第六章 分担(5)
俺は自分のベッドへ目を向けた。そこには掛け布団で何かが覆われていて、まるで細長い山脈のように盛り上がっていた。
そして、掛け布団に覆われずに露出している一角から、その下に隠れている人物の存在が分かった。
端月は俺の目の前で手を伸ばして掛け布団を引き開け、その人物の姿が露わになった。
──それは、俺がネット通販で買った、二次元の黒髪ロングストレートのヒロインであるゲームキャラクターの抱き枕だった。
幸い、最初に買ったのは胸が露出していないタイプだった……しかし、よくあるシーンデザインのように、そのキャラクターはベッドに横たわっている姿で描かれていた。
服は少し乱れていて、さらに恥ずかしそうな表情でこちらを見つめている。
もともとはこんなにも素晴らしく癒やされる光景だったのに、大切な恋人を目の前にすると、俺は突然、現場の温度が一直線に下がり始めたように感じた。
ああ──なるほど、端月の冷たい視線に見つめられているからか。
「えっと、その……ちょっと説明を聞いてくれ……」
俺がそう口にすると、端月は頷き、続きを話すことを許してくれた。
「前に君に話しただろ……君がいないと、俺は我慢できなくなるかもしれないって……だから、彼女に手伝ってもらったんだ。でも、この世界で……いや、この次元で、俺が一番愛している人は、間違いなく繫 端月だ」
「二股……」端月は拗ねたように言った。
「ごめん、もしかしたら二つだけじゃないかもしれない……でも、その、あれだよ! 俺は本当に君が好きなんだ。信じてくれるか……?」
端月は顔を強張らせ、俺に冷たい表情を向け、俺に苦しさを感じさせた。
俺たちはしばらく見つめ合い、彼女はようやく表情を緩め、柔らかな口調で言った。
「もう……あなたをからかっただけだよ」
端月は下から視線を上げて俺を見つめた。
「私のために我慢して、他の女を抱きに行かないっていうなら……まあ、ぎりぎり受け入れてあげる。でも、ほどほどにしてね?」
俺は一歩近づき、まず少しだけ前置きするような動きをして、端月が許してくれたのを見てから、彼女を抱きしめた。
「俺は本当に君を抱きしめたい……でも、俺は我慢する。君の準備ができたその日まで待って、その時は心を込めて君を抱くから、覚悟しておいてね? だって俺は君のことが大好きだから、その時は少し激しくなるかもしれない」
俺が耳元で囁くと、腕の中の端月は恥ずかしそうに笑い、俺を抱きしめている手で背中を軽く叩いた。
「うん……私を待ってくれてありがとう。その時になったら、本当にあなたをそんなに激しくさせられるかどうか、様子を見てみようね」
彼女が顔を上げた隙に、俺は少しずつ顔を近づけ、二人の唇はそのまま触れ合い、「ちゅっ」と、半分吸い、半分探るように彼女の存在を感じた。
俺の脳が痺れるような感覚を覚え、彼女を抱きしめていることで、その感覚が全身へと広がり、愛する恋人へのキスにさらに深く没頭していった。
しばらくして、俺たちはゆっくりと離れた。
「果物を食べようか……?」
俺の少し我慢しているような言葉を聞いて、端月は頷いた。
その時、彼女は突然少し迷うような表情を浮かべ、俺は一瞬困惑した。
そして、彼女は口を開いた。
「さっき逐幸を食べたけど……果物はあれより甘いのかな?」
──その言葉に、俺はたまらなくなった。
「じゃあ、果物は食べないで、もう何回かキスしようか──?」
「それはダメ。これじゃ終わらなくなっちゃう。早く食べよう。せっかくおばさんが私たちのために用意してくれたんだから」
「分かった。君の言う通りにするよ」
少し名残惜しい気持ちを抱えながら、俺は端月をそのままベッドに座らせ、俺は彼女の隣に座った。
保存容器の蓋を開けると、俺はフォークでドラゴンフルーツを一切れ刺し、白い果肉を恋人の唇へ近づけた。
あーん。
まるでそんな声を出したように思えたが、実際には端月は小さく口を開けて、そのドラゴンフルーツを食べただけだった。それだけで俺の表情は溶け始めた。
