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ロイ=ウェル  作者: 西村薫


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第十章 動き出したもう一つの言い伝え

ロイ=ウェルの第十章です。エルフェルの仲間ギリー・ドゥのスー・シンリンは、四人にエルフェルのことや、名前のない女王によるロイ=ウェルに住む者への命令について話します。名前のない女王による命令について聞いたリリーは…。


ロイ=ウェルを舞台に、物語はさらに加速していきます!なんと、ロイ=ウェルにはもう一つの言い伝えもあり、それが動き出したようで…?お楽しみ頂ければ幸いです☆


 「ああ、マーシャル。本当に、扉の先にロイ=ウェルはあったのね」と、エリーは言った。ここが自分達の世界とは全く異なる生き物が住む、異世界だということを、扉が開かれてからの怒涛の展開がエリーとマリーに突きつけ続け、もう疑いようがなかった。

 エリーは、すぐにマーシャルの方を向いて言った。「信じなくて、本当にごめんなさい。」それを聞いたマリーも、続けてマーシャルに謝った。マーシャルは微笑んで二人を許した。そして、自分達を助けてくれたギリー・ドゥの方を向いて言った。

「あなたは、エルフェルさんの仲間ですか?」それを聞いたギリー・ドゥのスーは答えた。「そうです。あなたが、マーシャルさんですね?エルフェルから聞いています。とても優しい男の子だと、あいつは言っていましたよ。だからこそ、自分のことを知ったら又危険を承知でロイ=ウェルに来るだろうとも言っていました。だから、もしまた来たら助けてやってと、頼まれたんです。ご姉弟みんなで、こんなに早くにおいでになるとは思いませんでしたが…間に合って本当によかった…やっぱり噂は本当みたいだ」

 オークが持っていた斧を拾い上げたスーを見つめていたマーシャルは、一度口を開こうとしてまた口を閉め、そしてまた口を開いて一番知りたいことを、勇気を出して尋ねた。「それで…エルフェルさんは…?」

「…名前のない女王に捕まってます。私は、名前のない女王の弱みを探るスパイとして、名前のない女王に仕えている戦士です。彼女の城にて、捕まったエルフェルと会いました。彼が命令に背いて、人間のあなたを殺さずに帰したことを知った名前のない女王の怒りは凄まじく、不老不死のエルフであるエルフェルに対し、永遠に終わらない拷問をするよう命令が下されました。そこで、私はその担当をすると名乗り出たのです。以来、私は毎日3時間ほど拷問部屋であいつと過ごしてるんですよ…お茶したりしながらね♪」ウインクをしながら、スーは言った。

「じゃぁ、エルフェルさんは無事なんだね!良かった!」と、マーシャルは叫び、飛び跳ねて喜んだ。エリーやマリーも弟の恩人が生きていることが嬉しくて堪らず、歓声を上げながら飛び跳ねたが、三人をスーは制した。「しぃ!静かに!大きな声は出さない方が良いです。暗闇に誰が潜んでいる分かりませんし、私の能力が悪いのですが、炎が燃え上がってこの辺りは今、とても目立ってしまっています。それに今、この国ではあなた達姉弟についての御触れが出されてるんですよ、これを見てください」

 そう言うと、スーはポケットからクシャクシャになった紙を出して広げて見せた。そこには、達筆な文字で、こう書かれていた。


  我が民へ。ロイ=ウェルが、再び外の世界から

  人間を導き始めた。人間は貴様らが崇める私の

  敵である。私の敵に味方し、救う者は殺そう。

  私の敵を捕らえた者、殺した者には褒美を渡す。   狙う者は四人姉弟、エリー、マリー、リリー、

  マーシャルである。


              名前のない女王より


 四人は同じタイミングで、短いお触れ書きを読み終えて驚いたが、一番驚いたのはリリーだった。私や姉さん達やマーシャルを歓迎したいと、次の女王や臣下にしようと言っていたではないか!きっと何かの間違いだ。だって、女王陛下はあんなに私に優しくしてくれたじゃない!私は信じない、絶対に信じないわ…!高まり続ける忠誠心はリリーを興奮させ、爆発した思いは言葉となってリリーの口から出てしまった。

「嘘よ!名前のない女王陛下は、私の傷を直して食べ物だってくれた、優しい方だもの!あの方の役に立てるなら私は何だって…!」そう言った途端、リリーはしまったと思った。みんなは、リリーをじっと見つめた。エリーは、リリーを睨みつけた。

「あんた、やっぱりロイ=ウェルに来たことがあるのね」とエリー。「あんたは今、自分は悪党の味方だと認めたのよ?でも、確かに女王はあんたを気にいると思うわ。あんたは、ここに来たことがないと嘘をついて、何も悪いことをしてないマーシャルに沢山自分がした罪をなすりつけた。あんたも女王と同じ悪党よ」

 みんなは静まり返った。「何か言いたいなら言ったら?」エリーはそう言うと、睨みながら黙り込んだ。リリーも睨み返していたが、目には涙が溢れ出していた。だが、リリーは泣き出すことはせず、何を思ったのか勢いよく走り出した。遠くで光り輝く城を目指しているようだった。すぐにリリーは暗闇に包まれ、消えていった。

 「リリー!」と、マーシャルは叫んだ。その口を、スーは塞いだ。「静かに!」それに対して、マーシャルはスーの手を剥がして言った。「でも、一人にしたらリリーが…!」

 「大丈夫です、あなた達四人が死ぬことは、絶対にあり得ません」と、スーは言った。「私が間に合ったのが何よりの証拠です。この国のもう一つの言い伝え…ラススヴェートは、間違いなくもう動き出したようです」

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