100話 宣言
「諸君は私のことを良く知らないだろう。当然だ!なぜなら私は先月まで遠く離れた北部にいたからだ!」
会場にいる大勢は注目する中僕は堂々と話す。
軍服を着て堂々と演説する少女という異様な状況から民衆からは混乱が感じられる。
それもそのはず、こんな戦う気満々の少女など帝国南部はおろか大陸南部のどこにもいないだろう。
「第一皇子殿下よりご紹介いただいたように私は帝国第五皇女、皇位継承権第5位の人間だ」
僕が初演説の場で皇位継承について触れたためどよめきが更に大きくなる。
「私はこの”武”を極める大会に大きな関心を寄せている!それはなぜか?私自身一人の兵士であるからだ!名乗ったように私は北部軍最高指揮官である!私は戦場で実際に剣を振るい、泥をすすりながら生き延びてきた!私はそれを誇りに思う!」
どよめきは最高潮に達する。
僕の口から予想もしていなかったことが飛び出すからだ。
帝都に暮らす民衆にとって戦場はおとぎ話に出てくる恐ろしい場所程度の認識しかない。
皇族である僕がそこで暮らし、実際に戦ったことがあるなど誰が想像するだろうか?
「そして!これは選手たちに申し訳ないがはっきり言って予選では本物の戦いは一つも見られなかったと思っている!」
「なっ!」
僕の後ろで第一皇子が驚く。
公然と自分の大会を侮辱されたからだ。
「戦士を自称する選手たちに告ぐ!貴様らのその剣では北部の戦場で一刻も生きられないぞ!」
僕ははっきりと言った。
「そこで面白い事を考えた!リール・フォン・フォーク前へ!」
「はッ!」
僕の突然の招集に対してリールは前へ出て来た。
「リール・フォン・フォーク、フォーク家次期当主にして北部軍副最高指揮官、僕の右腕だ!この者も今大会に出る!この者を倒せたものは私と戦う権利を与えよう!」
僕の突然の発言に会場にいる誰もが状況を理解できていなかった。
「簡単にまとめよう。今自分の戦いを侮辱されてむかついたものは私の右腕を倒して前へ出てこい!それが私の出せる武への最大限の礼儀だ!」
一瞬会場が静まり返った。
そして少したったあと。
「うおー!」
「やってやるぞ!」
「やってやれ!」
「俺が戦う!」
会場からは大きな歓声が上がった。
理由は単純。
僕が選手たちに礼儀を示したからだ。
普通、貴族は平民に対して礼儀は尽くさない。
だが今僕が挑発しながらも最大限の礼儀を示したことで民衆は僕のことを少なくとも戦いの場では対等に扱ってくれる皇族と認識した。
第一皇子やその他皇族とは一線を画す存在だと示したのだ。
「以上である!私の右腕が敗北することは万に一つもないだろうが一応楽しみにしているぞ!」
そう言って僕は演壇を降りた。
椅子へ戻る時、第一皇子にこうささやいた。
「民衆は力を見せればすぐ従います。しかし少しでも信頼を勝ち取ればそれを超える信頼を返してくれる」
僕はそう言って椅子に戻った。
第一皇子は唖然としているようだった。
もともとは僕が正統派陣営に属していると一般民衆に錯覚させるための演説だったのが自分の大会を侮辱された上に大会会場にいる民衆を丸ごとこっちに持っていかれたのだ。
「くッ!」
「お見事です」
「ありがとう。でもごめんね、少し敵が強くなるかも」
リールに感謝するとともに謝罪する。
この演説でリールと戦う者の士気は高くなっている。
もともと信頼を少し勝ち取るためだから勝たせる気は毛頭ないがそれでもリールの負担が増えることは事実だ。
「いえ、私は強い敵と戦えればそれで満足なので。それにこの大会は敵が弱すぎますしこれで的が少しでも強くなればいいかなと思っています」
「さすがリール、期待してるよ」
「お任せください」
そう言ってリールは勝利を約束し、この第一皇子との舌戦はひとまず休憩に入った。
今日から復活です!
1か月の間にアイデアも膨らんできたので順調に投稿再開できそうです。
今後ともよろしくお願いいたします。
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