驚異の口撃力
王児がマンションから出て来た!
咄嗟に樹の後ろに隠れた英星たちだが!?
王児を団地で見つけた僕ら3人。
うーん、どうすれば仲間にできるかなあ。
「……お兄さんたち……?」
ぎくり。
――バレたかな? 明らかにこっちに向かって来てる気がするけど。
――いや、諦めるのは早い。こういうのは諦める奴から落ちていくんだ。
――そうだよね。雷星はいいこと言うなあ。
王児の足が止まる。
こっちをじっと見ているんだけど。
……ま、この完璧な潜伏がバレる訳がないか。
――まああたしの胸が大きすぎて見つかるってのはあり得るわね。
――えへへへへ。……あれ? 前にこういうシチュなかったっけ?
――あはは。紫電ったら記憶力が悪すぎでしょ! あったわけな…………! ふぁ……ふぁ…………!
――え? まさかクシャミ? 英星ちょっと……!
「ぶあっくしょこーい!!」
「…………やっぱり……お兄……さん……たち……!」
「ほらバレた」
「ここまでテンプレの流れだな」
「ずびっ…………。え? 天ぷら? どこどこ?」
――どこにも天ぷらなんてないじゃないかあ!
おや? 粋がスゴい殺気を向けてくる。…………どした?
「あんたあたしのお気に入りのキャミソールに唾やら痰やら色々なモノを噴霧したでしょ!」
粋の主張通り、キャミソールには僕の唾と痰がべっとりと付着していた。
鼻水も糸を引いてくっついている。
えーっと、わざとじゃないもん! だから僕は悪くないよね!
ん……? 王児の様子がおかしいぞ? やはり千鳥足だ。
「あ……あの…………!」
王児は円を描くように歩くと片膝をつき、
「た……す……け…………!」
それだけ言ってぱたりと倒れた。
―――
「《シャイニングブレス》!」
お兄ちゃんの声が六畳一間の和室に響く。
「…………う…………」
黄緑色の眩い光に包まれ、王児はうっすらと目を開けた。
「王児! 気が付いた!?」
「オレは…………?」
「覚えてないの? あんたあたしたちの前で倒れたのよ」
「ああ……そういえば……樹の後ろに丸見えで隠れてた間抜けなお兄さんたちですね…………」
「「「「………………」」」」
今の沈黙はたぶん「間抜け」発言に対する一同の怒りの沈黙だろう。
「それにしても頭の置き加減がサイコーです。これは…………?」
「ああ、僕が今膝枕してるから」
「女みたいなことしないで下さいお兄さん。気味悪いったらありゃしないです」
「………………」
あのー、この病人ぶっ飛ばしていいですかね。
「ま、まあまあ王児! 意識が戻ってよかったよ!」
「紫電お兄さんでしたか……」
「あ、ボクの顔と名前覚えてくれたんだ!」
「ええ……その間抜け面は記憶に残りやすいですよ」
「………………」
紫電、よし。よく堪えた。
「あはは、王児少しお口が悪いぞ♪」
「そちらは身体だけは120点満点の粋お姉さんですね。皆さん覚えやすいです」
「………………」
粋は笑顔を崩さぬまま口をパクパクと動かしている。
しかしその口は確かに「殴ったろか」という動きをしていた。
「そしてそちらが雷星さんですね」
「お、おう……」
さあ、お兄ちゃんにはどんな口撃が加えられるのか。
固唾を呑み込んで冷や冷やと見守る。
「ありがとうございます。お陰で助かりました」
……あれ? お兄ちゃんにはなんも無し?
あまつさえお礼まで言わなかったか?
「何それお兄ちゃんずるい――――っ!」
「ハッハッハッ! 人徳の差だな!」
「やはり非常食の機嫌は取っておかねばなりませんから」
「………………………………」
……今日イチヤバくなかったか?
このガキの口は凶器だな。
釘打ち付けて塞いだろか。
僕らを取り巻く空気の温度差が激しすぎる。
王児は1人幸せそうに膝枕を味わっているのだが(気味悪い発言はあったが)、それに対して僕らは今にも王児に殴りかからんといった雰囲気だ。
これはもはや異常気象だな。
「そういえばここはどこですか?」
「……え? 王児んち。『定村』って表札に書いてあったから。鍵開いてたよ」
「――――えええええええ!?」
でかい声を出して、王児はがばっと起き上がった。
「ま、まさか……見てないですよね!?」
王児はそわそわと落ち着きなく動くと、学習机の前に移動し両手を広げた。
何かを隠しているのだろうか……?
僕はすぐに何を隠しているのか見当がついた。
王児…………まさか……まさか………………!
王児は何を隠しているんだ!?
次回もお楽しみに!




