プロローグ
暗い路地裏に足音が響く。
「ハァ…ハァ…」
少年が路地裏の暗がりを駆ける。
何かに追われているのか、時々自分の駆けて来た道を振り返る。
「ツッ…!」
少年が立ち止まる。
目の前にはコンクリートの壁が…。
「クッソ…」
道を戻ろうと振り返る。
ガリ…ガリ…
少年が通ってきた道から何かが道路をひっかく音が響く。
少年の顔から血の気が引いていく。
必死に辺りを見るが隠れる場所も、通れる道もない。
ガリ…ガリ…
音がさっきよりも近くなり音の主が姿を見せる。
暗がりから、20代ぐらいの男が俯いてゆっくりと少年に近づいてくる。
その男の右手に握られている鉄パイプが先ほどからの音の正体のようだ。
男は俯いたまま、更に歩みを進める。
「く…来るな…」
少年がその男に対しそう叫ぶ。
男はその場で立ち止まると俯いていた顔を上げる。
「ひっ…!」
少年がその顔を見て脅えた悲鳴を上げる。
男の目が異様に赤く、そして口元には気味の悪い笑みを浮かべている。
そして、その男の額から角が生えていた…
「お…鬼…」
少年が呟く。
それと同時に男が鉄パイプを振り上げ、青年に走りよる。
その光景を見て少年は一瞬だけ顔をさらに青くする。
次の瞬間には、その顔にニヤリと笑みを浮かべて呟く。
「…バ~カ!」
少年は自分の腰に括り付けられていた物を右手で引き抜く。
カン!
鉄パイプと少年が抜いた物が当たり、甲高い音が路地に響く。
少年は男の鉄パイプを抜いた物押し返し、そこに前蹴りを放つ。
その勢いで男が下がったのを見て左手でも腰から何かを抜く。
少年が構えているのは黒光りするトンファーだった。
「今回は1匹だけか…」
少年は呟きながらもトンファーを構え男を見据える。
「変異して1、2週間ってとこか…」
男はその少年を見て何かを感じたのかそのまま動こうとしない。
少年は男を見てさらに考えをめぐらす。
『あの感じだと同じ手口で何人か殺してるな…』
少年がトンファーを構えている腕を動かす。
男がそれに反応して鉄パイプを投擲する。
それと同時に元来た道を戻ろうと振り向く。
「無駄だよ…」
少年が呟いて鉄パイプを弾く。
それと同時に一つの人影が路地に現れる。
「全く…シャク、先に行ってどうするの…」
男の前に現れたのは少年より少し背が低い少女だった。
「ユカ姉が遅いんだよ」
シャクと呼ばれた少年がそう返してトンファーを回す。
そして、もう一度構えなおして男を睨む。
「それじゃやりますか…」
ユカは両手首のブレスレットを軽く撫でて頷く。
「悲しき魂に祝福を…」
「暗き闇に光を…」
「「悪しき鬼には罰を…」」