すぐ隣にはもう一本使えるフォークがあったが、端月は俺の手からフォークを奪い、俺にも一切れ食べさせてくれた。
これまでも食べさせてもらった経験は少なくなかったので、今の俺はもう緊張して味が分からなくなることはなかった。それでも、端月に食べさせてもらうたびに、俺はまるで遠い昔の出来事のような感覚を覚えた。
「美味しい……?」
端月は期待に満ちた視線で尋ね、俺は照れくさそうに答えた。
「君のほうが美味しい。あとで何回かまた食べたいんだけど、いい?」
端月は「もう、仕方ないんだから」と「また何言ってるの……」という気持ちが入り混じった、嬉しそうで呆れたような表情を浮かべ、俺にツッコんだ。
「おばさんが突然来たらどうするの?」
「じゃあ、俺たちがキスしてるところを見せてあげよう」
「私は嫌。そんなの、すごく恥ずかしいよ」
「君にそんなこと言われたら、もっとキスしたくなった」
俺はその隙に、またゆっくりと彼女へ近づいたが、端月はフォークを持ち、俺より先に果物を俺の唇へ当てた。
果肉はひんやりと冷たく、俺が口を開けると、果物が口の中へ滑り込んできた。端月がフォークを引き抜くと、俺は寂しさと幸せを同時に感じた。
「早く果物食べようよ……」端月は甘えるように促した。
「でも、俺は……端月が食べたい」
「はいーはい、早く食べちゃおう。食べ終わったら、キスしていいから──」
そこまで言うと、俺は素早くもう一本のフォークを手に取り、別の一切れのドラゴンフルーツを刺し、自分の口に入れて積極的に噛んだ。
その光景を見て、端月は嬉しそうで恥ずかしそうなため息を漏らした。
果物を食べ終えると、俺たちはまた何度かキスをした。
端月は俺の本棚にある蔵書を見終えると、俺のパソコンを見てみたいと言ったので、俺は電源スイッチを押した。可愛い恋人はそのままパソコンチェアに座った。
パソコンが起動処理を終えると、画面にはロック解除を待つ画面が表示され、そこに映し出された画像を見た端月は微笑みを浮かべた──それはゲームのCGで、男女の主人公二人がベッドのそばで娘を寝かしつけている場面だった。
俺は端月に少しどいてもらい、パスワードを入力すると、無事にユーザー画面へログインした。
俺は再びベッドに座り、コップを手に取って冷たい無糖紅茶を一口飲み、それからコップを置いた。
端月は小さな驚きの声を上げ、その瞳には温かさと幸せの光が浮かんでいた。
「ちょうど私、今日はこれもつけてるのに……あなたが私のために設定したの?」
端月はパソコンの壁紙を見つめながら、自分の耳にも触れた。
ログイン後の壁紙には俺たち二人の写真を使っていた──去年のクリスマスイブの日、俺が端月に贈った、小さな星と三日月を控えめにあしらったイヤリングだった。
その日、彼女は俺にイヤリングをつけてもらったあと、嬉しそうに俺の手を引いて、自分のスマートフォンで一緒に自撮りをした。今表示されているのは、その写真だった。
写真の中の俺はぼんやりした顔をしていて、あまり写真映りが良くないように見えるが、隣にいるヒロイン役の端月はとても美しく魅力的で、この写真を見るたびに、俺はあの日の幸せを思い出す。
今こうしてこの壁紙を眺めても、やはり同じ気持ちになるので、俺は端月に言った。
「ここ数日で設定したわけじゃないよ。前に君の家に行った時、君が父さんがいるから恥ずかしくて壁紙を使えないって言ってただろ。だから、それなら俺が自分で設定しようって思ったんだ。この写真を見るたびに、俺はやる気をもらえて、これからも頑張り続けられるんだ」
端月は俺を見て、それから耳元にある……彼女が身につけている銀灰色の三日月型のイヤリングにもう一度触れ、少し甘えるような声で言った。
「前にも見たことあるけど、今はもう少し近くに来て、もう一度これを見てくれない……?」
