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余白を埋めるモノ

会議室の空気は張りつめていた。


農水、経産、内閣官房。

少人数の調整会議。


資料の表紙に赤字がある。


――勝十グループ動向。


北海道資本の焼肉大手。

直営牧場。

価格破壊型スーパー。

そして新規事業。


北海道で大規模な大豆栽培を開始。

直営農場と連動し、飼料・食品・加工まで一気通貫。


大豆は輸入依存度の高い作物だ。

国として増やしたい作物の筆頭でもある。


浦木は黙って資料を読んでいた。


激安の霜降り牛肉。

大豆。

おから。


点が線になる。


(穴を正確についてきた)


勝十はJAや大規模農家から土地を借り大豆を栽培している。

米と違い大豆は規制対象ではない。


現地で豆乳に加工し、副産物のおからを飼料として利用する。

違法性はない。


米は余り気味だ。

農地にも余剰が出始めている。

飼料米の補助金枠を新たに取るのはもはや難しい。


国産大豆はプレミアム商品だ。

既存の大豆は味噌や豆腐で用途が固まり農家との摩擦もない。


規制すべきか。


だが、手段は限られる。

国益と見る者も多いだろう。


制度外で企業が動くのは面白くない。

しかし、感情論で政策を作る人間はここにはいない。


―― 外部資本による農業支配。

輸入大豆が主流の現状では価格や供給の支配は不可能。


―― 中小農家への影響。

そもそも、大豆農家自体がほとんど存在しない。


―― 主導権の喪失。

想定外の形で食料安全保障はむしろ強化される。


―― 一度許せば止まらない。

恣意的な介入は許されない。


農産物の生産量は増えている。生産額も上向いている。


説明はできる。成果は示せる。


だが、制度の主導権が静かに移り始めている。


浦木は最後に口を開いた。


「規制するなら今です。拡大ペースを抑えることぐらいはできます」


誰かがつぶやいた。


「国産大豆の増産は歓迎するしかないだろう。

 大豆と小麦が増えるなら補助金を出してもいいくらいだ」


「勝十以外にも、どこかやってくれればいいんだがな。独走は面白くない」


夜。


庁舎の灯りは、まだ消えない。


農水大臣の記者会見用資料は何度も書き直されている。


――農業は回復基調にある。


その一文を浦木は画面の上で見つめていた。


間違いではない。


ただし、その回復が誰の手によるものかは、まだ書かれていなかった。

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