27
世界が、夕焼け色に染まって行く。
透ける身体は、この景色の一部に思えた。だけど、一つになることはない。
世界は世界として、ここに在る。
誰のものでもなく。みんなの、世界。
「綺麗、だよね」
「……ああ」
わたしの通う高校は、この町で景色が一番綺麗に見える場所。
沈んでいく夕陽が、鮮やかで。最後を迎えるには、これ以上の場所はなかった。
もうすぐ、終わる。一日と……――
「兄さんは……大丈夫だよね?」
「心配ない。魂は、身体に戻った。もうすぐ、昏睡状態から目覚める」
「うん……」
兄さんは生きている。
だけど、意識不明で入院しているのは本当だった。
目の前に居たのは、生き霊。家族三人、一度に失った悲しみでそうなったのではないか、と彼は言う。
倒れたあの日、一時的だが容態に急変があったそうだ。
長らく、魂のない状態。少しだけ癒せる力を持っていた彼が、辛うじて繋ぎとめた。
あとは、目覚めるのを待つだけ。
待たずに、いく。
「ねぇ……いつになるか分からないけど、生まれ変わって、生まれたら……探してもいい?
って、簡単に生まれ変われるとは思わないけど」
「オレはずっと、キミを好きでいるんだ。探してくれると嬉しい。それに、強く願えば生まれ変われる。そう、信じている」
見上げた彼の顔は、夕陽色。
優しく、悲しく。
鮮やかに、焼き付いた。
「そっか。じゃあ、探しに行くよ。たとえ覚えていなくても、探すから――待っていてね」
「ああ。遠い、遠いその先で、オレは待っている。いつか、会えると信じてキミをただ」
透けて触れられないのに、抱きしめられる。
感覚は分からないけど。
本当に、死んでから幸せだと思うなんて、おかしいな……なんて。
思いながら、幸せに浸る。
「晴夏」
そっと落とされた、彼の優しい温もり。
全身に広がり、足元から消えて行く。
時間、だ。
ゆっくりと、目を開く。
彼は、笑っていた。
ちゃんと、綺麗に。
「紡」
「何だ?」
「また、ね」
「ああ。また、な」
頬に寄せられた手に、最後の奇跡なのか温もりを感じる。
確かに感じた、彼の温もり。
だけどすぐに消えてしまって。
光が弾けた瞬間。
神城晴夏という存在は、この世界から消えた。
側に居るのが、記憶の終わりが……彼で、良かった。
だから、次に会えたその時は、悲しみからアナタを救いたい。




