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怪我するたびに知らない世界に飛ばされる俺、「あれっ?またどっか行くんか!?」歴史の戦略で現代世界を最強にしてしまう。  作者: じゃれにぁ
第四章 違う世界を見るという事

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第四十九話  ー絶対にやりとげ……ー

その日は朝からよく晴れていた。

白堤防と赤堤防の間から上がる朝日は康一の新たな職場での初日を後押ししてくれているようでもあった。


康一は海から歩いて30秒のとことにある「大鷲急便」の門をくぐった。

あの雪の中、チェーン装着を教えてくれた人がいた。

「おーお前かぁ。堂前社長から聞いとるぞ。俺は、妹尾せのお。よろしくな」

所長だった。


事務所を出て荷物の仕分けホームに入ると朝から怒鳴り声が響きわたる。

「早よせえ、おっそい遅い」「ながせ、ながせ、まげんかれ」

真冬の早朝気温2℃全員が半袖か上半身裸だ。体から湯気が立ち昇っている。

女性の事務職の人も2人一緒に荷物を動かしている。


そして朝礼。他にも4名の新人がいた。

所長が「ほれ自己紹介」

朝から圧倒されまくりの康一は心細そうに普通の声で「今日からお世話になります佐藤康一20歳です。よろしくお願いします」

「….ん?なんか言うたか?聞こえなんだけど。ほれもう一回!」皆爆笑する。

顔を真っ赤にして渾身の一声で「佐藤康一です。よろしくお願いします」

「うん。やれば出来る子やな。みんなも負けんように」また笑いが広がる。


隣町・熊野の集配。先輩の横乗り。荷物を持って走る、走る、走る。

康一は思った。『本当に仕事量3倍やな』

夜10時、家に帰った康一はいつもの2倍ご飯を食べて、とける様に布団に沈んだ。


翌朝、他の新人4名が来ていない。退職したのだ。

ここではよくあるそうだ。なまじできないと自分で認めているのに長々と居るよりは良いのだそうだ。


それから3週間。体の大きな熊のような野口先輩に横に乗って貰いみっちり指導を受けた。

野口さんはよく喋る。コースまでの行き帰りはずっと喋っている。

話は楽しいのだが、特に釣りの話をさせれば、止まらない。

でも疲れを中和してくれる様に話してくれるので助かった。


運転日報の書き方、点呼の受け方、荷物の仕分け、積み込み、荷ならし、地図の見方、集配コースの順序、伝票の組み方に貨物追跡端末の扱い。お客様とのやりとり、運賃表の作り方。中継店への流れ。住所店番コード。どれも一長一短には行かない曲者だ。

ひとつひとつを丁寧に教えてくれた。


野口さんは「俺らはさ、コースへ出たら社長なんさ。時間通りに集配ができたら、あとは何してもいい。寝とろうが、遊ぼうが、営業しようが。でもな、その行動が全部自分に跳ね返ってくるんさ。それをふまえて佐藤社長、君は何をする?」


その話を聞いてよく考え、そして答えた。「お客さんが何に困っとるか、何が欲しいかを探す」


野口さんは呆気にとられた様子で言った。「一本取られたな、佐藤社長。俺が8年でたどり着いた営業の真髄。その答え持っとんやな。そうなんやで康一、そこに荷物があろうがなかろうが、都会やろが田舎やろが、お客さんが”今”求めている事になるべく早く対応する。これが一番の営業なんさ。そうやって感じる事が出来るんやったら、営業なんて難しくもない。ひとつの荷物に込められた想いや、どこに置くのが1番いいのかとかがわかるようになる。お客さんにとって大鷲急便はテレビのCMの人じゃない、いつも自分のとこに来て元気な挨拶してくれる兄ちゃんなんやで。その人の立ち振る舞い、荷物の扱いで勝手に営業ができている。広い意味で言えばこれはどんな商売にも言えることやと思うで」


康一は納得した様子で「僕もそう思います」と答えた。

(この人は哲春みたいな青色やな。なんか話に納得させられる。でも少し迷いがある気がする。何があるんやろな。でも今は聞かんとこ)


ようやく独り立ちの日がきた。社内の各種検定に合格し、今日から一人で運転だ。

(さぁ!一番で帰ってくるじょ)


トラックの日常点検、荷物の仕分け、積み込み、出発点呼が終わる頃には、店内に残っているのは康一とホームを点検しながら周辺を見回りしている野口先輩だけだった。

野口先輩に呼び止められ「佐藤社長。一番大事なことは?」

康一は「漏れなく集配し、早く帰って来ることです」と答えると


「違うやろ!安全運転で無事帰る事やろが」


真っ赤な顔で怒鳴られた

初めて野口先輩から叱られた。

(野口先輩って怒らんとおもとった。意外)

康一は違う所に感心していた。


集配コースに到着し伝票を持って運転席から飛び降りて車両後部まで走る。

観音扉を開けると初めて見る荷台の様子に焦る。

(あっちゃー、やったったげー)

荷物が全て『総崩れ』

積み込みが甘かったのだ。これから配達する荷物も潰れている。

それぞれ謝罪しながら配達。正午には予定の半分も終わっていない。

13時には午後便の『ドッキング場へ早く来い』と先輩からの呼び出しだ。


熊野総合運動場近くのドッキング場に着いた。

海鷲の南方面の車両計4台と個人宅配専用の車両4台が勢揃いして待っていた。

「すみません。遅くなりました。」康一が運転席から降りてそう言うと

野口先輩が康一のトラックの荷台に乗り込み、全ての荷物を他のドライバーに積み分ける指示をしている。


康一が慌てて「あの野口さん、遅くなりましたが自分でやりきりますからやらせてください」


すると野口は「康一勘違いするな。俺らはプロドライバー。運転はもちろんやけどな。お前の都合で、荷物を待っとるお客さんにどれだけ迷惑掛かるか分かっとんか?その様子じゃ分かってないやろな。現場では社長って言うたけどな。この大鷲急便の海鷲店のチームワークはすごいんやじょ。これから見したるわ。さぁ配達は俺らに任せてお前は集荷にシフトしていけ!」


実は朝から海鷲店の事務所には未着の電話が殺到していたが所長の指示で康一には知らせていなかったのである。


康一はやるせなさと不甲斐ない気持ちでいっぱいになったが、なんとか気持ちを切り替えた。

全ての集荷を終えて海鷲支店に戻ると全員が康一の帰りを待っていた。

一番最終での帰社。みんな笑顔で『おかえり』と声を掛けてくれた。


全員の無駄のない素早い動きで定刻通りに路線トラックを出発させた。

チームワークを見せつけられた。


「康一、そんな顔すんなって。無事帰って来れただけで上出来だ」

所長はそう言ってくれたが康一は終始浮かない顔をしていた。


康一のこの日は、あの鎌田課長が言った『段取り八分』の意味を肌身に沁みた忘れられない1日となった。


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