ブラジル小松菜?
斎藤は直営農場の事務所で提案書を書いていた。
試験栽培。
ブラジルの野菜。
クーベ(ケール)とフェイジャオン(豆)。
一昨日、農場従業員の慰労を兼ねてシェラスコパーティーを開いた。
フェイジョアーダは彼らのソウルフードらしい。
「日本でも、若い人は食べますよ」
そう言っていた。
値段が合えば近所のブラジル人向けにも売れるかもしれない。
せっかくだからと翔がクーベで胡麻和えと煮びたしを作った。
悪くない。
「小松菜みたいですね」
斎藤は思った。
(ブラジル小松菜、って呼んだら売れないかな)
フェイジャオンのぜんざいもありだと思った。
若いブラジル人は、
「日本人らしいですね」
と言いながら試食していた。
年配の人からは、
「豆を砂糖で煮るのは変じゃないですか?」
と言われた。
「ごめん。きな粉とか、大豆の甘煮とか普通にあるんだ」
そう返すと笑われた。
斎藤は少し考えた。
収益性はまだ分からない。
だが難しい作物でもない。
何より彼らが喜ぶ。
「……やってみるか」
そう言うと場の空気が少し明るくなった。
斎藤自身も悪くないと思っていた。
クーベは、ケールの一種だ。
フェイジャオンは、豆。
ケールならすでに市民権はある。
フェイジョアーダはどうだろう。
缶詰は見かける。
豆として売れるかもしれない。
数日後。
提案書はあっさり通った。
種も手に入った。
畑の隅に新しい作物が増える。
大きな制度でも派手な戦略でもない。
だが、確かにここに人がいる。




