第34話 真夜中の勲章授与式
次回から、第4章開始です。
「うう、理不尽だ! 何で俺、勲章貰えないわけ!」
「だってシンクは、な~んにもしてないじゃない」
ダンジョン出現から7日、ダンジョンは無事攻略された。俺達は、それを祝うための晩餐会に出席しているところだ。
勝因は3つ、ダンジョンが小規模で攻略が比較的容易だったこと。2つ、俺が頑張って戦力を前線に送り続けたこと。そして3つ、彼の活躍が最大の要因だろう。
「ゴンゴンさん、おっと失礼、ゴンゴン・ガンナックル様、あなたの活躍を歌にしたいのです、よろしいでしょうか?」
「ガンナックル様、今夜わたくしと夜を共にしていただけません?」
「ナックルさん! うちの武器の宣伝よろしくお願いいたしやす」
彼が今回の作戦の英雄、元可哀そうなゴンゴン改め、ゴンゴン・ガンナックルである。ガンナックルというのは名前につく称号の事で、国王又はそれと同等な権限を持った者から与えられるらしい。
彼は今回の作戦で、ダンジョンに1つしかなかった出入り口を大岩でふさぐという神技を披露したのだ。さすがわ、怪力ゴンゴンと呼ばれていただけの事はある。
ダンジョンの入り口をふさいでしまえば、あとはその周りに安全地帯を設け、じっくりと攻略していけばいい。ここで俺の活躍が光るわけだが、人員が予定より多く確保できたことである作戦が実行可能になった。簡単に言えば、水没作戦である。
これまたゴンゴンさん主体で、ダンジョンの出入り口を壁で囲い、大勢の魔導士達の【クリエイトウォーター】でダンジョンを水没させ、【サンダーボルト】を打ち込み魔物を全滅させることに成功した。あとは【水中呼吸】のスキルを持った誰かにダンジョンコアを破壊してもらえば、ダンジョンはただの洞窟になり任務は完了。1ダメージもくらう事のない、完全勝利だった。
「シンク君、君のおかげでオレは伝説になれた、心から感謝している」
「そうでしょう、俺のおかげでしょう、なのに俺の報酬ゼロなんですよ!」
前線で戦う奴、だけが偉いんじゃない! 戦いを制すには、武器がいる、食糧がいる、人員がいる。あ! 今回の俺、怪我を治して人員確保して、買い占めをやめさせて武器の品質を確保して、マスターの料理人の才能を開花させて食糧まで確保してるじゃないか!
「そこまで言われると、シンクの活躍のおかげな気がしてきたわ」
「だろう! よってカンナ、俺は報酬を所望する……痛くないやつで」
「分かったわよ、じゃあ――――」
カンナが、俺の耳元でささやいた。
「シンク殿、カンナ殿に何を言われたであります?」
「うわぁぁぁ、子供がそんなこと聞くんじゃありません!」
俺は、もう心臓バクバクだった。だってあのカンナと今夜――――。
「おい新入り、カンナ初めてなんだから泣かせるなよ」
「はひぃぃぃ、テニシラさん、ありがとオォォォァァァ!」
晩餐会が終わり、俺はりんごんにありったけの生活魔法をかけてもらい、準備を整えた。はやる気持ちを抑え、カンナに指定された宿屋の1室の扉を開いた。
「いらっしゃいシンク」
「――――綺麗」
そう口にするのが精一杯だった。
これが夢なら、もう二度と目覚めなくてもいい、そう本気で思った。




