第36話 始まりの路地裏、本当のお別れ
最後まで読んでくださると嬉しいです!
ご提示いただいた「前の話(エスト民主共和国が誕生し、レンが初代大統領を務めたのちリカルドへバトンを託したエピソード)」と自然につながるように、後半の「元の世界への帰還シーン」を修正・ブラッシュアップいたしました。
エスト民主共和国の開国式と第一回世界平和協力会の華やかな祝祭ムード、そして仲間たちとの温かな別れがスムーズに繋がる流れになっています。
---
### 修正後のシーン
大戦争のすべての戦いが終わり、王都の偉い人たちをはじめ、世界中から多くの代表や人々が駆けつけた盛大な開国式、そして「第一回世界平和協力会」がエストの町で行われていた。
かつての外れ町の面影を残しつつも、世界平和と協力の発祥の地——その聖地となったエスト民主共和国のメインストリートは、国境や身分を越えた人々の笑顔と歓声に包まれていた。
壇上でアルやリカルド、そして次代を担うトビーが大きな拍手を浴びる中、スキルも加護もない「ただの雑用係」として、裏方で泥まみれになりながら走り続けた私は、自分の名前が呼ばれる前にそっと人混みを抜け出した。
胸には、リカルドから手渡された「エスト商会の仲間」の証である特製バッジ。
ポケットには、傷だらけになった鉄色のギルドカード。
そして、肩からはアルにもらった、すっかり凹みの増えた古い水筒。
お祭り騒ぎの喧騒から離れた街の片隅で、私はアルに「元の世界に帰る方法」について相談していた。
アルは少し寂しそうな、でもどこか全てを察したような優しい目で私を見て、ぽつりと言った。
「……そっか、帰りたいんだな。だったら、ここへ来たときと同じことをすればいいんじゃないか?」
「きたときと、同じこと……」
その言葉に、私はハッとした。
あの日、私がこの世界に突然転移してきた場所——あの薄暗い、エストの町の路地裏。
考えてみれば、この町で必死に生き抜いていく中で、商会の副会長として、このエスト民主共和国の初代大統領として奔走する日々の中でも、あの始まりの路地裏にはまだ一度も足を踏み入れていなかったことに気づいた。
「行こう」
アル、リカルド、トビーの3人に付き添われ、私たちは世界的な祝祭の喧騒を背に、記憶を頼りにあの路地裏へと向かった。
たどり着いたその場所は、あの日と変わらない、湿った土の匂いと古びたレンガに囲まれた、何の変哲もない薄暗い空間だった。
だけど、私がその路地裏に一歩、足を踏み入れたその瞬間。
フワリ、と地面の感覚が消えた。
それと同時に、足元から眩しい、吸い込まれほどの純白の光が溢れ出し、私の体を包み込んでいく。
光が激しさを増し、体が徐々に浮き上がるような感覚の中、3人の顔が涙で歪んでいくのが見えた。
これが本当に最後なんだ。そう思うと、抑えていた感情が一気に溢れ出してきた。私は光の隙間から、3人に向けて精一杯の声を張り上げた。
「リカルドさん! 何もない私を拾ってくれて、居場所をくれて、本当にありがとうございました! エスト民主共和国を、そしてエスト商会を世界一の場所にしてください!」
リカルドさんは何度も激しく頷き、「任せろ!」と胸のバッジを叩いた。
「トビー! 君はもう立派なエストの守り手だ! 自分を信じて、みんなを支えてあげてね!」
「はいっ……! はいっ、レンさん! 絶対に、絶対に忘れません!」
トビーは袖でボロボロと涙を拭いながら、声を裏返して叫び返してくれた。
そして、最後にアルの方を見る。言葉にならなくて、ただ胸が詰まった。私に生きる術を、人の温かさを、最初に教えてくれた最高の友達。
「アルさん……、あなたに会えて本当に良かった。もらった水筒と短剣は、私の生涯の宝物です。私、向こうの世界でも、もう逃げずに泥臭く生きてみます!」
アルは寂しそうに眉を下げたけれど、すぐにいつもの、あの眩しいひまわりような笑顔を咲かせた。
「ああ、お前なら大丈夫だ、レン! どこにいたって、俺たちは繋がってる。胸を張って行ってこい、俺の最高の相棒!」
「みんな、バイバイ! 本当に、本当にありがとう——!」
3人の「またな!」という叫び声が路地裏に木霊し、私の視界は完全な白に染まった。
「レン……!」
光の向こうで、トビーがボロボロと涙を流しながら私の手をぎゅっと握りしめた。(※直前の大統領就任や開国式の記憶と自然に繋がる描写です)
リカルドさんも、寂しそうに、でも誇らしげに深く頷いている。
最後に、アルが一歩前に出て、ギルドの奥深くにある古い文献の一節を、静かに読み上げた。
『この地が、外からの関与なしにはどうしようもなくなったとき、勇者もう一つの世界からやってくる。その勇者は、一見すると何も能力を持っていないように見えて、実は大いなる力を持っている。その泥臭い歩みと心が、この地を、この地の民を大きく変えるだろう。そして役目を終えたとき、勇者は再び、出現の地から自らの世界へと帰っていく——』
読み終えたアルは、いつもの眩しい、健気な笑顔を私に向けた。
「元気でな。本当に、ありがとう、レン」
トビーもリカルドさんも、涙を必死にこらえながら私を見つめている。
平和の礎を築いたこの新しい国には、私を必要としてくれる大好きな仲間たちがいた。ここで生きる選択肢だってあった。けれど、私は自分の足で、元の世界へ戻ることを決んだんだ。
「みんな、大好きだよ。……バイバイ!」
私が笑顔で手を振った瞬間、光は一気に弾け、チーンという、耳に馴染んだコンビニの自動ドアの音が頭の中に響き渡った。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
別の作品や次の話も是非見てみてください!
面白かったらブックマーク・評価で応援いただけると嬉しいです!




