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星の降る夜に、僕は何を願うのだろうか  作者: 大澤陸斗
星の降る夜に僕は何を願うのだろうか・上(幼少編)
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第二章「星の子」3

 今日は週に一度の休息日。


 僕はエミリーとの稽古を終え、特にやることもなく図書室へ向った。そんな僕がやることは相も変わらず魔道書を読むこと。もういじめられることも無くなったので勉強する必要はないのだが、魔法というものはやればやるだけ練度が上がっていくので、それがまた楽しくてつい新しい知識を入れたくなってしまう。


 ——それにしても、ルカはなんであんなに慌てていたんだろう?


 ルカのあの慌てぶりからして一緒にいたあの子は星の子なのだろう。星の子が城内で保護されるという噂は耳にしていた。まあ、ガチガチに監視やら衛兵がつくだろうから僕が関わるタイミングなんてないだろうな……。


 そんなことを考えながら階段で二階まで登り、図書室に入る。


 お目当ての本がある書架へ迷うことなく向かった。


 入ってから右側の六番目の書架。僕が通路に入ろうとすると、誰か先客がいた。


 銀色の髪をした女の子。髪の色を見た瞬間、さっきの子だとすぐにわかった。


 少女はある一つの本に手を伸ばす。それは僕が読みたかった魔導書第六項。彼女も読みたいのだろうか……。


 少女が本を手にとり、両手で持つとこちらを振り向いた。つぶらな黄色い瞳は、まるで教会の色付きガラスのように煌びやかで美しい。綺麗な目だな——と思っていると少女が声を発した。


「君がラルフだよね。初めまして。私、リオラ。よろしくね」


「……ああ、よろしく」


 少女は一度にっこりと微笑むと、手に持った本を僕に差し出した。


「君が探してるのはこれ……で、あってるよね?」


「……ありがとう……」


 僕は手を伸ばし、差し出された本を受け取る。すると、リオラがポツリとつぶやく。


「……くる……」


「へ?」


 バタンと扉が開く音がこれでもかという大きさで鳴った。その後、馴染みの怒声が部屋中を駆け巡る。


「おい! リオラ、どこへ行った!!」


 一瞬にして心臓の鼓動が速くなる。僕は動悸を感じながら書架の列から顔を出した。


「モーゼス、図書室では静かにしてくれ。びっくりするじゃんか」


「悪い悪い。ちょっとそれどころじゃなくてよ」


 と、言いながらモーゼスは、頭の後ろに手を置き、詫びいれているつもりなのか頭を下ろす。


「なあ、ラルフ。星……じゃなかった。銀髪の黄色い瞳をしたお前と同じくらいの背丈の女の子見なかったか?」


 僕はちらりとリオラの方を見やった。——が、そこにいたはずの彼女の姿はない。


(え? どこにいった? さっきまでここに……)


「ラルフ……、なんで返事しないんだ?」


(まずい。何か答えないと……)


「いや、知らないねー。もし、そんな珍しい見た目の子がいるなら一度会ってみたいよ」


 自分でも動揺していることが丸わかりの揺らぎ声で答えた。だが、モーゼスは気にしない様子だった。


「そうか……、見てないか……。悪かったな邪魔して」


 そう言うとモーゼスは部屋を出ていく。


 扉が閉まり、モーゼスの足音が遠くへ消えていった。その途端、僕の隣で少女が再び姿を現わす。


「うわ!? びっくりした。君、消えることもできるの?」


「そうだよ。匿ってくれてありがとう」


 リオラは、にっこりと微笑んだ。こっちは動揺を隠せない。返事に少しの間があいてしまった。


「どういたしまして。じゃあ、僕は読書するからね」


 リオラにそう言い、僕は窓辺の一際明るい席に座って本を開く。


(確か……、ここからだ。左手で魔法を使う鍛錬方法。通常利き手ではない左手は感覚回路が右手ほど脳と同期していない場合が多く、魔法の発動は難しい)


『通常利き手ではない左手は感覚回路が右手ほど脳と同期していない場合が多く、魔法の発動は難しい』


「…………」


 頭の中でリオラの声が復唱した気がしたけど、まあいいや続けよう。


(しかし、戦場では右手に武器を持っている場合が多く、左手でも魔法を発動できるようにしておくことが望ましい)


『戦場では右手に武器を持っている場合が多く……』


「あの、テレパシーで復唱するの、やめてくれない」


「復唱した方が頭に残ると思って」


「進みが悪くなるからやめて」


「わかった」


 そう返事をするとリオラは僕のことをじーっと見つめる。


「何?」


「遊びたい」


「他の人に頼んで」


 そう手を振ってあしらっても、彼女は僕のことをじーっと見続けた。やがて両拳を体の前で握ると——。


『あそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼ……………』


 いきなりリオラの声が幾重にも重なって頭の中を飛び交った。キンキンと響くその声に、僕の頭は早々に悲鳴をあげる。


「やめろー!! 頭が痛くなる」


 僕が頭を抱えながら立ち上がると、なおもリオラは微笑みながら遊んでほしいと訴えた。


「わかったよ。何して遊ぶんだ」


「こっち来て」


 と、リオラに手を引かれ僕は窓辺に連れてこられた。リオラは外を指さす。指し示した先にあったのは、塔だった。


「あの塔に登りたい」


 リオラの指示した塔は、確か見張り用で、今は全くと言っていいほど使ってないはずだ。


「登るのはいいけど、遊びの要素なんてあるか?」


「リオラは、今脱走中だから誰にも見つかっちゃいけない。誰にも見られずに塔まで辿り着くことが遊びの要素」


「なるほど……、それなりに面白そうだな。だけど、どうやって見つからずにあそこまで行くんだ? 途中に姿を隠せそうなものは無いよ」


「大丈夫。リオラ、姿消せるから」


 リオラは目の前で姿を消してみせる。


 ——遊び要素、全部無くなっちゃうのだけど……。


 率直に思ったことだったが、それすらもリオラは読み取る。


「……ああ、そうか。でも、リオラあそこに行きたい」


 どうやら、遊びたいというよりもあの塔に行きたいというのが本音のようだ。僕も気になっていた塔でもあるし、付き合ってあげることにした。

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