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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第二章
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14 暴言と安堵

「しかし、こんな強力な毒、おいそれと入手できるもんじゃないですけどね……」

 スパナ君が、男子部屋の真ん中のテーブルで、矢尻からふき取った毒を、試験管に入れて、なにやら液体と調合しながら生き生きした表情で分析している。


 そこから離れて窓際に座ったコテツは、大変不機嫌そうに窓の外の方を見ている。 

 「だから、コテツ、ごめんってば……」

 「ごめんなさい……その……びっくりして……」

 「事情も聞かずに、あんな高出力でぶっ放すかね……」


 女子風呂の壁まで吹き飛ばされ、強打した背中にはスパナ君が温泉と薬草を調合した湿布が貼られている。一晩で痛みはなくなりそう、とのことだったが……。


 「ま、無事で良かったけど、さ……ただ、犯人は気になるな……とりあえず、ドレイクの報告待ち、か」

 そう、ドレイク君は、「速く動く力」を使って、周囲2000歩範囲の高速偵察を行っている。それも、もう半刻ほど経つので、ほどなくして戻ってくると思うけど……。


 「気配は、黒男じゃなかった。あいつだつたら、俺はすぐに分かる。別の奴……それで、キリンかソラ、あるいは両方に恨みがある奴……」

 「私たち、何もやってないわよ!」

 「恨みを買うようなことなんて……そもそも学校外の人と何てほとんど交流が……」

 

 ふと、ソラが目を見開いて、それから眉間にしわを寄せた。


 「…学校内……?」

 「え?」

 

 「私とキリンちゃん……」

 

 ソラがキリンに視線を送った。

 「考えたくないけど……エレナ?」

 

 エレナ。

 恨まれるいわれはない。ただ、何度も何度も、私……いえ、私たちに絡んできたのは間違いない。そして、2の試験では、私たちの石を奪って……それが原因で、失格し、退学になった。


 私たちが何かを彼女にしたわけじゃない。ただ、何かと目の敵にしていたのは、知っている。私やソラに対する態度だってひどかった。どちらかといえば、私たちの方こそ、彼女には良くない感情を持っているくらいだ。

 それでも、退学になったことで、私たちを恨んでいるとしたら、逆恨みもいいところだ。

 

 「何にしても、命を狙われてるのは明らかね。何とかして捕まえないと……」

 

 ***


 キリンが女子部屋に日記を取りに行くと行って、男子部屋から出て行った。

 「……ねぇ、コテツ君」

 「ん?」


 「お風呂場で見た私たちのこと、覚えてる?」

 「なっ……」


 何を言い出すんだ?!

 か、勘弁してくれ! スパナ……ああ、ダメだ、なんか試験管の化学反応に夢中だ……。


 「私たちも年頃の女子なので、それなりにショックなんだけど……」

 「み、見てない! ソラのことはほとんど見えなかった! キリンの陰だったし!」 

 あ、しまった。


 「……キリンちゃんのことは見たってこと?」

 「お、おれはさ、あの……ノードが発動してる間、危険なものとか相手は光って見えるわけ。その分、ほかのところは暗く見えるから……」


 「キリンちゃんは? どう見えてるの?」

 う、あ……。


 「……キリンは、……少し光って見える……」 

 「ふーん、よく見えるってこと? 何を見たの?」


 「ち、違う……その……変なとこは見てなくて……タオルも巻いてたし……」

 く、くそ……何で俺がこんな追いつめられなきゃいけないんだ……。


 「流れ的に、安全を確認しないといけないんだからしょうがないだろ! べ、別に見たくて見たわけじゃない!」


 「……へぇ、そう。見たくもないもの、見せられたってこと?」

 男子部屋の扉が開き、そこには極めて不機嫌そうなキリンが立っていた。


 「だ……だから、それは……」

 「コテツ! 貴様! 貴様という奴は!」


 げ、もっと面倒な奴が帰ってきた!

 「偵察から帰ってきてみれば、女性の風呂に進入した挙げ句、暴言三昧! 今日いう今日は、許さない! お前をこの名刀エクレールの錆にしてくれる!」


 「お、お前ふざけんな!」

 宿を破壊する気か?!

 俺は慌てて男子部屋の窓から宿の外庭の方に逃げ出した。


 「あ、まて! こら!」

 ドレイクが俺を追いかけてこようとしたところで、宿の従業員から、うるさい、とのクレームが入り、俺たちは全体的に一時停戦として、今後の対策を検討することとした。


 ***


 コテツ・インバクタス。

 あいつの力は一体、何だというの?

 あの距離から、何故、私が狙っていることに気付くことができたの?


 その上、射出場所を変えた二本の矢を、正確に防いだ。

 信じられない。


 あれじゃ、キリンやソラを狙撃することなんて不可能。

 接近戦しかない、か。

 

 私はため息をついた。

 そして、ため息をついた自分の中にある感情が、落胆や焦りではないことに気付いた。

 

 安堵。

 これは、安堵だ。


 弓を放つときの、あの感情。

 あれは、恐怖だった。

 嫌悪だった。

 殺してしまうかも知れない、と。

 飛行船の時もそうだった。


 馬鹿な。

 なぜ、ほっとしてるの。

 私は、キリンとソラを殺すの。

 それしかない。


 それしか、もう道はないというのに。 

 泣いている場合じゃない。取り戻すんだ。


 私の道を邪魔した二人を殺して。

 莫大な資産を得て。

 本当の私を。

読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価★★★★★・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!


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