開き、ダサすぎでしょうと目の前の赤髪が息を吐き、そして、俺は――。


 直剣を回し蹴りの要領で蹴り飛ばした。


「――ッッ」


 それはもはや射出。凄まじい速度で飛来するそれを赤髪は一歩遅れて弾き飛ばし、その裏から突撃する俺に備える――が。


()()()裏だよ油断大敵女」

「な――ッ」


 即座に拾った直剣で斬り下ろすが、奴は紙一重で避ける。

 正直驚いた。


「――この」

「歯ぁ食いしばれよ」


 振り向きザマの土手っ腹に左拳を叩き込む。

 奴は一瞬怯んだように見えたが、飛ぶようにして距離を取り――。


「……は?」


 パリンと、不可視のベールが砕け散った。


「はい俺の勝ち、そんじゃ俺今から縦ロールの金で豪遊するんで」

「なッ、アンタ、ふざけて――」

「ねえよ。不意打ちは立派な上等戦術だ。魔法使えない宣言信じてちんたら斬りかかって来るとでも踏んで余裕かましてた手前の馬鹿を押し付けんな」


 キッと睨んでくるが勝ちは勝ち、ゼロが一組に勝っただの、クズが天才に勝っただののたまいやがるエキストラを一瞥して踵を返す。

 今から始まるはキャッキャウフフの暴食生活、不正だの言われる前に――。


「……待って」

「待てと言われて待つ奴があるかってな真理だと俺は思う訳でじゃな!」

炎の御加護(フェルティオ)



 瞬間。

 背後の空気そのものが爆発した。



「――ッッ!!」


 悲鳴が上がり怒号が駆ける。全身を揺さぶられながらも即座に振り返ると、そこには轟々と燃え盛る何かが陽炎のように揺らめいていた。

 エルナバード=エルゼベルデの全身が真っ赤な炎に包まれていた。


「炎上女が炎上した……」

「不思議なものよね。昔は熱くて熱くて堪らなかったのに、今じゃ冷たい」


 聞いたことがある。それはこのミスルリナが保有する兵士の噂。生まれながらに神に愛され神に触れられ魔力を一切行使せずに炎を操る少女の噂を。


「けど、駄目なのよ。その道程も過程も無駄になる」


 その少女がまるで燃え盛るような赤髪を持っていることを。

 彼女が魔王を殺す最後の希望と呼ばれていることを。


「アンタなんかに負けたら、生きる意味が少し――ブレるのよ」

「――ッッ」


 再びの爆発。思わず顔を覆いながらも斬り掛かる炎の塊を直剣で受け止める。前側の表皮がじりじり焦げる。死ぬほど熱い。


 ふっと息を吐き力を込めて弾き飛ばすが、地面に触れるや否や爆ぜるが如く襲い来る。先程とは力も速度も桁が違う。気を抜けば余裕で負ける。


「……ッ、なあお前、これ自分でやってて理不尽だとは思わねぇの?」

「二回戦目ってだけ。元はと言えば乱入してきたアンタが悪い」


 舌打ちして周囲を見回す。


 しかし野次馬というのは逃げ足が馬鹿みたいに早いらしく、既に人っ子一人居なくなっていた。今なら少し真面目にやっても大丈夫だろうか。


「……とか思ってたのに何でお寝んねしてんのまさか馬鹿なの馬鹿ロール?」

「…………い、いや、腰が……抜けて……」


 うーわーと息を吐いたその瞬間。


「余裕じゃん」

「――ッッ」


 土手っ腹に諸蹴りを食らう。身を捩ったお陰か結界は維持出来たが背後のラシャーナに衝突する。柔らかい気もするがんな事より糞熱い、微かに悶えながらも追撃しようと襲い来る奴に目を向けて、ここで受ければ金髪縦ロールが黒焦げ縦ロールになっちまうと思い――俺は。微かに息を吐いて片手を挙げた。


 途端白い少女がその髪を掻き上げる。



無為紡ぐ白銀鏡(リ・アイギス)



 瞬間、炎が真っ二つに分断されてこちら側が掻き消える。


 それは衝撃をそのまま反射する白き鏡。数ある無属性防御魔法の中でも最強と唄われる白銀の盾。煌々と頬を白虹に照らしながら彼女は言う。


「ご無事ですかギル様! 遅くなり大変申し訳ありません!」

「充分過ぎるぜこの野郎、むしろここまでよく我慢したなこの野郎!」

「簡略詠唱式の速攻魔法ですので本式より脆いですが、この女如きでは――」


 ぴしり、と妙な音がする。多少の驚きを見せながらも、徐々に顔付きが鬼神のそれになってゆく少女の頭に手を置いて。

 阿呆がそんな顔をするんじゃねぇよと吐き捨てて。


「最後まで俺が行くさ。ま、このままでも八割出しゃ楽勝だろ」

「ぎるさま――」

「たまには格好付けさせろ」


 そう言って、一歩を踏み出して。


「おーおら。そこまでだぜ――お嬢!」


 ばっしゅうううううと、焼け石に大水的な消化音が周囲に轟き渡り、一帯を支配していた凄まじい熱気も引いてゆき、終いには一人びしょ濡れになった赤髪少女が惚けたように突っ立っていた。


 さらにその背後にはバケツを抱えた茶髪と金髪の二人組。


「鎮火完了。そこの黒いのと白いのと黄色いの。迷惑掛けたな」

「本当はもっと早く止めるつもりだったんだけどよ! 魅入っちまった!」


 肩には赤髪と同じく『1』の文字。

 とまあここまで来て、ようやくお嬢当人はハッと我に返った様子で。


「ダルクス! アルカインド! 誰に許しを得てこんな――」

「団長」

「おらおら戻るぜお嬢! その濡れ透け制服のままじゃ目に毒だ!!」

「な――、ちょ、引っ張んないで!」


 ずりずりと引き摺られてゆく炎上女を見て。我に返ったんなら恥入りやがれと思いながら、微かにだけれど清々すんぜと思いつつ。


「……ッ、アンタ! 打ち負かしたと思ってるなら大間違が――ッ」

「舌噛むぞお嬢」

「いや今噛んだろ大丈夫かお嬢!」


 誰がなんと言おうと。

 奴との再開は災厄的に最悪で――愉快だった。

お読み頂き有難うございます!

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