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#10 朝焼けの惨劇

今回は少し短めです。

「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 可憐な美少女の悲鳴が夜の墓場に響き渡……ごめんなさい!可憐な美少女とか調子に乗ってごめんなさい!だから近付かないで下さい!

「アイナ、下がって!」

 無理ですティアさん、足が動きません。そう言おうと思ったのですが、声が出ませんでした。

 なんで私、失神しないの!?子供騙しみたいなお化け屋敷で失神したのに、なんでリアルゾンビを前に失神しないのかと、目の前の状況から現実逃避をしているのかしてないのかよくわからない思考が頭をよぎった瞬間、

「はぁぁぁっ!」

 ライラさんの剣撃がゾンビの頭を刎ね飛ばしました。ゾンビの頭が私の足先に落ちてきました。

「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 思わず蹴飛ばしそうになりましたが、ギリギリで踏みとどまりました。あんなの蹴飛ばしたら、靴が大変なことになっちゃいます!

「あっち行きなさい!」

 ティアさんは杖をゴルフクラブのようにスイングして地面に落ちたゾンビの頭を打ちました。ナイスショット!

 いきなり頭を失い、遠くに飛ばされたゾンビは何だか慌てた様子でパタパタと腕を振り回しています。

 なんでしょうか……。グロいのに可愛い動き……。グロ可愛いという誰得な新ジャンルがここに誕生しています。

「光よ、彼の者を癒したまえ。【キュア・ヒール】」

 リーンさんがゾンビに回復魔法をかけると、ゾンビの身体は灰になって崩れ落ちました。

「よし、これで終わりね」

 ティアさんは杖の汚れを近くの十字架の前に置いてあった花束の包み紙で拭き取りながら言いました。罰当たりな……。

 「これで終わりですよね?もう帰りましょう!」

 「おそらく、今のが不審者の正体だとは思うから、討伐証明部位を確保して、明日の朝にギルドに行けばいいだろう」

 そう言ってライラさんはゾンビだった灰の山に近付きました。

 アンデットは倒すと灰のような粉末状になり、魔力のこもった小さな宝石__核を残します。それがアンデットの討伐証明部位になり、大きさ、色、魔力量などからアンデットの特定ができるそうです。

「ところでライラ。カンテラはどうしたの?」

「それならその辺りに投げ捨ててしまった。戦いの邪魔になるから」

 そう言って核を回収したライラさんが立ち上がって振り返りますが、私達はライラさんの発言から最悪の事態を想像してしまいました。

「どこに投げたのよ!?」

 現在周囲を照らすのは、火の明かりではなく、リーンさんの照明魔法の灯りです。

「心配はいらない。ちゃんと火は消してあるから……」

「そうじゃないわよ!いや、それも大事だけど、カンテラは壊れやすいのよ!?投げたりしたら壊れるでしょ!」

 ティアさんは冒険者生活でお金に苦労しているので、その辺りは厳しいですね。どんなものでも長く使おうとするタイプの人です。

「えっと……あっちの方に……」

 ライラさんが指を差した方向にダッシュするティアさん。

 カンテラが落ちていたのは戦闘場所から5メートルほど離れた場所でした。

「ねぇ……これ……」

 ティアさんは壊れたカンテラを回収していたのですが、困ったように地面を見ていました。

 リーンさんの照明魔法で足下を照らすと、そこには顔に火傷の跡のある男性が仰向けに倒れていました。

 おそらく、ライラさんの投げたカンテラが直撃したのでしょう。火を消したばかりの熱々のカンテラが……。

「………」

 ライラさんがまるで絶望したような表情で男性を見ています。騎士を目指すライラさんにとって、人を傷つけてしまったことがショックなのでしょう。

 けどそれよりも……。

「この人、こんな時間にこんな場所で何をしていたんでしょうか?」

 私はもっともな疑問を口にしました。

「何か持ってますね……」

 リーンさんは男性の手にある手帳を取ると、躊躇することなく開きました。

「……どうやらこの人が今回の騒ぎの原因みたいですね」

 手帳を読んだリーンさんがそう結論を出しました。

「何が書いてあったんですか?」

「アンデットを生成するための研究日誌のようです。今まで色々と準備をして、今日が実践の日だったみたいですね」

「……つまり?」

「犯人逮捕ということですね」

 ティアさんの言葉にリーンさんが気絶した男性を見下ろしながら言いました。

 その後、私達は気絶している男性をロープで縛り上げ、猿轡をしてから兵の詰め所まで運びました。ライラさんが。

 夜番の兵士さんに男性と手帳を渡し、依頼書にサインを貰いました。これで不審者の逮捕が正式に証明されます。

 私達はそのままギルドへ向かいました。依頼完遂の報告をするためです。

「報告が終わったら、ちょっと良い店でご飯にしましょうよ」

 ギルドへの道中、ティアさんが提案します。この人、節約家のようで浪費家ですね。手元にお金があると調子に乗って全部使って大変な思いをするタイプっぽいです。

「パーティー結成と、依頼成功、それから冒険者ランクアップのお祝いだな」

「そうですね。親睦を深めるためにも、今日は少し贅沢をしましょう」

 ライラさんもリーンさんも賛成のようです。

「アイナはどうするの?」

「もちろん賛成です。なんなら私が料理を用意してもいいですよ?」

「「「それはいい」」」

「なんで声を揃えるんですか!」

 私、料理下手じゃないですからね!?前世では中学くらいから料理の手伝いをして覚えたんですよ!お菓子だって作れるんですからね!この世界は砂糖がそこそこ高いので作れるお菓子もかなり限られますが……。

