60.夜行(5)
「いっそのこと貨物会社なら貨物会社らしく考えてみようか。」
「というと?」
「コンテナに乗る。」
「あー。」
「何ならコンテナに乗ったままフォークリフトで積み込んでもらう。」
「ちょっとだけ言わせてね。コンテナで人を運ぶことも、フォークリフトで人を運ぶことも、どちらも認められていない危険な行為だからね。わかってるとは思うけど、念のためね。」
「気が済んだ?」
「うん。」
「もちろん、普通のコンテナには乗れないだろうから、人が乗れるのを作る!」
「性能確認用ってことで事業用ならば人が乗れるタイプのコンテナがあるらしいからね。」
「どうせならさ、おしゃれなコンテナハウスみたいのにしたいよ。」
「コンテナハウス一棟貸し、みたいな感じ?」
「そうそう。小さいタイプはそういうのにして、長いタイプのコンテナで2段寝台かノビノビ座席みたいのを作るの。」
「こっちはエコノミータイプだね。」
「あとはフォークリフトでの積み降ろし、アトラクション的で楽しそうなんだけどな。」
「さすがにそれはちょっと危険な香りがするから遠慮したい。」
「運転区間は東京~大阪間あたりかな。」
「最初はそのくらいが良いんじゃない?」
「東京側は東京貨物ターミナルだと不便そうだから、横浜羽沢とかどうなんだろう。羽沢横浜国大駅の近くだよね。」
「JRの羽田空港アクセス線ができれば、東京貨物ターミナルに列車を停めてもらうってのも手だと思うよ。」
「大阪側は確か桜島線の貨物駅がテーマパークの近くにあったよね。」
「安治川口だね。」
「そこなら街中は外れるけど利用者が多そう。」
「途中の京都とか大阪にも停車してもらえると良さそうだね。」
「こんなのができる日が来ないかな。」
「まあ、未来のことはわからないからね。今後の展開に期待かな。」
「それでね、使わないときは貨物駅の片隅に置いてグランピングみたいに使うの。コンテナ・キャンピングで『コンピング』。」
「変な名前だ。仕事の邪魔だし危ないでしょ。」
「働く列車を見ながら夜を過ごせます。」
「うるさくて眠れなそう。ってか僕なら興奮して眠れない。」




