第45話 どうぞ召し上がれ、おいしい毒入りスープです
「おお、やはりあの光は女神様が、皆の者、宴の準備じゃー!」
俺とマーテルの旅立ちから数時間、やっと一番近い集落に到着した。
【悪しきよ去れ、豊かなる実りよきたれ】の効果は残念ながら30分しか持続せず、ここに来るまで吹雪にうたれながらの移動になった。幸い俺には【空中歩行】のスキルがあるため、マーテルを担ぎ上げ、【インパクト】で推進力を生み出す事で、2人とも足を濡らさずにここまで移動できた。
「わたくしの【吟遊詩人の足跡】を発動させ、周辺の地形を確認しましたが、どうやらこの近くに他の集落は無いようです。ここでしばらく休養を取り、次の集落を目指しましょう」
マーテルの能力は、索敵や防御といった支援に特化した力らしい。彼女の支援が無ければ、人里を見つける事はおろか、吹雪の中を無事に突っ切る事も絶対に出来なかった。ありがたやありがたや。
「ささ、女神様もお連れの方も、どうぞ遠慮なさらず」
「ああ、温かい、大地の恵みに感謝を、いただきます」
んじゃ、さっそく恩に報いるとしますか。この毒入りスープから守ってやろう。
俺はマーテルのさらをひったくると、村長と思わしき人間の口の中に放り込んでやった。村長は、必死に吐き出そうともがいたが、しばらく後ぴくぴくとしか動かなくなった。
「な!? 何故毒だと分かった!」
「こっちの質問が先だ、俺達をどうするつもりだった!」
毒が分かったわけは、俺の名前の呪いのおかげだ。俺は毒や麻痺を受けると、妙な痛みに襲われる体質だからな、スープの1口目で舌先にチカッとした痛みが走ったから分かった。
で、問題は彼らが何故毒を盛ったかだ。次の村までかなり距離があるようだし、事と次第によっては、この集落を乗っ取る必要があるかもな。
「お許しください旅の方! 実はこの村は、盗賊団に支配されているのです。事あるごとに顔を見せては、食糧や若い娘を要求してくるのです。これ以上村の娘を失いたくない、そう思い、そちらの娘さんを盗賊団に差し出してしまおうと考えてしまったのです!」
うわー、盗賊だってさ。せっかく安全に寝られると思ってたら、盗賊に支配されてたなんて、ないわー。
「それでは、盗賊を討伐するより他ありませんね」
「え~あ~、逃亡か戦闘か……」
「しっかりなさい! あなたはわたくしの加護を受けた勇者なのですよ、たかが盗賊如きに後れを取るはずありません! わたくしも力を貸します、共にこの村を守りましょう!」
彼らを見捨てて、このまま旅だったとしても、次の村まで体力が持つかは分からない。それに、いいかげん体力の限界が近そうで、早く横になりたい。ここは、彼らを助けて寝床を貸してもらうのが、得策な気がしてきた。
「おお、賊を退治していただけるのですね、ありがとう」
「べ、別にあんたらの為じゃないんだからね! 自分の為なんだからね!」
うっわ、我ながら気持ちわり―。