 冒険者ギルドに戻り扉を抜けると、扉に付けられた鐘が鳴り、中にいた冒険者がこちらを注目します。うん、慣れました。誰が入ってきたのか、見ちゃうんでしょうね。エレベーターの階数表示を見るのと同じです。

 私達は他の冒険者の視線を無視して受付に行きました。

「シェリアさん、依頼が終わったので確認お願いします」

 私は詰め所でサインをもらった依頼書を窓口のカウンターに置きながら、時間を気にしている様子のシェリアさんに声をかけました

 ちょうどその時、外で大きな鐘の音が聞こえました。20時を知らせる鐘の音です。シェリアさん、残業決定です。

「はい、それでは確認させていただきます」

 シェリアさんは依頼書を受け取ると、それを専用の道具で確認をしました。

「確認ができました。不審者を捕らえたようなのでお約束しました通り、冒険者ランクのアップと、報酬を追加させていただきます。それではギルドカードを提出して下さい」

 私達はギルドカードをカウンターに起きました。黒が3枚と紫が1枚。え?

「リーンさん、紫だったんですか!?」

「はい。故郷でも活動をしていましたので。紫に上げてからこちらに来たんです」

 リーンさんの故郷は、この帝国の北にある雪に覆われた極寒の地方『リエース王国』です。なぜわざわざ他国に来たのかを尋ねると、リーンは困ったような微笑みを浮かべながら「家の事情です」と答えてくれました。きっと複雑な事情があるのでしょう。あまり深く聞かない方がいいですね。

 依頼完了と冒険者ランクアップの手続きを待つ間、私達は依頼書のボードで紫ランクの依頼書を見ることにしました。

 これから受けることができるランクの依頼書です。どんな依頼があるのかをあらかじめ確認しておこうと思ったからです。

 リーンさんも紫になってすぐ国を出たらしく、紫の依頼は未経験だそうです。

「やっぱり紫になると依頼の幅が広がるわね」

「そうだな。活動範囲も広がりそうだ」

 黒で討伐可能のモンスターは片道2時間ほどの森に生息しているものだけですが、紫からは他の場所に生息しているモンスターの討伐依頼が入っています。

 もう1つ上の緑になれば護衛の依頼を受けることができるので、そうなれば他の街に行ってみるのもいいかもしれません。

 依頼ボードを見ながら、これからのことを考えていると、シェリアさんに呼ばれました。手続きが終わったようです。

 紫色の冒険者カードと報酬を受け取ります。黒にしては破格の報酬をゲットしました。

 紫になると、仕事の幅が広がると同時に、報酬が今までよりずっと高くなります。これは単純に黒の報酬が低いだけです。冒険者だけで生計を立てるなら、最低でも紫、普通に生活するなら緑は必要になります。

 私達は町の大通りにあるちょっと高めの食堂に行き、そこでパーティー結成兼パーティーでの初依頼達成兼ランク昇進祝いをしました。

 今回の報酬の大半が無くなりましたが、たまには贅沢をしないといけませんよね。

 宿に戻ってからは夜遅くまでみんなで話をしました。なんてことのない他愛のない話です。

 そして、夜更かしをした私達は、翌日は昼頃まで寝過ごしてしまうのでした。

(そういえば……ティアさんが飛ばしたゾンビの頭、あのあとどうなったんだろ……)

 眠りに落ちる直前、私はふとライラさんが切り落としたゾンビの頭のことを思い出したのでした。



 アイナ達がゾンビと戦った翌日の早朝、夜遅くまで語り合っていたアイナ達は現在、夢の世界へ旅立っている。

 朝日が昇りはじめ、空がうっすらと明るくなったこの時間、昨晩戦闘があった共同墓地に1人の少女がやってきていた。

「お爺ちゃんのお墓、久しぶりだな~。最近はあんまりこれてなかったんだよね」

 誰かに言っているわけではない独り言を呟きながら、少女は祖父の墓へ向かっていた。

 アイナ達が利用したちょっとグレードの高めの食堂の看板娘である。

「あったあった。結構汚れが……ん?」

 祖父の墓に到着した少女は、十字架の頭に何かが刺さっていることに気が付いた。

「なにこれ?」

 近付いてみると、鼻を突く刺激臭がした。

「アァァアアァァァア……」

 十字架に刺さったゾンビの頭部が苦悶の声を上げた。

「ひぃっ……」

 直後、少女の悲鳴が早朝の墓地に響き渡った。


女神様の出番があまりにないので、タイトルを変更しようと思います。

#11からは【女神様に任せなさい!】から【転生特典『キャラクターメイキングで始める異世界生活』】に変更します。

読んでくれている人がいれば、知り合いに勧めてくれると嬉しいです。


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