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第46話 雪原の盗賊団

「マーテル大丈夫だ、俺が毒見してるんだから」

「はぁ……人の舐めた食器を使うというのは、ちょっと」

「贅沢言うなよ! 飲まないなら全部俺が貰うからな!」


 転移事件から2日、俺達は名も無き集落で休息を取り盗賊団の襲撃を迎え撃つ準備を進めている。

 ここの住民の話だと、盗賊団は数が多いが戦闘力はそれほどでもなく、ちょっと強い一般人ぐらいの強さのようだ。こん棒とナイフを武器にしているようだが、なぜかナイフの方は使ってこなかったらしい。


「おーい! 奴らだ、奴らが来たぞい!」

「マーテル、配置に付こう」

「ええ」


 俺達は、家の裏口から外に出て、それぞれ配置についた。俺は村の外に、マーテルは俺と村人の両方をサポートできる位置に。


 みんなと考えた作戦としては、奴らが荷物を運びだそうと村から出たところに俺が奇襲を仕掛け、足止めされた盗賊団達をマーテルの支援を受けた村人達と挟み撃ちにして仕留める。

 帰り際を狙う事で、奴らの気のゆるみを誘ったり、住宅に被害を出さないようにしたつもりらしいが、真っ先に村の娘さんを開放してやらなければならない手間を考えると、単純に袋叩きにした方が楽だと俺は思うんだがな。


 おっと、奴らの犬ぞりの音だ。3、2、1、ここだ!

 狙うは犬ぞりを操る先頭の男、こいつを倒して集団をパニックにさせてやる。その隙に娘さんを助けて、残りの奴らを倒して終わりだ!


 ――パシッ

 な!? 俺の足蹴りが防がれた!? 色も匂いも完璧に周りに溶け込ませたはず、そんな状態で俺の奇襲を防いだとなれば、考えられる事はただ1つ。


「シンク、作戦は中止です! 村人が我々を盗賊団に売りました!」

「汚い言葉使うぞ…………死ねばいいのにあいつら!!」 


 天力を駆使して、俺の元にたどり着いたマーテルが、村人の裏切りについて口にした。あいつら、俺の情報を売る事で、今回の取り立てを無かった事にしてもらったらしい。


「こうなりゃ正面対決だ! マーテル支援を!」

「はい【右手に剣を、左手に盾を】」


 俺の体を、赤と青の光が覆った。天力による攻撃力と防御力の強化だ、あんまり長引かせると天力がもったいないので、速攻で終わらせる。

 まずは飛び膝蹴りを叩きこみ、右腕をへし折る、これで1人。勢いそのままに、隣の男にひじ打ちを1発、これで2人。守りが薄くなったところで、リーダーと思われる男に突撃、首をへし折って終わりだ!


 ――ブオン

 聞きなれた、オーラを展開する音が耳に届いた。俺の回し蹴りは、オーラを纏った男の左手に阻まれていた。そして、回避する暇も与えず、男の右腕が振り下ろされた。鈍器で殴られたような衝撃を受け、俺はその場に倒れた。防御強化が無ければ、気を失っていただろう。


 火花が散るような視界から何とか情報を得ようと、視線に力を込めた俺は背筋の凍るような光景を見てしまった。ゴキゴキと音を立てて、俺が倒したはずの盗賊達が何事もなかったかのように復活したのだ。


「マ、マーテル、誰が回復魔法を?」

「……! いません。いくら調べても、盗賊団に癒しの力を持つ者はだれ1人!」

「んな馬鹿な! 勝手に骨が治るなんてありえない!」


 俺はリーダーから離れ、周りの盗賊に手当たり次第に攻撃を仕掛けた。奴らの動きはのろく見えた、こん棒の一撃をかいくぐり、腕を折り、足を折り、首を折ったにもかかわらず、奴らは何度でも再生して襲ってきた。そんな攻防をリーダーが黙って見ているはずもなく、俺の無駄な抵抗は1分もしないうちに終了した。


「……こいつらを(かしら)の元へ連れて行く、すぐに拘束しろ」

「「「ガッテンでさー」」」


 はは、奴らがちゃんと、人間の言葉を話せる事に安心させられるなんてな。アジトに連れていかれたら、どんな目に合うか分かったもんじゃないし……一か八かやるしかないか!


「マーテル! 俺を攻撃しろ、肉が裂けるぐらい激しく!」

「え!? え?」

「いいから早く!!」


 光の槍が俺の腹に突き刺さり、雪原を赤く染め上げた。俺の予想通り、盗賊達はザザッと退いた。


「さあ、俺を連れてったらどうなるか、分からないとは言わないよな?」

「……引き上げだ。各自、持ち場に戻れ」


 盗賊団は、あっさりとその場を去った。


「シンク今回復します! 一体なぜこんな事を?」

「魔物は血の匂いに敏感だから、血だらけの俺を連れてったらアジトが魔物に荒されるって、判断したんだと思う……」

「血……ですか。なるほど、それなら彼らがナイフではなくこん棒を武器にしていた意味も分かります」


 うう寒い、天力の加護が弱まってきてるようだ、傷の修復もなかなか進まないし、この傷は自分で治そう【ハイヒーリング】。はぁ、しばらくは、天力の消耗を抑えるようにしないとな。


「いったん戻ろう、ここにいても消耗するだけだ」

「ええ、あまり気は進みませんが」

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