第四十二話 新生勇者パーティ
勇者討伐を終え、俺達は更なる会議を重ねた。主に議題は新たなる勇者の認定、逆賊ナグツェリア王国の討伐案件、安芸、ノーラの精霊騎士引退と、新世代即位、が主な議題である。
最初に結論から述べる。新しく勇者となったのは、神の使徒、つまり俺だ。これに付いては、昨日の晩に会議した面々の満場一致で可決された。後日各精霊都市の議会でも会議が行われたが、こちらも満場一致で可決。
俺としては勇者何て役職は受けたくはないのだが、俺が勇者を打ち取った以上、その代わりは俺がするべきであろう。尤も、勇者自体は後発的に誕生する事もあるので、その時は正式に勇者の位を譲ろうと思う。
これに付随し、新たに勇者パーティが組み直された。人員は、神の使徒事、俺。新たに剣聖の称号を得たムラマサ殿。そして大賢者マコト君、上位僧侶カエデさん、竜騎士カズヤ君、魔法使いサツキさん。この6人が基本的な勇者パーティとなる。
このパーティを結成中は、全員に創世神の加護による庇護が与えられる事になる。庇護を与えた結果、竜騎士は相棒のドラゴンが幼竜から上位竜へと進化。魔法使いもユニークスキルの進化と共に、職業が超魔導に進化している。
何故、敵側だった竜騎士と魔法使いが味方になったのかと言えば、ある意味当然の結果である。竜騎士はムラマサ殿に鍛え直され、魔法使いはアリシアに心酔。何よりこの二名も『被害者』である以上、俺の下に置くのが良いと言う決定だった。
続いてナグツェリア王国の処遇であるが、既にかの国は歴史から消える事が確定している。追加情報として大賢者から得た情報によれば、ナグツェリア王国貴族は一枚岩ではなく内部崩壊を狙う事も可能との事。
一応民間人に罪はないので、可能なら反抗的な王侯貴族の処断の後、融和主義の反王派を据えて政治経済を安定させる。元より暴走しているのは国の上層部、権力者。この国自体が対魔族の要であるので、消滅させる訳には行かないのだ。
ただし、人間と言う生き物は欲と野心に溺れる生き物。どうやって清く正しい貴族を選ぶのか。これに付いては、次の議題の精霊騎士の進退が関係している。
続いての議題は精霊騎士に関する物。今回の戦いを契機に、風の精霊騎士レオナと、地の精霊騎士ノーラは正式に引退した。既に高位精霊騎士候補は育っているので、今後安芸とノーラは補佐メインで活動しつつ勇者パーティの一員として同行すると言う形になっている。
知っての通りノーラは魔眼、真実を見抜く魔眼を備えている。これにより反ナグツェリア王派の真意を見極め、可能なら利用。不可能なら条件付きで雇用と言う形を取る。
今回の元凶だから、と言って一切合切を全て切り捨てては、また一から政治の経験を積む必要があるので、これは避けたかったと言うのが本心である。政治力が一人前になる前に、魔族に滅ぼされる可能性が高いのだ。
それと今回、精霊騎士を引退する事になった安芸とノーラは、勇者パーティの一員として新たな称号を得る。安芸、ノーラの両名が『守護星騎士』の称号を得る。精霊騎士の上位と言う位に当たり、神の使徒直属の護衛、と言う事になる。
基本的に守護星騎士は俺の専属護衛だ。勇者パーティとして活動する時も可能な限り同行するので、実質安芸とノーラも加えた8名で行動する事になる。有事以外であれば、守護星騎士の二人が俺と行動を共にすると言う形に落ち着いている。
そして現在、安芸とノーラは精霊騎士を引退した事により、正式に妻として迎える事が出来た。そう、俺は二人と結婚したのである。こんな素敵な嫁が二人もである。間違いなく、現世ならあり得ないだろう。
また余談ではあるが、守護星騎士となり創世神の加護を受けたノーラは、種族進化を果たした。ドワーフと猫獣人のハーフであった彼女が、妖精種であるケットシー種へと進化を遂げた。これで名実共に猫、として可愛がる事も可能だろう。
これによりノーラの身体的特徴も変化。今までは130センチ程の小柄な少女であったが、ケットシー種へとの進化で身長も150センチ程まで成長する形になった。今までは大人と子供であったが、今では兄妹に見える程度までの身長差となり、内心ほっとしている。
因みにこの種族進化による恩恵と、創世神の加護の効果が合わさる事でノーラ自身の能力も大幅に向上した。妖精種は精霊種に近い高位の存在。ある意味で神々の配下である、天使に近い能力を持つとされている。
その為だろうか。限定的にではあるが、ノーラは熾天使級の力を行使する事が可能となった。熾天使とは、神々に仕える天使族の中でも、最高階位を持つ存在だ。その一片とは言え力を引き出せる事に俺は驚いた。
ノーラ曰く、全ては俺を守る為。である。ありがたい、安芸に続きノーラまでもが俺を想ってくれている。本当に最高の妻を得たと思うと自然と笑みが零れる。
