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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第三章 その手を離さないで/never let me go
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98/140

1 あいつはもう離れてったんだから

「とにかく! 俺のベルト掴んで、絶対離すなよ! 離れると……」


「もー……どうして私の危険は察知できないの?! コテツ君のノード、えこひいき過ぎ!」 

「しょうがねーだろ! あ! あっち! 来るぞ!」


 俺とソラは、巨大蝙蝠の群に取り囲まれていた。

 ソラの知識によると、生物の血を吸うタイプだという。


 それは、目をギラギラさせながなら、四方八方から俺たちをめがけて飛びかかってくる。


 ヘルバスティア諸島連合、第三の島、ミルドリディア。その西の外れの薄暗い森の中、ほんのり緑の混じった茶色の巨大蝙蝠達は、その動きの俊敏さもあいまって、とにかく視認しづらい。

 

 特殊な訓練と試験を受けたアレステリア人の一部に発現する、特殊能力「ノード」。


 それを身につけたアレステリア人は、この「7つなぎの国々」の秩序を守る「警邏官」として働くことを許される。

 

 その中でも希な力の一つ……というか、前例が見あたらない力とされている俺の「見分ける力」は、迫り来る危険を、脳に直接響くような光で知らせてくれる。

 

 俺と……何故か、警邏官学校同期の女子、キリン・アリスティア・ノノに迫る危険だけは。


 「あっち?! あっちでいいの?!」

 「それでいい! 撃ってくれ!」


 「もー嫌! 電撃槍!」(ジャベリン)


 ソラがすっと伸ばした手のひらから、眩い電撃がほとばしる。

 それは俺たちに向かってきた巨大蝙蝠に直撃して撃墜する。


 「ほんと、別にコテツ君に守って欲しいわけじゃないけど、一人の女性として複雑な気持ちだわ……」


 ソラがなにやらぶつぶつとぼやいている。数週間前、商人の国「マルカンティア」で、かつて警邏官学校で同期だった、エレナ・ファルフィートに、毒矢で命を狙われた時、俺がキリンしか守れなかったことを、若干根に持ってる節がある。


 しょうがないじゃんか。見えないもんは見えない……。


 !!

 「何あれ!!」


 今まで飛び回っていた蝙蝠より、一回り小さい、しかし異様に速い個体が、2匹……3匹……。

 速すぎる、とても視認できない。

 

 「ソラ……俺の手を掴んでくれ」

 「え……ええ? 私が?」


 「キリンが、共同行使で光が見えるようになってたから、それなら狙えるだろ」


 「う……でも……」

 「はやく! ほら! 手首掴めばいいから!


 「き、キリンちゃん……ごめん……」


 「何でキリンに謝るんだ!」


 訳分からん!

 別に俺はキリンの物じゃないぞ。

 

 おまけに、あいつはもう、俺の力なんか借りないって言って、離れてったんだから。


 「……光って、どこ?」

 「え? あっち、あの辺」

 「ごめん、見えない……」


 ……。


 これもキリンじゃないとできないのか?

 ノードって、共同行使できるんじゃなかったっけ……。


 「コテツ君、電撃撃てそう?」

 「いや……だめっぽい……」

 「じゃ、もうさ、言われた方向に、超広範囲の電撃を放つから……。私、それ一発撃ったら、あとしばらく撃てないからね……」

 

 げんなりした顔のソラが放った、電撃槍10本分くらいの放電は、高速個体もろとも、周囲の巨大蝙蝠を一網打尽にした。

 

 「……やっぱり、私がドレイク君とスパナ君と一緒にいた方が良かったと思うよ……戦力バランス的に……」

 

 そんなこと、今更言ったって、しょうがないだろうが……。


 俺はため息をつきながら、キリンがどうしてるだろうか、と一瞬思ってしまった自分に嫌気がさした。   

読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価★★★★★・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!


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