俺は少し疑問に思ったものの、恋人に近づける機会を逃すつもりはもちろんない。
俺は立ち上がると、少し腰を曲げながら彼女の耳元へ近づいた。その時、端月は少し頬を動かし、まず甘く微笑んで、それから柔らかな唇を俺へ向けてきた。
俺の唇も瞬時に痺れるような感覚と、彼女から放たれる温もりを感じた……
……ちゅっ──……ん、ん…………ちゅっ──……
俺たちの唇が互いに擦れ合い、俺は目眩がするような感覚を覚えながらも、どうしようもなく夢中になった。
二人がゆっくりと離れると、端月はまた笑った。彼女は潤んだ桜色の唇を弓なりに曲げ、その姿は本当に美しかった。
俺が感慨に浸っていると、思いもしなかったことに、端月は突然立ち上がって俺の肩を押さえ、ベッドへ押し倒した。
「ちょっと、端、ん──! ん……」
端月は俺の首に腕を回し、美しい唇で再び俺の唇を弄ぶように、吸い、そして擦り合わせてきた……
俺は思わず手を伸ばして彼女の背中を抱きしめ、彼女の俺への想いに応えた。
ん…………ちゅっ──ん……ちゅっ──………んん……────
俺たちは二、三回キスをし、端月が息ができなくなるまで続けたあと、彼女は少し力を込めて俺の腕の中から抜け出した。
「いつ、から……そんなに、積極的に……なったの……?」
俺は思わず彼女の行動を恨めしそうに装って言った。
俺がまだ準備できていない時に端月からキスをしてくる経験は今までなかったので、俺は一方では新鮮に感じ、もう一方ではペースを彼女に握られているような感覚も覚えた。
「だって、あなたが、いつも使ってる手……こっそり覚えた、んだもん……」
端月は俺の腹部に手を置き、俺の上に跨り、顔を赤らめながら言った。
彼女の瞳には慈愛と恥じらいの光が浮かんでいた。
「あ……逐幸、興奮してる……可愛い……可愛すぎるよ……」
彼女が俺の上に半ば座っているため、俺の身体のある部分は恋人の情熱によって、正直に生理的な反応を示し、愛する彼女へ自分の欲望と興奮をまっすぐに伝えていた。
その時、端月はまた俺を驚かせる言葉を口にした──
「あなた、きっと辛いよね……今日は、私がしてあげてもいいよ? 手でも、口でも、あなたを楽にしてあげられる。だって私……逐幸のあっちの温度を感じたいの。どうかな……?」
その言葉を聞いて、俺は少し呆然としながら端月の唇を見つめた。もし彼女の口に包まれて、思う存分に解放できるのなら、きっと気持ちいいのだろう……
そう思うと、俺はさらに身体を強張らせた。端月は俺の目から俺の欲望を感じ取ったようで、ゆっくりと俺へ手を伸ばした──
「──え?」
その時、彼女は小さな声を上げた。その理由は、俺がそっと彼女の手首を握ったからだった。
「大丈夫だよ。だって、これじゃ不公平だろ?……端月だけが一方的に手や口で俺を楽にしてくれるなんて……俺はそんなふうに、一方的に君に奉仕させるのは嫌なんだ……俺は、いつか君の準備ができたその日に……これを、君の身体の中で使って、ちゃんと君を愛したい……だから、今日はいい──ありがとう、端月。君が今、俺を愛してくれてることも……壁紙のことで、君がすごく喜んでくれたことも、俺にはちゃんと伝わってる」
俺の言葉を聞いて、端月は少し呆然とし、それから唇をきゅっと結び……ゆっくりと頷いて言った。
「分かった……じゃあ、それはまた今度にしよう」
しかし──彼女は続けて言った。
「あなたがそんなに優しいから……私、今本当に我慢できなくなっちゃうかもしれない。私、今すぐあなたとしたいって、思っちゃうよ?」
俺は彼女に笑みを向け、それから言った。
「ついにまた俺の魅力にやられちゃったんだね……悪いな。俺って、こんなにも人を惹きつけちゃうから」
端月は俺に優しい表情を返し、俺の上から起き上がると、パソコンチェアに座って言った。
「もう、あなたのことを何回好きになり直したか分からないよ。じゃあ今から、あなたのパソコンで遊ばせてもらおうかな」