次に新世代精霊騎士に付いて。風の精霊都市はフィリアが正式に風の高位精霊騎士へ、残りの四名が同格補佐として活動する事になる。また、俺や安芸とのパワーレベリングを真似する事は難しいが、継続的にパーティを組んで後輩の育成、強化を行っている。
地の精霊都市でのノーラの後継者はノルンが正式に拝命した。これで風と土の精霊騎士は代替わりが行われる事になった。これに伴い火と水の精霊都市でも後継者の育成を開始。アリシア、マリンはまだ引退せず現役を務めるとの事。
何より精霊騎士の任務は激務である。現状ではアリシア、マリンの処理能力を超える状況下では、傭兵や冒険者の協力で対応しているが、一人の処理能力と負担軽減を考え、最終的には風と土の精霊都市と同様の稼働体制を作ると言う事である。
「んじゃ、火と水の精霊都市でもパワーレベリングするか?」
と言う俺の一声。実際、既に風と地の精霊都市では、下位精霊騎士が高位精霊騎士候補に片足を突っ込んでいる状況と言う事を話した。色々国政で忙しくなる前に、対ナグツェリア王国戦後の未来を見据えての提案だ。
『是非とも。寧ろお願いします』
そんな形で素直に提案を受け入れてくれた。アリシア、マリン共に是非レベリングを。と懇願して来たのである。頼まれなくてもレベリングには行く予定だったのだが、前倒しになった形だ。
最後に俺達の現在レベルと戦力を紹介して置く。勇者を討伐した事で、俺のレベルは168から298に。信じられない事だが、勇者のレベルは457であったそうだ。凄まじい経験値である。
安芸のレベルが176から212に、ノーラのレベルが170から207に。また、ナグツェリア王国への宣戦布告の為の日程調整に合わせて、火と水の精霊騎士と、下位精霊騎士のレベリングを行った。
結果、アリシアが145から215に、マリンが241から259へとレベルが上がって居る。アリシアの従者で剣聖の称号を得たムラマサ殿のレベルは180。レベル自体は俺達の中でも低いのだが、技量が桁違いで実測は不明。
そして大賢者マコト君がレベル352、上位僧侶カエデさんがレベル345、竜騎士カズヤ君がレベル321、超魔導となったサツキさんが318と言う形であった。こうしてみると、やはり異世界人のレベルが突出しているのが分かる。
しかしこれで安心はできない。何故なら魔族は下位の物でも、レベルは90を超える。中位で約150程、上位となれば更にレベルは上がり、レベルは250台と言われている。
俺達のレベルからすれば低い、もしくは同格であるが、この世界の住人からすれば凶悪過ぎる敵となって居る。全体的に人類種の平均レベルも上がって来ているが、まだ下位の魔族にすら届かないのである。
この魔族のレベルに関しても、過去に召喚された勇者が対峙した時に計測した物であり、現在ではもっと高次元の脅威として成立している可能性があるのだ。
現在までに確認されている最高は、過去に討伐された魔王のレベル956だと言う事から、どれだけ危ないかが良く分かるだろう。尤も、現状で魔王のレベルは不明。四天王、神雷のケリュケイオスの襲撃から存在する事は間違いない。
魔族は魔王の力によってレベルとステータスが驚異的に伸びる。俺の持つ創世神の加護による効果で、眷属が引っ張られる感じに似ている。実測値としての魔族のレベルは二倍程度に膨れ上がるそうだ。
余談ではあるが、これら強力な魔族と純粋に殴り合いが可能なのが、勇者の役職を持つ異世界人と言う事になって居る。この世界で誕生する後天的勇者も確かに強いのだが、異世界人の勇者には今一歩及ばない。
と言っても成長係数は破格で、並みの異世界人と同等位にレベル、ステータスの上昇率が高い。しかしそれもあくまで、異世界人の勇者と比べたら劣ると言う話である。
何はともあれ、様々な問題を解決するのに十日と言う期間が設けられたのだ。そしていざ宣戦布告と言う段階で、連絡が取れず行方不明だった聖獣が帰還した。ガルーダはベヒーモス以外に、二柱の聖獣を引き連れて。
本来聖獣は決まったエリアから移動できない制約がある。この為各精霊都市の防衛、精霊騎士への加護をメインとして活動するのだが、今回からこの制約が解かれたと言う。
それに伴い、四大聖獣は俺に挨拶する為に訪れた。風の聖獣ガルーダ、地の聖獣ベヒーモス、火の聖獣イフリート、水の聖獣ケートス。
今回のナグツェリア王国殲滅戦への参加はしないが、共闘し各都市への外敵の侵入を防ぎ、必要とあらば即時召喚に応じると言う契約を交わす事となった。
常時俺と行動出来るのはガルーダのみであるが、限定的に各属性の頂点たる聖獣を使役出来るのは大きい。対魔族戦でも大いに活躍してくれるだろう。では、仕上げに掛かろうか。




