真っ直ぐ男子
『こんばんは、一条さん。鈴木です』
普通の挨拶なのに、
「ど、どうしよっ!?」
すっごく緊張する!!
熱い。
お風呂上がりみたいに、首元や頬や、耳元が………ほてってくる。まだ入っていないのに。わ、私は、普段、夜の8時過ぎくらいに浴室へ………、ってそんなのどうでもいい!!
「も、もう!!」
ベットで寝そべっていた体を起こした。リラックスしている場合ではない。
スマホをじっーーーーーと見つめること、3分くらい。
「なんて返事しよっ!?」
こんなの初めてだったから。男子からの、なんの飾り気もない、裏の無いメッセージ。
素直で真っ直ぐな男子の文って、私、すごく弱いかも………、って、そんなこと思っている場合じゃない。
「ちょ、ちょっとは絵文字とか使ってよねっ!」
女子が気に入りそうな可愛いのとか。それか顔文字とかさっ( ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾!! そしたら、私は返事しやすいの! この子、私に気があるなぁ〜って、読めるから。
「でも鈴木くんは………」
どんな気持ちでこのメッセージを送ってきたんだろう? 私みたいに緊張してる? 気がある? それとも、普通な感じ!? ふ、普通だったらなんかムカつく!! 主導権は、わ、私なんだから!!
ピコン!
「ひゃっ!?!?」
またスマホが鳴った!? また鈴木くんから、追いメッセージ!?
『今日は突然水族館に誘ってごめんなさい。でも、もし一条さんが良かったら、土曜日、一緒に水族館に行きませんか。イルカの写真を可愛く撮れたらいいなぁと思います。お返事はゆっくりで大丈夫です』
「こ、こんなの………、ありえない」
教室の、ただ隣の席の鈴木くんに。
私の顔は、とても熱くなる。
地味で、モブ系な男子の鈴木くんに。
私の鼓動は、大きくなる。
水族館が好きな鈴木くんに。
ドキドキするなんて。
ベットの枕に顔を埋めた。私以外誰もいない部屋で、誰にも聞こえないように。
「こんなの、初めて………」
私は、小さくつぶやいてしまったのだった。