美人姉妹は完全に別れたらしい
休みが終わると僕はいつも通りに朝起きて、高校に登校する。そして教室に着けば、自分の机に荷物を置く。
最近では珍しいことではなく、久米が振り返って来て話しかけて来る。
「おい、梅原」
「なんだ?」
「長倉姉妹が別れたらしい」
「そうなのか」
「お前の興味なさは本当に筋金入りだな」
「興味がないというか、僕に関係がないからな」
「まぁ…それはそうだが」
それに高校生の恋愛なんてほとんど別れるだろ。またここから復縁して戻るかもしれないし、人の恋愛に何でそこまで一喜一憂できるのか本当に分からない。
「僕からすればお前たちがなんでそこまで人の恋路で騒げるのか、分からない」
「それはそうけど、ここまで学内で有名な姉妹に対して全く興味を示さないお前の方が異質だよ。普通であれば多少は気になると思うがな」
「気にならない。僕の人生に関係ないからな」
「本当にお前は変わらないな」
そこで久米もやっと興味を失くしたのか、これ以上喋りかけて来ることなかった。
授業は適当に受けていれば自然と時は流れるもの。
昼休みはいつも食堂で食べるようにしているが、今日は朝余裕があったからコンビニで買えた。後は食べる場所だけ。
あんまり一目に付かないような場所が良いと判断して、僕が思いついたのは屋上だった。あそこは閉鎖されているため、立ち入ることができない。
だったら僕も立ち入れないと思うかもしれないが、あそこの扉は経年劣化が激しくて鍵穴を上手いようにすれば開くようになっているのだ。
屋上に繋がる階段を登っていき、やっと扉の前まで来たところで僕は異変を感じた。なぜなら扉が開いているのだ。
ここは立ち入り禁止になっていて、鍵はしっかりと閉めているはずだ。
そんなことを考えていると扉の先から声が聞こえてきた。
「本当のこと言ってよ」
「俺は本当のことを言ってるよ。キミたちの方がおかしいよ」
「じゃあ…ぼくたちのことを助けてくれたのは正寛くんなの?」
「そうだよ。会った時からずっと言ってる。俺がキミたちのことを助けた男だ」
なんか聞こえて来る声は男女が揉めている。
そして僕は思った。
これは明らかに面倒くさいし、こんな揉め事に関わりたくないため、仕方なく屋上を諦めることにした。
僕は外のベンチが空いていたから、そこで食事をすることにした。本当は人の声も聞こえない屋上が良かったが、あの様子じゃ絶対に面倒だ。それにしてもあんなところで男女が揉めるとは。
別れ話がこじれたりしたのかもな。
午後の授業も始まると終わるまではあっという間だ。
すぐに帰ろうとしたタイミングで、朝以来に久米が話しかけてきた。
「そう言えば、姉妹が今日は早退したらしい」
「それは僕に関係ないが」
「まぁ…そうだけど」
「それにしてもなんでお前がそんなことを知ってるんだ?」
「色々と情報が集まって来るんだよ。それにあんな有名な姉妹が一緒に早退したら、この高校ではニュースだ」
たかが早退と思ったが、二人一緒に早退したということは何かしら事情があったんだろう。どちらかが体調を崩して、もう一人が付き添った可能性だって全然ある。
それなのに早退だけでニュースとは。
「お前は将来新聞記者にでもなるのか?」
「どうだろうな。今の段階で将来のことなんて何も決めてないからな」
「まぁ…そうだな。変なことを聞いたな」
「いいって。お前の方から質問してくるなんて珍しいからな」
僕は久米と別れて下駄箱へと足を進めた。
下駄箱で上履きから靴へと履き替えて、出るタイミングで僕を誰かが呼び止めてきた。
「一緒に帰らない、梅原くん?」
そこには満面の笑みを浮かべた、井野がいた。




