1-14. 安堵
「―― !」
サーキィが突如うしろを振り返った。
すぐそこに、カイがいた。
「やあサーラさん、出発の時間はもうすぐですよ」
どうやらわたしを探しに来たようだ。
「おっと、こちらは。ええと、たしか題材屋の」
「ああ、あまり店頭には出ていないが、彼女も店員だ。地霊人のサーキィという」
「そうですか。見かけたことあるような気がしたんです」
「…… …… ?」
「どうしたサーキィ。彼は題材屋の上得意、カイヴァーン殿だ。彼が、父を捕まえるまで案内してくださる」
「こんにちは、サーキィさん」
「あなた なにもの?」
「何者であるのがいいですか?」
サーキィがなにやら動揺しているようである。ああ、もしや。
「サーキィ、彼は動術家なのだ。そなた、それを感じ取っているのではないか?」
「なんと」
「そういうことらしいです。どうぞよろしく」
カイは帽子を少し上げてあいさつした。その時気がついたが、彼は額に頭環をはめていた。洲の外ではああいう装身具が普通なのであろうか。
「つよい ちからかんじる」
「そうですか? いやぁぼくも地霊人の方とこんなに近くでお話しするのは初めてで」
カイはのんきな顔をしているが、サーキィはまじまじとカイを見つめていた。
「…………………… しょうち」
サーキィは、カイをためつすがめつしているかと思ったら、突然何事かつぶやき、わたしのほうを向き直った。
「サーラさま たびだち 余はとめない」
「そうか、わかってくれたか!」
どうやら同行者のカイが強力な動術家とわかって、安心したと見える。
「ただし」
「む」
「余もついていく」
「なぬ」
また変な声が出てしまった。
わたしが驚いている隙に、サーキィはすばやくカイのほうへ振り向き、
「サーラさま てんかごめんのむこうみず どうかどうかよろしく たのむ」
そう言って、ふかぶかと礼をした。
「これはこれは。旅の仲間が増えてうれしいです」
カイは屈託なく答えるのだが、わたしとしてはどう反応していいものか。
あと誰が天下御免の向こう見ずであるか。心外である。
「余は サーキィ・ロイ ともども よろしく カイヴァーンどの」
「ええ。カイと呼んでください」
「サーキィ、そなた家名があったのか」
「ない 地霊人はすべて ロイ」
むむ。そういうものなのか。なぜわたしは知らんのだ?
「おしえたこと あったとおもう たぶん なかったっけ?」
サーキィは目を細めて首をかしげた。記憶を掘り出そうとしているのだろうが、体が小さいので、首をかしげようとしても体全体が傾いているかのよう。
その一挙一動があまりに心をくすぐるので、わたしは彼女に飛びつき愛でたくなったが、カイの手前、控えざるをえない。
「さあ、船の時間が迫っています」カイは道の先を指差した。「急がなくては」
「む、そうか。いやしかしサーキィまで行くというのは……」
「サーキィさん、そのままついてきてもらいますが、いいんですね?」
「よい」
「では、行きましょう」
わたしの懸念を討議する時間的余裕はなく、取り急ぎ飛空船乗り場へ向かった。
うやむやのうちにサーキィが同行することになってしまったが、そのことでわたしの胸のうちに心強さの灯がともったことは、認めなければなるまい。
次回 >>> 「 離 陸 」




