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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第9章》 いざ死神界へ!?
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因縁の面談希望者

英星えいせいいきに食べられる危機!!

こんな時に紫電しでんは何をしているんだ!?

いきお姉様……! ああ、お姉様が欲しいですぅ…………!」


 僕は粋お姉様の放つ女性の魅力にもうメロメロだ。


「うふふ。英星えいせい、あなたのスープにはね。媚薬びやくを入れたのよ」

「そうなんですね~! ああう……粋お姉様、キスしましょ~!」

「しょうがないわね英星。じゃあ――」


 ガラッとあばら屋の引戸が開く。

 そこには白いブラウスに金髪のロングヘアーの美少女が立っていた。


川上かわかみ英星!? 何をしている!」

「はぁう、あなたはクラリス様~! 気の強い女性って好き! キスしましょ!」


 クラリスはキスを狙う僕の顔をぐいぐいっと押しのけた。


「やめろ! 私にそんな趣味はない!」

「そんな固いこと言わないでぇ~っ!」


クラリスは持っていた両手斧のアックスヘッドで僕の左側頭部をぶん殴る。


った――――っ!! 何しやがるこのゴリラ女!」


 すると僕の舌からピシッと音がした。


「あんぎゃああぁぁぁす! この不平等条約なんとかしてー!!」


 ……て、あれ?

 確か僕は粋に何かを飲まされて……。

 う~ん、思い出せない。まあいっか。

 そんな僕を見て、クラリスが溜息ためいきをつく。


「そんなことより。あのアクセル・キルンベルガー様がお呼びだぞ」

「ふぇ? キ、キルンベルガーが? どういう風の吹き回し? 僕はもう眠たいんだけどなぁ」

「ダメだ。キルンベルガー様の命令は絶対だ」


 胸騒ぎしかしないんだが。

 僕らを殺しかけたあのキルンベルガーと会うの……? 勘弁してよ~。

 すると、赤い髪の少年が空からあばら屋の外に広がる荒地に降りてきた。あれは……紫電しでん


「きゃー紫電! どうしたのこんな夜更よふけに? わざわざ僕にいに来てくれたの?」


 紫電はふぅっと息を吐き出した。


「う、うん。お昼はねちゃってごめんね英星。でもボクからもお願い。キルンベルガーに会って」


 ええー? 紫電からもお願いされるのー? なんだこの流れは。


「それから粋。なんなのその注射は」


 紫電は僕の後ろにせまっていた粋に視線で圧をかける。


「えっ!? ちょっとまた媚薬を」

「『また』ってなんだよ?」


 粋は「あはは」と苦笑いすると、注射を仕舞った。

 あれをさっき僕の身体に入れやがったのか? 物騒なやっちゃ。


「ねえ英星。近くに海があるからさ。ちょっと歩かない?」

「ホント? 歩く歩く!!」



―――



「なんで王児おうじも一緒なのー? 僕てっきり紫電と2人きりかと」

「え? ダメだった?」


 紫電はすやすやと寝息をたてる王児を腕に抱き、僕と砂浜を歩く。虹色に光る貝殻がそこらじゅうに落ちている綺麗な砂浜だ。


「うーん、ちょっとあのバニーちゃん(粋)、挙動が怪しくてさ。王児を一人にするのは気が引けたというか」


 むむむ。まあ確かに。かわいいバニー王児を1人残したら何しでかすか解らんからなあ。

 あのメスウサギめ、急にヤンデレ化しやがって。

 王児も眠ってさえいればかわいいんだよな。幸せそうに紫電の法衣によだれを垂らしている。


「ねえ。英星はキルンベルガーとは会わないの?」

「またそれくんだ」


 僕は視線を落とす。


「風の噂によるとキルンベルガー話したそうにしてるらしいよ?」

「はああ? あいつがぁ?」


 目を見開いて驚いた僕を、紫電が右手に出した炎が明るく照らした。


「英星がなんでスペルが苦手か解るかも」

「ちょっと! 僕はスペルが苦手じゃないの! スペルを覚えるのが苦手なの!」

「だからそのことについて解るかも」

「もういいよぉ! あいつの話は!」


 僕はぶすっとして頬を膨らます。

 ええい、なんとか話題を変えるぞ!


「……ねえ。鉄友山てつゆうざんでは……ありがと。助かった」

「大した事してないよ? 最後も薬を……その、飲ませたのは雷星らいせいだし」

「えー? そうなのー?」


 炎に照らされた紫電の顔が赤い。

 すっごく照れてるんだ。……カワイイ!


「でも……僕はずっと見てたよ!」

「へっ……?」


 僕は弾ける表情で言った。



―――



 あばら屋の木の隙間から日光が射す。

 朝が来た。


 今日は非番の日なのだ。

 ということで僕が狙うのは紫電とのデート!

 定石だよね!


 今日紫電とはコノボス・ツエーの奴がロックをかけた死神界の入り口――でっかい木造の門の前で待ち合わせをしている。

 あそこは死神界でも人気の観光スポットらしい。

 しかしその前に越えねばならない大きな壁が。


「英星♪ デートしましょ?」


 そう、粋の壁だ。


「粋お姉さんはすっかり堕落だらくしちゃいましたね」

「だってこんなかわいいバニー陰陽師いないじゃない!」


 そうだった……僕の格好はバニー陰陽師なんだった。


「い、粋さあ、もう少しちゃんとした方法でデートに誘ったほうがいいと思うよ?」


 味噌汁に媚薬を混ぜようとする粋に釘を刺す。


「うぅーむ。じゃあ今日のデートについてくわ! どうせ紫電とデートしようとしてるんでしょ!?」

「ぐっ……バレてたか! ならば逃げる!」


 僕はあばら屋の引戸を蹴破って飛び出した。


「あっ! 英星えいせ――――いっ!!」



―――



 くうううう。僕としたことが。

 自分の足の遅さを自覚していなかった。


「みんなで回るんだね。まだ2日目とはいえ、できる時に骨休めしとかないと。さあ、今日は遊ぶぞー!」


 紫電もその気だし……。

 何故か王児まで来ている。

 一人落ち込みながら、みんなでロックのかかったランドマークを観光することに。


 まあ……たまにはいいか。みんなで回るのも。


「英星。なんか久しぶりだな」


 僕の背後から聞き慣れた声がかかった。



英星にかけられた聞き慣れた声の正体は!?


次回もお楽しみに!

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