第124話 良い夢?
俺は飛空艇に乗っている。
もう何度見たかわからない光景だ。
だからすぐにこれが夢だと気が付いた。
この後の展開もわかっている……というか、すでに飛空艇が墜落を始めている。
舵にしがみつき、飛空艇から投げ出されないようにしていると、マリアが飛空艇から落ちそうになった。
そんなマリアを見て、今日も俺は助かったなと思っていたが、すぐにそうじゃないと思い出し、マリアに手を伸ばす。
そして、一緒に落ちた。
目を覚ますと、ベッドでマリアを抱きしめていた。
「……どっちみち、落ちるのかよ」
そうつぶやき、マリアを抱きしめたまま頭を撫でる。
「殿下ぁ……」
マリアの声が聞こえたのでマリアを少し離すと、マリアが不安そうに涙目で見上げてきた。
「助かったか?」
「何故か今日は2人で落ちました」
すまん。
多分、それは俺のせいだ。
「死ぬ時は一緒だぞ」
「死にたくないですー」
「俺もだよ」
俺は不安そうなマリアの顔に自分の顔を近づけると、口づけをする。
「殿下……」
「お前は俺が守るし、たとえ、どっかから落ちたとしても俺の魔法でどうにかしてやる。一緒に長生きして老衰で死のうぜ」
「……お墓までついていきます」
マリアがぽーっとしながら俺の胸に手を置いた。
「ついてこい、ついてこい」
「……もう嫌な夢も見ない気がします」
「それは良かった……さて、起きるか」
「そうですね。朝ご飯も楽しみです」
マリアから離れ、上半身を起こすと、まだ寝ているだろうリーシャを見る。
だが、いつもはスヤスヤと寝ているはずのリーシャはすでに起きていた。
リーシャは掛け布団で身体を隠してはいるものの、いつものように素っ裸で寝ていたため、肩や腕を露出しながら肩肘をベッドにつき、こちらを見ている。
「やんないの? 私に気を遣わずに始めちゃいなさいよ。ここで見てるから」
リーシャが性格が悪そうな顔でニヤニヤと笑いながら俺とマリアに言う。
「マリア、こいつが夢に出てきたことがあるか?」
「たまに出てきますけど、助けてくれたことは一回もありません」
俺もない……
「……お前、高いところから落ちる夢を見たことがあるか?」
リーシャに聞いてみる。
「んー? そりゃあるけど、落ちるというか飛ぶ感じかな? 普通に着地するし」
夢の中のリーシャは人間をやめているらしい。
「あっそ。たまには助けてくれよ」
「どうやって助けるのよ? 私は魔法を使えないし、どうしようもないでしょ」
「お前ならなんとかできそう」
マリアもうんうんと頷く。
「夢の中の私に言ってくれない? 私はどうしようもないし」
「マリア、今夜はこいつを真ん中にしてみるか?」
「うーん、嫌です。血なまぐさい夢を見そうなんで」
それは嫌だな……
「あなた達の私に対するイメージって最悪ね。失礼にも程があるわ」
最悪というか、リーシャは剣の腕もだが、精神的に強すぎるのが良くないんだと思う。
「お前が見た目も心も完璧すぎるからだよ。いいから服を着ろ。朝飯にしようぜ」
「ふっ……」
リーシャはかっこつけて笑ったが、すぐに布団に潜っていった。
「チョロ女、潜るなー。起きろー」
布団を掴んで離さないリーシャを何とか布団から剥がし、起こす。
そして、服を着替えると、宿屋の店員を呼び、朝食を用意してもらった。
「美味しいですねー」
「そうだな」
「まあまあね」
俺達は朝食のパンとスープ、サラダを満喫している。
「殿下、休むのと併せて、今後の計画を練るって言ってましたけど、具体的にはどうするんです?」
マリアがパンをちぎりながら聞いてきた。
「ギルドに行こうと思う。仕事は別にしなくてもいいが、情報を仕入れよう」
冒険者がいるだろうが、この町を見る限り、アムールのようなガラの悪い冒険者は少ないと思う。
「なるほど……確かにこういう時にギルドは便利ですからね」
「ウォルターまでの安全なルートとかを教えてくれると思うし、国の情報なんかも聞いておこうと思う」
「わかりました。では、ギルドですね」
「リーシャもそれでいいか?」
確認しないと拗ねるので一応、聞いておく。
「そうね。この国にどういう町があるのかも聞いておきましょう。いくら安全なルートだからって言って、何もない山村に寄るルートは嫌よ」
確かに……
馬小屋で寝たくない。
「わかった。その辺も考慮して聞いてみよう」
「お願い」
俺達は今日の予定を決めると、朝食を食べ終え、準備をし、宿屋を出た。
宿屋を出ると、平和で明るい街並みを歩き、ギルドに向かう。
ギルドに着くと、ギルド内には数人の冒険者がおり、右端にある依頼票を見ながら相談をしていた。
そして、受付には2人の女性が座っており、俺達はその2人を見比べる。
「どっちだ?」
一応、リーシャとマリアに聞いてみた。
「「左」」
リーシャとマリアが口を揃えて左の受付嬢のもとに行くように言う。
左の受付嬢は年配の女性だ。
一方で右の受付嬢は若くてかわいらしかった。
「まあ、俺らの師であるジャック理論でいくと、そうなるわな」
渋々、納得し、2人を連れて、左のおばさんの方に向かった。
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