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最弱村人だった俺が、AIと古代遺跡の力で世界の命運を握るらしい  作者: Ranperre
第4章「魔法の芽と忍び寄る影」

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12/201

誰にも知られぬ勝利──十歳の英雄譚

 ユーリは地面を蹴り、アンデッドの群れへ向かって走った。


 冷静に、距離を測る。


 三体。腐敗した肌、濁った目。おそらく元は人間だった個体。


 ナイフのような骨の爪を振りかざし、呻き声を上げながら迫ってくる。


「……まずは、一体ずつだ!」


 ユーリは腰のガンスラッシュを抜き、勢いよく振り払った。


 ──斬撃!


 銀の刃が軌道を描き、最前の個体の首を切り裂いた。


 肉が裂け、骨が砕ける。体が崩れ落ちる前に、銃形態に変形。


「チャージ、3秒……撃てる!」


 残る2体のうち、右側に向けてトリガーを引いた。


 発射されたのは、雷撃を纏った炸裂弾。


 電撃が肉を焼き、アンデッドが一体、痙攣しながら崩れ落ちる。


「……よし、あと一体!」


 最後の個体がすぐ目の前まで迫る。


 顔が近い。腐臭と、うめき声。


 が──


「ルシア、火球展開!」


「Executing: FireBolt Prototype_β」


 ユーリの右手に、小さな魔力球が生成される。構文に沿って構築された、それは高温の小型爆炎。


「──はぁっ!」


 放たれたそれは、相手の胸元に直撃し、爆ぜる。


 地面に火花が散り、黒煙が立ちのぼった。


 数秒後、すべての反応は消えていた。




「……ふぅ」


 ユーリは深く息を吐いた。


 指先が震えていた。喉も、乾いていた。


 だが、それ以上に──


 心の奥で、何かが燃えていた。


 守れた。自分の手で。


 初めての「実戦」。初めての「勝利」。


「……これが、“戦う”ってことか」


 振り返ると、森の向こうに村の灯りが見えた。


 あそこに、アネリスがいる。


 守りたい人が、いる。




 その夜、ユーリは誰にも気づかれないように村へ戻った。


 翌朝、村の南東部に獣の死骸が見つかり、警備が強化されたが──


 誰もそれを倒したのが、十歳の少年だとは思わなかった。




 そしてその少年は、いつものように裏山へ向かう。


「遊び」という名の訓練を、今日も続けるために。


 ──彼の背中には、昨日より少し強くなった影があった。

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