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第125話 情報入手


「おはよう、不満げなお兄さん」


 おばさん受付嬢が嫌味たっぷりに挨拶をする。


「お前に不満なんかない。嫉妬深い女に呆れただけだ」

「ふーん、きれいどころをはべらして贅沢な男だね…………あんた達、見たことないけど、旅人か何か? それとも引っ越してきたのかい?」

「旅人で合っている。ウォルターに行きたいんだ」

「ウォルター……もしかして、3人共、エーデルタルトの出身かい?」


 おや?


「そうだが、知っているのか?」

「テールのルシルから聞いている」


 ルシル……アムールの町のギルマスか。


「何て?」

「表立っては言えないねー。ルシルから伝言だ。大変だったけど、すべて問題なく終了した、だそうだ」


 ふむ……

 獣人族は無事に逃げたか……

 それにギルドにもイルカ、じゃないクジラ亭にも迷惑は掛からなかったようだ。

 しかし、ルシルはなんで俺達がここにいるってわかったんだ?

 …………いや、あいつの優秀さやギルドのネットワークを考えれば予想はつくか。


「ならいい。お前、ここのギルマスか?」


 ルシルが伝言をしたということはこいつがここで一番偉い奴だろう。


「そうだよ。バルバラだ」

「知っているだろうが、俺はロイドだ。ルシルは他に何か言っていたか?」

「ランクアップを忘れてたからDランクに上げておいてってさ」


 やっぱりあれだけタイガーキャットを狩ればDランクにはなるか……

 もっとも、大半は獣人族が狩ったものだが。


「惜しいな……俺達はすでにDランクになった」

「おや、そうなのかい? そういえば、えらい時間がかかったようだけど、何かあったの?」


 こいつもある程度はアムールのことを知っているな……


「漂流してな……南のギリスまで行っていた」

「まーた、すごいところまで行ったね……大変だったろうに」


 バルバラは本音でそう言っている。

 こいつは良い奴だな。

 やはり治安が良い町だと、ギルマスもどっかのギルマスみたいに黒くないのだろう。


「運良く知り合いに会ったんだ。それでここまで送ってもらった」

「そりゃ良かったね。この国はあんたらの敵は少ないだろうし、安心しな」

「この町は平和でいいな。それでだ、さっきも言った通り、俺達はウォルターを目指している。どう行けばいい?」


 本題に入る。


「一番早いのはここから南にある町で飛空艇に乗ることだよ」

「却下。俺達は歩くのが好きなんだ」


 そう言うと、マリアがうんうんと力強く頷く。


「そうかい……だったらひたすら東に行くことだよ。間違っても北に行ったらダメだよ。北はパニャの大森林だからね」


 すなわち、北はテールね。


「わかった。どうやって行けばいい?」

「東の道をずっと行けばいい。この国は平地ばっかりだし、特に障害になるものはない。道なりに行けば、王都に着くよ。そこからさらに東に行けば、お隣のジャス王国だ。そのジャスの東がアダムっていう国。隣のジャスもだが、アダムもわからないからその国のギルドを頼りな。とにかく、アダムを過ぎればウォルターだよ」


 ジャスにアダムか……

 聞いたことがない国だな……


「わからないって言っても、隣のジャスはある程度わかるだろ。ジャスとはどういう国だ?」

「農業が盛んな国だね。でも、本当にそれだけ。作物を周辺に輸出しているだけの平和な国だよ」

「この国とたいして変わらんわけか?」


 ここも十分に平和そうだ。


「平和という意味ではそうだね。エイミルも特に何もないけど、しいて言うなら麻や絹なんかの布製品が特産かねー? まあ、北にテールやエーデルタルトみたいな栄えた国があるから血気盛んな連中はそっちに行くんだよ。ジャスが農業でエイミルが布製品っていうだけで特に変わらないよ」


 エイミルとジャスでは事件がなさそうだな。

 このまま平和にウォルターに行けそうだ。


「わかった。ここから王都まではどれくらいかかるんだ?」

「馬車で2、3日ってところかねー? 歩きなら10日くらいかな?」


 ふむふむ……だるいな……


「もっと早く行く方法はないのか?」

「だから飛空艇」


 ないのか……


「仕方がないな。地道に行こう」

「そう……すぐに出発するのかい?」

「いや、少しこの町に滞在してゆっくりしようかと思っている。テールでもギルスでも事件続きだったからな」


 墜落したり、漂流したりで大変だったわー。


「だったら仕事をしないかい? 討伐系の仕事がいくつかあるけど」

「しない。金ならあるし、今は旅行に来たお貴族様モードなんだ」


 王族だけど。


「贅沢な冒険者だねー……まあ、やる気になったら来なよ。いくらでも紹介してあげるから」

「しないっての」


 俺らがいくら持っていると思っているんだ。


「そうかい。じゃあ、移籍の手続きはしなくてもいいね?」

「そうだな。とりあえずはいいわ。じゃあ、用件は済んだから帰る」

「本当に話を聞きにきただけかい……ギルドは相談所ではないんだけどねー」


 似たようなものだろ。


「感謝はしてる。ではな」


 俺達は必要な情報を入手したのでギルドをあとにし、3人で適当に町をぶらついた後、宿屋に戻った。

 そして、優雅にお茶を飲んだり、話をしながら過ごし、夜には豪華な食事とワインを満喫し、就寝した。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 殿下怖い怖いいいながら、あっさりやらんといかんときは克服しそうな感じするけどな。マリアに配慮してるのと飛行魔法が優秀すぎるから話のために恐怖症続行してる感がすごい。
[一言] 嵐の前の静けさ
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