理解の範疇を超えている
―――――なんてこったい。
私こと栗花落 美鶴は盛大に混乱していた。
なぜかと言えば理由は明白ではあるが、その理由である出来事の原因がまるで分からない。
私はただ学校帰りの道を歩いていただけである。
歩きスマホをしていたのは悪かった。それは認めようじゃないか。
だがしかし、ほんの数分前、私はコンクリートジャングルの中を歩いていたはずである。
「それなのに。なぜ、リアルジャングル……」
そう。私が今立っているのは、ビルのそびえたつ街ではなく鬱蒼とした森の中なのである。
スマホは圏外を表示しており、周りにはビルどころか舗装された歩道さえ見当たらず、木々で遮られた森は先ほどよりも涼しく感じる。
というかむしろ寒い。先ほどまで炎天下の中にいたせいで汗をかいていたが、一気にそれがひいたことで体温が奪われる。
さらに半袖のサマーニットにショートパンツという真夏の恰好をしている私。
この寒さは絶対夏じゃないだろ、とうっすら鳥肌の立つ自身の腕を摩った。
さて、私が混乱する理由がわかっていただけただろうか。
こんな状況私じゃなくとも混乱して当然だと思う。
「落ち着け私。クールダウンだ。とりあえず朝からの自分の行動を見直してみようか」
頭の中はクールダウンどころかヒートアップしてショートを起こす一歩手前だが、そんなもの気にしていられるか!
身体のみ冷えていくこの場所で、早速思考を働かせて状況整理を始めた。