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 世界が、夕焼け色に染まって行く。

 透ける身体は、この景色の一部に思えた。だけど、一つになることはない。

 世界は世界として、ここに在る。

 誰のものでもなく。みんなの、世界。


「綺麗、だよね」


「……ああ」


 わたしの通う高校は、この町で景色が一番綺麗に見える場所。

 沈んでいく夕陽が、鮮やかで。最後を迎えるには、これ以上の場所はなかった。

 もうすぐ、終わる。一日と……――


「兄さんは……大丈夫だよね?」


「心配ない。魂は、身体に戻った。もうすぐ、昏睡状態から目覚める」


「うん……」


 兄さんは生きている。

 だけど、意識不明で入院しているのは本当だった。

 目の前に居たのは、生き霊。家族三人、一度に失った悲しみでそうなったのではないか、と彼は言う。

 倒れたあの日、一時的だが容態に急変があったそうだ。

 長らく、魂のない状態。少しだけ癒せる力を持っていた彼が、辛うじて繋ぎとめた。

 あとは、目覚めるのを待つだけ。

 待たずに、いく。


「ねぇ……いつになるか分からないけど、生まれ変わって、生まれたら……探してもいい?

 って、簡単に生まれ変われるとは思わないけど」


「オレはずっと、キミを好きでいるんだ。探してくれると嬉しい。それに、強く願えば生まれ変われる。そう、信じている」


 見上げた彼の顔は、夕陽色。

 優しく、悲しく。

 鮮やかに、焼き付いた。


「そっか。じゃあ、探しに行くよ。たとえ覚えていなくても、探すから――待っていてね」


「ああ。遠い、遠いその先で、オレは待っている。いつか、会えると信じてキミをただ」


 透けて触れられないのに、抱きしめられる。

 感覚は分からないけど。

 本当に、死んでから幸せだと思うなんて、おかしいな……なんて。

 思いながら、幸せに浸る。


「晴夏」


 そっと落とされた、彼の優しい温もり。

 全身に広がり、足元から消えて行く。

 時間、だ。

 ゆっくりと、目を開く。

 彼は、笑っていた。

 ちゃんと、綺麗に。


「紡」


「何だ?」


「また、ね」


「ああ。また、な」


 頬に寄せられた手に、最後の奇跡なのか温もりを感じる。

 確かに感じた、彼の温もり。

 だけどすぐに消えてしまって。

 光が弾けた瞬間。




 神城晴夏という存在は、この世界から消えた。




 側に居るのが、記憶の終わりが……彼で、良かった。

 だから、次に会えたその時は、悲しみからアナタを救いたい。





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