②
赤い夢で見たあの家に向かうため電車を降りた駅からバスに乗り、ぼー…っと窓を流れていく景色を見ていると母親は俺の部屋のドアにかけられていた白い花の冠を大事そうに手にしていた。
一緒に持ってきていたらしい。
それに気が付いた俺にそっと話し始める。
「クローバーが茂っている場所にはこの白い花が一緒に咲いてるでしょう?
ねぇ、俊介。この花の名前、知ってる?」
「えっと……シロツメグサだっけ?」
「あら意外!知ってるのね。」
母親は少しだけ笑顔になった。
あれ…以前にもどこかでこれと似た質問をされた事がある気がする。
「このシロツメグサはどこにでも生えてるような花。
でもね、シロツメグサの別名は『クローバー』。
葉っぱだけでなくこの花もそう呼ばれてて、幸福を運ぶと言われる神秘的な花なの。」
花自体が『クローバー』と呼ばれるなんて知らなかったな。
俺はふーんと頷いた。
俺も四ツ葉のクローバーは結構好きだ。
どこか懐かしい気持ちになるからだろうか?
ただ、『願い事が叶う葉っぱ』くらいの認識しかないが。
香織とお揃いにしていた携帯ストラップも本物の小さなクローバーがシルバーのプレートに埋め込まれたものだった。
香織がいなくなった今でもそれはまだ俺の携帯の隅っこで揺れている。




