epilogue
第四次世界大戦は地球に巣食う下等で矮小な人間達が引き起こした人類史上最悪の罪業である。特に最初の一ヶ月、後に奈落の霜月と呼ばれるその期間に地球は限りない程に思えた命、その猶予すら失ったとされる。
人間の繁栄を差し引いて二億年、地球環境の自然的な変動を差し引いて三十億年。今より遥か時の果てに見えていた生命の終着点が、人間達の小さな争いによって急速に狭められた。
人間にとって小さな存在である蚊が媒介する病原体で多くの命が奪われたように。地球にとって小さな存在である人間が振り撒く毒で遥かな地球は終わりへ向かう。
悲劇的な始まりをピークに、残る数百年に及ぶ期間は冷戦状態で長く尾を引く。この時期に宇宙への進出を各国間で競争した結果、古の時代に空想とされた高次元の科学技術を生み出す。
夜空に上がる花火の美しさがその散り際にあるように、愚かな人間達は最期の栄華に全身全霊を注ぐのである。
主要各国が書面で平和を築き上げた今も、世界各地の環境破壊は取り返しが付かない。海は枯れ、大地は割れ、汚染された空気と蔓延る死の循環は人間にはどうしようもない。
地下都市・ムーンライトの上部、大日本帝国の地表面はかつての象徴でもあった富士山の噴火と奈落の霜月を起因とする大地震で首都圏の一部を残して壊滅する。
溢れ続けるマグマが本土を分断し、終わらない火山灰の噴出が永遠の冬を呼び、難を逃れた地域は急速な砂漠化によって人間は住処を追われた。
それでも図太く生き足掻き地下街を拡張して巨大なシェルターを構築すると、現在へ至るまでに人間は再び活力を取り戻していく。
全ての日常と常識が覆って、戦争がもたらした法の見直しは弱肉強食の世界を作り上げる。破滅の道を突き進む人間の所業に終わりは見えない。