おじいさんにそうぐうした!
こうなったらもう自棄だ。
好きなだけうろちょろしてやる。
多少荷物が重かろうが知ったことか!!!!
背中にリュックを背負って、元々持っていたショルダーバックにスマホを収納して獣道を歩き始める。
「だがしかし! さすがに基礎系は入ってなかったとはいえめちゃくちゃ重たい……!!」
これで森探索とかなかなかにきつい。
せめてもの救いは今私が履いているのがスニーカーであることと、寒いせいか蚊がいないということである。
「あはははは! まだ華の(?)20代だ!! こんなことでへこたれる私じゃないわ!!」
剣道をやっていたので忍耐力はあるつもりだ。体力のあるなしは別として。
重たい荷物を抱えながらしばらく探索を進めていくと、開けた場所に出た。
「わぁ……! 綺麗……」
そこにはちょっとした湖があり、太陽の光を浴びてキラキラと光っていた。
湖の周りには野草や葦草が生い茂っており、今まで都内をあまり出たことのない私はその景色にしばし見とれていた。
「おやおや、ずいぶんと珍しいお客だねえ。……なんだか奇特な恰好をした娘さんのようだが?」
「へ? うわあっ!?」
後ろから声がしたため振り返ると、仙人のようなひげをたくわえ、腰の曲がった、人のよさそうなおじいさんがいた。
びっくりした。このおじいさんいつの間に後ろに来たんだ。
気配どころか音もなかったぞ。
「ふぉっふぉっふぉっ。そんなに驚かんくともとって食いはせんよ。しかしお嬢さんはここになんの用かね?」
「なんの用というか、迷っていたらここに着いたというか……」
ひげを触りながら尋ねる老人に、曖昧な返事を返す私。
もしかしてここってこの人の私有地だったり……?
だったら私完全に不審者じゃね?それまずくないか?
「あの、私ここがどこかわからないんですけど、もしかしてあなたの土地でしたか? でしたらすぐに出て行くので、少しだけここで休ませてもらっていいですか?」
「ふーむ。どうやらお嬢さんはお困りのようだねえ。おかしな恰好はそれと関係があるのかな?」
冷や汗だらだらで尋ねると答えともとれない返答が発せられる。
というかおかしな恰好?そういえばこの人よく見れば着物を着ている。
現代にしては珍しいので、富豪の方かと思ったがそれにしては着物が着古されている感じがするし、身なりがそこまで整えられているわけでもない。
どういうことだ……?
「あの……?」
「詳しい話を聞くとしようかね。まずは我が家でお茶でもどうだい、お嬢さん?」
優しいおじいさんの誘いは大歓迎です。
怪しさは拭えないけど、今はこの人しか頼りがない。
おとなしくついていくことにしよう。
「ぜひお願いします。」