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18.脳筋令嬢の鉄槌

いつもご愛読いただき、ありがとうございます!

久々の更新になります。

お待たせしてしまい、申し訳ございません。


 それは一瞬の出来事だった。

 奴は魔法剣を振りかざすと、私を滅しようと衝撃波を発生させた。


 私は身体全体に力を籠め、衝撃波を受けきる。


「へぇ……僕の≪ファスト・ソニック≫を生身で受けきるなんてね」


 クレストは驚いているみたいだが、それは私も同様だ。


 ただのキザ野郎かと思ってたけど、なるほどね……


 流石に今のはちょっと驚いた。

 これはそれなりに楽しめるかもしれない。


「でも……これならどうかな!」


 クレストは魔法剣を天高く突き上げると、詠唱する。


「幻影剣よ。我が敵を滅せ……≪ソード・オブ・ファントム≫!」


 上空の複数の魔法剣を発生させると、同時に襲い掛かってくる。

 一発目を避けると剣は追尾し、私に牙をむく。


「はははっ、逃げているだけだといずれ串刺しになっちゃうよ?」


「なら、ぶっ壊せばいいってことね」


 アドバイスありがとう。

 私は再び全身に力をため込むと、襲い掛かってくる剣を拳でぶっ壊していく。

 

 しかし向こうは無数の剣の集団……一個一個壊してたら埒があかない。

 

「なら……はぁぁぁっ!」


 身体に流れる魔力を放出し、一時的な衝撃波を出す。

 剣たちは私を貫く前に全て粉々に砕け散った。


 が……


「ふふっ、とても良い対処法だったと思うけど後ろがガラ空きなのはいただけないね」


 見ると、クレストが私の背後に立っていた。

 クレストの魔法剣は私を屠ろうと言わんばかりに光を帯びていた。

 

「とりあえず気を失ってもらうよ……今度はホテルで――ぐぅっ!?」


「今度はホテルで……なんだって?」


 私の拳は彼の剣よりも早く腹部に届いていた。

 さっきの剣術といい、この男はスピードに自信があるみたいだが、見えないほどじゃない。


 早くてそれなりに強度がある攻撃……それだけじゃ、物足りないのだ。

 似たような魔物とは何度も戦っているしね。


「今度はこっちのターンね……」


「こ、この小娘っ……! よくも僕の美しい身体に……」


 クレストの逆鱗に触れたか、彼の剣術は圧を増す。

 先ほどの余裕な笑みはなくなり、笑いたくなるような面白い表情となっていた。


 というか僕の美しい身体ってなに?

 どんだけ自分が好きなわけ?


「予定変更だ。君は今すぐここで殺すっ!」


「上等じゃない。やれるものならやってみることね」


 良い眼をしているじゃない。

 私的にはそっちの方が断然良いと思うけど。


「我が剣よ、凍てつく刃となりて降りそそげ! ≪アイス・オブ・フォール≫!」


 上空に魔方陣が現れると、鋭利な氷の剣が降り注ぐ。

 同時にクレストの覇気を帯びた剣術が私を襲う。


「死ねッ……死ねッ!」


 先ほどの爽やかさはいずこへ行ったのやら……

 完全に今の彼は何かにとりつかれた野獣のような表情に変わっていた。


 ちょっと面白いので、もう少し楽しもうかと思ったけど戦闘を引き延ばすのはあまりよくなさそうだ。

 王都ではちょっとした騒動であっても、凄まじい速さで騎士たちが駆けつけてくる。

 

 で、恐らくもう騎士たちが駆けつけているところだろう。

 

 もう少し堪能したいところだったけど……仕方ない。


「悪いけど、もう終わらせてもらうわね……」


 私は自らの拳に魔力を集中させる。

 同時に脈打つ心臓にも自身の気を籠めた魔力を注ぎ込んだ。

 

「原初の魂よ。振るいあがれ……!」


 自身を振る立たせ、眼光と共にスピードとパワーを底上げする。

 

「は、速い!」


 クレストが驚くよりも先に私の初撃は彼の脇腹にクリーンヒットする。

 そこから二撃、三撃と間髪入れずに叩き込む。


「うぐっ、バ……カな……この僕がぁっ!」


 まだ立ち上がるだけの気力があるみたい。

 でも次で全てが終わる。


「あんたは一度、自分の行いを悔い改めなさい。本気で大切にしたい人がいるならね?」


「な、なにを言って……」


 私の右手に武人の血が注がれる。

 大気が震えあがり、気の波動が私を包み込んだ。


「この愚か者に鉄槌を……≪爆裂竜撃打≫ッッ!」


 流石に以前の魔物ように風穴を開けるわけにはいかないので抑え目に放つ。

 とはいっても、軽く記憶の一部が吹っ飛ぶくらいはあるだろうが……


「な、何者なんだ、お前……は……」


 その一撃は彼にクリティカルヒットし、崩れるように地に伏した。

 意識は完全に失っており、ピクリとも動かない。


「あんたみたいな心も身体も弱い男なんて要らないわ。骨の髄まで鍛えて出直してきなさい」


 私はそんな彼に近づくと、捨てるように言葉を吐いた。


「お疲れ様です、お嬢」


 戦闘を終えると、バトラーがやってくる。

 

「何事だッ!」


 同時にタイミングよく、騎士たちもご到着したみたい。


「お嬢、あとはお任せください。先に新市街の停留所まで行っていてもらえますか?」


「分かったわ。なら念のため証拠(これ)も渡しておくわね」


 私はバトラーにクレストのスキャンダルが収まっているブツを渡すと、一足先に戻ることになった。

 その後、バトラーは上手い具合にやってくれたようでクレスト一行は騎士たちに連行されることになるのだった。

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