第九章 扉を開けたのは
ロイ=ウェルの第九章です。
ロイ=ウェルへ続く扉の前まで、マーシャル達四人はやってきました。すると、ロイ=ウェル側から扉が開かれ…。お楽しみ頂ければ幸いです☆
ロイ=ウェルの扉の前で、リリーはマーシャル達に追いついた。マーシャルが扉を開けようとしているのを、エリー達が必死に止めていた。
「離してよ!」と、マーシャルが叫んだ。「僕はエルフェルさんを助けに行かなきゃなんだ!元を辿れば、僕を見逃したことが捕まった理由なんだから…!」
「気持ちは分かるけど、落ち着いて考えて!」とエリーは言った。「いい?あんたがお世話になったエルフは、きっと名前のない女王のところにいる。名前のない女王は、この国を支配してる悪そのもの。この国に伝わる言い伝えでは、ロイ=ウェルの悪の時代が終わりを迎えるには、ロイ=ウェルが選んだ人間が五人必要だわ。でも、もう大昔にその内の一人は死んでるじゃない!いくら頑張っても私達だけじゃ名前のない女王を倒せないのよ、行っても無駄死にだわ。私達、あんたに死んでほしくないのよ!」
「そうよ、一緒に帰りましょう…?」マリーは泣き出しそうになりながら言った。
エリー達の言葉を聞き、マーシャルは、扉を開けようとするのをやめた。エリー達が自分を大切に思ってくれているのが分かったのだ。それでも、マーシャルは言った。「…行かなきゃ絶対に後悔する。それに、絶対に倒せないなんて、どうして分かるの?」マーシャルは言った。「僕は倒せる可能性は全く無いわけじゃないと思ってる。ロイ=ウェルは、意思を持った国だ。名前のない女王の支配から、きっとロイ=ウェルも解放されたいと思ってる。そんなロイ=ウェルが、もうすでに一人は欠けていること知りながらも、僕ら四人を選んで導いているんだ。僕らが来たら何かが変わると、ロイ=ウェルは知ってるんだよ」
思いがけないことを言われたエリーとマリーは、顔を見合わせた。自分達が行くことが、ロイ=ウェルを救うことに繋がるかもしれないなんて考えてもみなかった。もしそうなら、マーシャルを帰らせてくれたエルフだって助け出せるかもしれない。
けれど、例えそうだとしても、本当にそうなのか分からないのにロイ=ウェルに行く勇気は、エリーとマリーには無かった。それは無理もない話で、マーシャルもそれを分かっていた。マーシャルは、ふっと微笑み言った。「大丈夫。君達をーエリーとマリーと…リリーも無理やり連れて行こうなんて考えてないよ。僕達は命を狙われている危ない立場だし…ただ、僕が行くのは許して欲しい。僕が行くだけでも何らかの変化はあるはずだ。覚悟がない奴が行っても意味ないだろし、みんなは戻んなよ」
三人のやりとりを黙って聞いていたリリーは、それを聞いて冗談じゃないと思った。この時のリリーは、良心よりも忠誠心の方が強まってしまった状態だった。それでは女王陛下のところにみんなを連れて行けないではないか!もうロイ=ウェルはすぐそこなのに、何をこの人達はぐずぐずと扉の前で話し込んでいるのだ!怒りが湧いたリリーは、話し込んでいる三人の間を通り抜けて、扉を開けようとした。扉を開けて中に入り、三人を無理やり引き入れようとしたのだ。
しかし、それは出来なかった。リリーが開ける前に、ロイ=ウェル側から扉が開いたのだ。扉を開けたのは、左手に松明、右手に斧を持った巨大な体のオークだった。見下ろした先にマーシャル達四人が居るのを確認したオークは、下卑た声で言った。「ギャハハハ、この世界の者のじゃない匂いがすると思って開けてみたが、まさか四人もロイ=ウェルに選ばれた人間が揃ってるなんてな!お前達を殺して、死体を名前のない女王陛下のところに持っていけば、きっとすごい褒美が貰えるなぁ!」そう言うと、オークは持っていた斧を勢いよく振り上げた。マーシャルは、三姉妹を守るろうと、自分から前に出て腕を広げた。マーシャルが殺される…!恐怖で声が出せない三姉妹は、そう思って目を閉じた。「度胸のある奴だな!まずは、テメーから死にやが…」
ドスッと、オークの頭に弓矢が刺さった。マーシャルに向かって振り下ろされるはずだった斧はオークの手から落ち、オークはゆっくりと地面に倒れた。するとその後に、突然倒れたオークの体が発火し、全身が燃え始めた。生き物の肉が焼ける、嫌な匂い辺りに満ちた。目の前で起きたことに呆然としたマーシャルと、目を開けた三姉妹は、オークを燃やす炎のあかりの先に誰かがいることに気がついた。その誰かは、ゆっくりと四人の元へ近づいて来て、立ち止まった。炎に照らされたその者は、弓入れと弓矢を持った、木の葉や緑苔で出来た服を身に纏う、黒い髪をした妖精ギリー・ドゥだった。彼は、マーシャル達に言った。
「はじめまして、私の名はスー・シンリン。あなた達のことを、エルフェルから任せられた者です」




