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79話 ティアラ

「次はこれですね」


 僕への称号授与が終わるとリールは次の装飾品を持ってきた。

 杖だ。


「こちらは軍の最高司令部より送られました。北部軍最高指揮官杖です」

「初めて見た。ずっと地下にしまわれてたから」

「そうですね。私も直接触れるのは初めてです」


 北部軍最高指揮官杖、北部軍全軍の権力の象徴であり全軍の指揮権が付与されているものだ。

 この杖さえあれば30万の北部軍を自由に動かすことができるということになる。

 安全のためにここ十年くらいはヴァルド地下の司令部直轄の金庫にしまわれ続けていた。

 だから僕も初めて見るし北部人以外で存在を知っている人は少ないだろう。


「これは数千年前のフェリキア統一国中央軍創設に合わせて作られました。フェリキア統一国崩壊と同時に失われた技術で作られていてどんな衝撃でも傷一つつきません。研究部もこれが何でできているのかすれわからないらしいです」

「数千年、、、」


 僕はもうすでに正式な北部軍最高指揮官として就任しているためさっきと違い儀式とかはしなくていい。

 リールから手渡されるとさっきのサッシュと同じく重みを感じた。

 これに30万人を左右できる力があるのだ。

 

「この杖は過去に数回盗まれた記録があります。目的は杖に使われている技術・杖自体の価値・北部軍の指揮権など様々です」

「まあ「これを盗めば30万の世界最大の軍隊がついてきます」ってなれば当然盗みの対象になるか」

「今は明確な指揮系統があるため杖が盗まれても軍が離反することはありませんが過去には杖が敵に盗まれて負けかけたこともあるそうです」

「気を付けなきゃね」

「そうですね」


 僕は改めてレイピアより少し短いくらいの杖を見た。

 本体は黒く、端の装飾は金でできた紋章と大ぶりのダイヤで埋め尽くされている。

 指揮権や技術抜きにしたこの杖自体にも相当の価値がありそうだ。


「さて、最後ですね。これを」


 リールは例のティアラを持ってきた。

 あの王国3年分の予算を使ったというティアラだ。

 説明はさっき受けたが改めてその異常性に呆れる。

 

「これは正式には近衛隊からですが予算はほとんど私のポケットマネーから出したので実質私からのプレゼントです!受け取ってください」


 思い出した。

 こいつ、北部の中でも有数の大金持ちだった。

 

「リール、お金には困ってなさそうだね」


 僕の苦笑いをよそにリールがにっこにこで差し出してくる。

 そう、今僕に笑顔を抜けているこの女騎士は北部山脈の大鉱山を複数所有している馬鹿が着くほどの大金持ちなのだ。

 王国の国家予算3年分を出しても恐らく痒くもないのだろう。

 こんなの帝都の商人たちが見たら発狂するぞ。


「はぁ、、、わかった。受け取るよ」


 僕は受け取ってティアラをかぶった。


「似合ってます!殿下!」


 被るとリールが褒めてくれる。

 

「美しすぎて私倒れそうです!」


 少し変な褒め方だが、、、


「ありがとう」

「では装飾品をこれで全て付け終わったのであとは最終調整だけですね」


 リールがそう言うとメイドたちが髪の角度やティアラの位置などを微調整してくる。


「美しさにおいて今の殿下以上の人はいませんね」


 なぜかリールが自信満々に言う。

 やっぱり親ばかだ。

 

「リールもかっこいいよ」


 リールは僕がここに来る前に着付けを終えている。

 着付けと言ってもリールは今回僕の護衛として参加するためドレスではなく軍服だ。

 軍服と言っても近衛隊隊長のリール専用に作られたものでその美しさには目を見張る物がある。

 黒い下地に純金でできた金糸で複雑な装飾が施されている。

 肩には肩章、胸には今まで積み上げてきた戦果を称える無数の勲章と僕とおそろいのダイヤのフォーク家の紋章が下がっている。

 外ではその上に赤・金・黒で構成された外套を着ることになる。

 帝都貴族どもとその護衛には威圧感マシマシだろう。


「ありがとうございます。殿下の護衛として恥ずかしくないように努めます!」


 リールはいつも以上に張り切っていた。

 

「武器も準備できてます!」

 

 リールは今回僕から預かっているレイピアといつも使っている片手剣を持って参加する。

 今回は相当なことがなければ戦うつもりはないがもし起こったとしてもリール一人でその場にいる敵全員を圧倒できるだろう。

 それに今回は大量の北部貴族と旧貴族が参加する。

 彼らも全員軍から派遣された護衛を付けている。

 もし何かあっても負けることはないだろう。


トントンッ


 そんなことを考えているとドアがノックされた。


「殿下、よろしいでしょうか?」


 ハンナだ。


「うん、大丈夫だよ」

「失礼します」


 ハンナが入ってきた。

 ハンナは身元を隠すために今回は不参加だ。

 それでも馬車の準備や情報収集など役に立ってくれている。

 

「馬車の準備が整いました。エレナ軍団長からも護衛準備完了との連絡が来ました。いつでも出発可能です」

「了解、他の貴族達は?」

「陣営貴族は全員この屋敷を出発しました。先ほど最高位の総督閣下が出発されたところです」

「わかった。僕達ももうすぐ出発するよ」

「了解しました。会場も他陣営最後の参加者が入場したところでしょう」

「皇族は誰が来てる?」


 今回のパーティーは恐らく皇族が参加するだろう。

 もともと僕が帝都に呼び戻されたのは陣営に組み込むためだからね。

 皇族の参加状態は当日の開始直前まで伏せられている。

 

「正統派陣営から第一皇子、改革派陣営から第二皇女の参加が確認されています。貴族派陣営からの参加は確認されていません」

「了解、じゃあ今回はその二人が対戦相手ってことになるね」

「そういうことになりますね」


 あらためて僕は覚悟を決めた。


「行こう!戦場へ!」


 メイドたちの最終調整が終わると僕はしっかりとした足取りで歩き始めた。


「どこまでもお供します!」


 リールも覚悟を決めて歩き始めていた。

次回投稿は火曜日になります。

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