やっぱりこの学校にいた
昨日は散々な目に合ったが、今日からはいつもの日常が始まる。
いつも通りに起きて、顔を洗い、食事をして、決まった時間に家を出る。僕は徒歩で高校に行ける距離なのでそこまで早く出る必要がない。電車通学の人間は早く出ないと遅刻したりするだろうが、僕に関しては最悪始業時間の10分前に出られれば遅刻しないで済むレベルで近い。
高校までの道のりを歩んでいる間は昨日のことが頭をよぎる。
昨日の姉妹が着ていた制服はどう見てもうちの高校のものだった。姉妹は両方ともかなり美形だったし、高校では人気だったりするかもしれないな。まぁ…僕には関係ないけど。
そのために本名は名乗らずに、適当な名前を名乗った。これで僕が彼女たちに巻き込まれることはない。
―――――――
高校に着くと、下駄箱で上履きに履き替えて教室へと向かう。
前から歩いて来る男子の会話が自然と耳に入って来る。
「今日も長倉姉妹は可愛いな」
「そうだな。あんな可愛い子と付き合えたら、もう何も言うことはないな」
長倉姉妹?
そんな有名な姉妹がこの高校にいたのか。この高校に1年も通っているのにまるで聞いたことがない。
まぁ、関係ないか。
教室に着いて、自分の席に腰を下ろすと前の席の奴が話し掛けてきた。
「おう、梅原」
「久米」
久米喜和。容姿は整っている方で茶髪の短髪。性格も明るい方でクラスの中心になることが多い男だ。僕とは全然真反対の人間ではあるものの、なぜか話すようになった。別にそこまで仲良くなるような出来事があったわけではないんだけど。
「今日は一段と目が死んでるな」
「そうか。じゃあいつも通りだ」
それから他愛のないような話をして、そろそろ切り上げようかと思ったタイミングでさっきの男子の会話が頭をよぎったのでちょっと聞いてみることにした。
「長倉姉妹って知ってるか?」
「知らないわけないだろ」
「…そうなのか。じゃあ、かなり有名だったりするのか?」
「お前は本当にこの高校に通っているのかと聞きたくなる」
「通っているに決まっているだろ。お前が一番分かってるだろう」
「だけどよ…通ってて『長倉姉妹』を知らない奴がいるとは思えないんだよ」
「そこまで有名なのか…」
確かに僕は人に興味がない。誰がどうなろうとそこまで気にしない人間ではあるが、そうか…美形な人たちだとは思ったけど、有名人だったのか。
「何年だ?」
「1年生だよ」
「あ、なら僕が知らなくてもおかしくない。同級生ならまだしも後輩なんて関わる機会が全くないからな」
「いや、関わる機会がなくても耳にするだろ。今、この高校で一番知名度のある女子だと思うけどな」
そこまで人気なのか。
でも、そんなに注目されると日常生活にも支障をきたしそうだ。どこに行っても色んな奴からの視線に晒されて、気が抜ける時すらなさそうだ。なんかそう思うと少し可哀そうだと思ってしまった。
―――――
それからいつも通りの日々を過ごしていく。あっという間に昼休みになっていたので、10秒でチャージできる飲料を飲み終わると、後はスマホをいじる。
何事もなく、生活が送れていることに感謝していると、廊下の方から奇声や歓声のようなものが聞こえてきた。
しばらくはその状態が続き、5分ぐらいすると落ち着いて来て、いつも通りになっていった。
―――――
そして授業が終わると僕はすぐに帰る支度をした。これ以上、高校に残る理由というものはないのですぐに帰る。
支度を終えて、教室を出て、下駄箱まで行く。するとそこには人だかりができていて、下駄箱までたどり着けそうにない。
「なんでこんなに混んでるの…」
いつも同じように帰るが、今日みたいに混んでいる日は今まで一度足りともなかった。
そしてしばらくしてやっと…この混雑の理由が分かった。人混みの中から…二人の女子生徒が見えた。
周りの生徒は「長倉姉妹って可愛いよな」「付き合いてぇ!」とか言っているので、あれが長倉姉妹なのだろう。
「やっぱり、昨日会ったのは長倉姉妹だったのか」
白髪のポニーテールとショートの女子生徒。姉妹と聞いた時からそうかもしれないと思っていたが、この目で確認して改めて同一人物だと理解した。
それにしてもただ姉妹が歩いているだけでこんな人だかりができるのか。
これは芸能人と同じレベルと言ってもいいぐらいだ。
彼女たちがどこかに行けば、自ずと人混みもなくなるのでそれまで待つことにした。
ここで強行突破してもかなりの大量を消費するのは目に見えているし。
それにしても…あんなに注目されると大変そうだなぁと思いながら帰路についた。




