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「――久住風香さん、ですね」
「貴方、は?」
「オレはある人から、託された想いを伝えるために来ました」
「…………お別れの言葉、ですか?」
いいえ、と首を振る。
託された想いは、別れではない。だが、別れよりも辛いことなのかもしれない。
「辛いのなら、忘れてもいいです。アナタが幸せになるのなら、そうしても構いません」
「……の……声。それがあの人の望みでも、そんなこと出来るはずがありません!」
そう言われるのは、分かっていたらしい。あの人は続きも託していた。
「もし、今でも想いが変わらないのなら、酷かもしれませんが、待っていてくれますか?」
「そんなの……そんなの、当たり前です」
涙を零しながら、それでも力強く答えてくれる。
想いはきっと、繋がって行く。
届くはずだ。
「いつまでもアナタが好きです。アナタが、どの世界に居ても……」
「私も好きです。伝えてください。ずっと待っています、と」
「……その想い、心に留めました」
ありがとうと、彼女が礼をする。
オレはあの人のほんの一部分を紡ぎ、伝えに来ただけだ。
救えていない。救えないままなのに。
「――それじゃ、確かに伝えましたので」
「あ、待ってください。貴方の名前……貴方は、一体――」
その疑問に、答える術がなかった。
オレは浄霊能力があるだけの、悲しみを紡ぐだけの、ただの無力な存在。
「…………紡、です」
誰一人、救えていない人間だ。




