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キュンマグ!  作者: てきてき@tekiteki


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24/26

「消えない主催」

中村の頭の上に重しがのしかかる。


 『日曜』


 その二文字が、頭の中で少しだけ現実味を帯びる。


 『場所』


 必要なのは、まずそれだ。


 家に呼ぶのは流石に無い。

 公園は天候に左右される。

 カフェは座席が固定される。


 固定される、というのが少し怖い。


 逃げ道がない空間は、まだ早い気がした。

 閉じ込められる感じが、今は少し重い。


「そうだ!」


 中村が手を打つ。


「ショッピングモールいこうよ。

あそこなら色々楽しめるでしょ」


 声はさっきより、少し落ち着いている。

 一瞬、沈黙。


「お、急に現実的!」


 有本が即座に食いつく。


「ショッピングモールは賢いわ」


 指を折りながら数える。


「ゲーセンあるし、

 フードコートでスイーツも堪能できるし」


 にやっと笑う。


「それに……主催者、ちゃんと“閉じ込めない場所”選んでるの評価高い」


 中村はわずかに苦笑する。


 図星だ。


 三人で盛り上がれたら、それが一番楽しいに決まってる。


 笑って、はしゃいで、くだらないことで騒いで。

 そういう時間が作れたら最高だ。


 でも。


 途中でちょっと一人になりたくなってもいいし、

 気づいたら二人だけで話してる瞬間があってもいい。


 無理に「ずっと三人」でいなくていい。


 同じ場所にいながら、

 それぞれの時間がちゃんとある。


 そのくらいのゆるさが、今の三人にはちょうどよかった。



「……うん」


 千代田が少し考えてから頷く。


「それなら、いい」


 顎に手を当てる。


「色んなものあるから、それぞれの好みもがわかるのも、面白いかもしれないし」


 廊下の窓から差し込む光が、三人の横顔を均等に照らす。


「ゲーセンなら、一人で黙る時間も取れるしね」


 さらりと言う。


 でもその言葉は、ちゃんとした理由だ。


 ーー無理しなくていい時間を、ちゃんと用意してくれたってことか。

 中村の胸の奥が、少しだけ軽くなる。


「え、千代ちゃん」


 有本がニヤリとする。


「もう攻略考えてる顔してない?」


「……どんなゲームあるかは、事前に把握しときたいだけ」


 千代田は視線を逸らす。


「苦手なの避けたいし」


「出た、ガチ勢」


 有本が腕を組む。


「じゃあ私はUFOキャッチャー担当で」


 中村の方を振り向いて、声のトーンが上がる。


「取れなかったら中村のせいね」


「理不尽すぎる!」


 即座に返す。

 軽い笑いが重なる。

 空気が一段、柔らかくなる。


 でも、その軽さの下には、さっきの“消えない”がまだ残っている。


「よし決定!」


 有本が指を鳴らす。


「日曜、ショッピングモール集合!」


 テンポが戻る。


 軽さが戻る。


「主催者さん、

 集合時間と場所だけはちゃんと決めてね?」


 二人の視線が、また中村に集まる。


 主催者。

 その言葉が、前とは少しだけ違って響く。




 何時集合?

 どこのモール?


 中村は、ほんの一瞬だけ考える。

 曖昧にしたら、また同じになる。


 近場のショッピングモールは、“色々思い出すな”と言われても無理な場所だ。


「そうだ、あそこがいい。

隣町のショッピングモール」


 言い切る。


「あの、駅から直結のとこ」


「あ、隣町の?」


 有本がすぐに反応する。


「いいじゃん、あそこデカいし。

 ゲーセンもフードコートも選択肢多いしさ」


 スマホを取り出し、検索し始める。

 画面の光が、彼女の顔を照らす。


「主催者、ちゃんと“息できる場所”選べてるの偉い」


 また、図星。


 逃げるためじゃない。

 でも、追い込まれない設計。


「……うん」


 千代田が小さく息を吐く。


「無理しなくていい場所って、大事だから」


 棘はない。


 評価というより、確認。


 逃げではない。

 選択だ。


「じゃあ決まりね」


 有本がスマホをしまう。


「何時にどこ?現地集合? それとも駅で待ち合わせ?」


 ちらっと笑う。


「まさかとは思うけど、“また来週!”とか言わないよね?」


「言わない!」


 即答する。


 少しだけ笑いが重なる。


「時間ねーどうしようかな。まぁ、遅刻は置いていくかもだぞ……自己責任ね」


「へー、来週って言わないの偉い」


 有本が笑う。


「ちゃんと“続きある終わり方”したもんね」


 千代田がほんの少し口元を緩める。


「途中で切らないやつ」


 その一言は、軽い。


 でも意味はちゃんと重い。


 隣町なら、気持ちも切り替えやすい。


「……日曜、ちゃんと行くよ」


 千代田が静かに言う。


 約束だ。


 空気は、さっきより軽い。


 でも、全部が軽くなったわけじゃない。


 軽さの下に、ちゃんとした緊張がある。


 消えない。

 逃げない。

 でも、閉じ込めない。


 日曜。


 余白のある場所。


 主催者は、そこにいる。


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