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16.急報

16.急報



 アザナルとコーネルは会議室に入ると別々の位置に座った。リアの言った通り、皆は揃っているようだった。

「……なんですか? 一体」

 アザナルは隣に座る黒のルーク、黒の騎士団の団長ザルナークに小声で話しかけた。

「今回は直々にお言葉を頂く。私も詳しくは知らん」

 ザルナークは難しい顔をしたまま、自分自身もふに落ちないのか、不機嫌な顔と声でそう言った。

「え? 団長が話すんじゃないんですか?」

 その時、

 ガタガタガタ……!

 その場にいる皆が一斉に立ち上がりだす。アザナルも急いで立ち上がった。

「……、よい。座れ」

 その声は、弱弱しくもあるが、何か人を恐れさせるような暗い雰囲気も纏っていた。

「ア……、アヴァンネル……?」

 その瞬間ゴツン、とアザナルは頭を叩かれる。やばい、声に出ていたか、とアザナルは思った。コウテンの王、アヴァンネルが直々に表に立つことはここ最近ではないことだった。


「毎日、この星の警護にあたってくれている我らの息子たちよ。この場をかりて、まず感謝の意を述べる。君たち、チェッカーと呼ばれる騎士により、この星の住民は守られている。もちろん、私も」

 アヴァンネルはゆっくりとそう言った。

「平和を望む我々だが、残念なことに、蛮族の王が自ら指揮をとり、我々に戦争をしかけてくるという情報が入った。まことに残念だ……」

 嘘つけ……、アザナルはそう思った。大義名分のもとに掃討できるからうれしいんじゃないか?

「そこで、我々もまた、団結して戦わねばならぬ。ここ最近ではなかった大きな戦争になる危険性がある。出来る限り民に被害を及ぼさないように、先手を打って攻撃に入る。白の騎士団よ、先発隊を行かせ、情報を。それから黒の騎士団も動く。出来る限りは、白の力で終わるよう、頼んだぞ。長引かせたくないからな。いいか? ケイト」

「は! もちろんでございます」

 白のルーク、ケイトは静かの中によく響く声で返事をした。

「素早く動いてくれ」

 アヴァンネルはそう言うと、素早く去っていった。

「……。アヴァンネルの名が泣けるぜ」

 ゴツン、またアザナルは殴られた。

「蛮族に対しては特別な感情をお持ちなんだ。我らのキングに無礼を働くな! お前が」

 ザルナークは最もなことを言った。そう、アヴァンネルはイリスの父親。

「黒の騎士団の皆さん、こうやって連携を組むのは久しぶりのことね。でも仲良くやりましょう」

 白のルーク、ケイトが前に出る。いまいちいけすかない、とアザナルは思う。

『アヴァンネル騎士団』。それがコウテンの秩序を守る、対蛮族用の戦闘部隊だ。その騎士団は白と黒にわかれており、白の騎士団は主に遠方部隊。空戦部隊であり、黒の騎士団は主に近距離戦、地上戦を行う実働部隊である。

 白の騎士団は、戦闘機に乗り、蛮族の監視や、空からの攻撃をする。それがいちばん効率的な対蛮族用の戦法だ。そして黒の騎士団はこの城、そしてキングとクイーンの護衛をするのが日常的な仕事だった。

「結局は、白の騎士団の援護でしょ? このありあまった力をどこに使えばいいんだ」

 アザナルはつまらなさそうに呟いた。

「アザナル、いつでも敵に対応できるよう心の準備はしてあるか?」

「え?」

「蛮族だけじゃない。敵は、もちろんこの人間の中にだっている。黒の騎士団はキング直属の親衛兵の失態により、より王宮警護の任にあてられるようになった。その意味がわかるか?」

「……」

「ま、お前は幼すぎて覚えてないか……」

「ザルナーク! いいかしら?」

「ああ、お前の言う通りでいいぞ」

 ケイトの答えに即答するザルナークだが、実際のところは何も聞いてはいなかった。

「キング様もああ仰ってたし、私たちだけで終わらせるのがいちばんね。蛮族は感傷に浸る暇もなく消えてもらいましょう」

 嫌らしくケイトは笑った。

「ナイト、ビショップ、そして私と……」

「それでは空域警備に支障がでます」

「リア?」

 白のビショップ、リアはケイトに静かに意見を述べた。これはとても珍しいことだった。

「……リア、ビショップは術士。ちゃんとたまには働いてもらうわよ。いくら研究が大好きな引きこもりちゃんでもね」

「ええ。ですが、キングも仰っておりました。先発隊をいかせろ、と」

「だから、私たちで先発隊よ」

 そのまま全滅させるくせに……、それは皆が思っていた。

「悪い予感がする……。全てを蛮族に行かせるのは危険です」

「……」

 ケイトは少し考えた。

「気味が悪いわ。あんたがそんなに喋るのは」

 そしてそう言った。

「この情報は正しいんだろうな?」

「なんですって?」

 その話に乗っかるようにザルナークはケイトに言う。

「奮起する蛮族と戦うことに異論はないが、その情報は正しいのか? それに確信が持てないと、私はいまいち腰が上がらんぞ」

「……じゃあ、そのまま腰をおろしていらしたらいいのでは?」

 好戦的すぎるケイトは少し危険だ。

「黒の団長の言う通りよ」

 リアがそれに被せて言う。

「情報の正確性、これほどの難題はない」

「……。まったく! コーネル、リア! じゃああんたたちが残りなさい! 空域警備なんてほっといてもいいのに! 私1人の力で十分よ。コーネルとリアの隊以外はすべて私と共に来なさい!」

 ケイトは怒りをあらわにしてそう指示した。リアは少しだけ口元を緩ませた。納得したのだろう。

「おい、リア。団長の暴走を止められるのは俺ぐらいしかいないのに大丈夫なのか? 俺外されてるし」

 コーネルは不安気に団長とリアを交互に見ながら言った。

「大丈夫よ。コーネル、きっと出番はくる」

「そうか? ケイトが出るんだ。俺たちの出番はないだろう」

 コーネルはため息をつく。まぁ、ないならないにこしたことはないが、少し拍子抜けだった。



 飛び去っていく機体を見るコーネルの肩にぽん、と優しくアザナルは手を置いた。

「はは、残念だったな」

「……リアの奴」

 コーネルは呟く。

「ナイトの称号もらってんのに、戦線に立てないなんて不憫だよなぁ、俺たち」

「平和ボケしてるうちが華なのかもしれないけど」

 コーネルはそう言った。

「はぁ?」

「アザナル、戦争を好むな」

「おいおい、ナイトが何言ってんだよ。イリスみたいなことを言う」

「……だな」

 コーネルは少し笑って遠くを見ていた。




 それから時間はかからなかった。


「急報―!! 急報―!!」


「なんだ?」

 城はざわつく。アヴァンネルは再び皆の前に姿を現すことになる。

「何か……あったのかな。蛮族と……」

 アザナルは不安そうにそう言った。

「空域防衛戦線より援軍要請! 複数の戦闘機が、攻撃態勢でこちらへ向かっています!!」



 空……。宇宙から……?


『蛮族だけじゃない。敵は、もちろんこの人間の中にだっている』


 アザナルの中で、ザルナークの言葉が再び聞こえた。




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