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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第3章》 碧い髪の少女

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ひまわり

神社から帰って来た英星たち。

粋の旅立ちの時が近づいていた――――。

 いきの屋敷に帰ると、粋のお父さんとお母さんが心配そうにして待っていた。


「粋! どこに行ってたの?」

「ごめんなさい」

「心配したぞ……」

「あの……あたし……英星えいせいくんたちの旅について行くことにしたから…………」

「……………………」

「……………………」

「今までありがとう。そしたらまたね」


 粋の素っ気ない態度にひるむことなく、両親は粋を同時に抱きしめていた。

 懸命に言葉をつむぐ。


「血のつながりがないことを、今までどれほど恨んだことか。力不足のパパとママでごめんね。いつでも帰っておいで」

「粋。気を付けてな。命だけは必ず守るんだぞ。これは絶対だ。絶対」

「や……やめてよ……そんな…………!」

 

 お母さんは粋から腕をほどくと、「少し待ってて」と言って2階に上がり、アンティーク調の小さな鍵付き木箱を持って来た。お母さんが鍵を開ける。


「これは――!」


 粋が大きく目を見開いた。


「あなたの……本当のお母さんの形見よ。ひまわりの髪飾り。必ずあなたをまもってくれる」

 

 髪飾りが粋の髪に付けられた。

 粋はぐすぐすと泣きだす。

 ――綺麗だ。女の僕から見ても。


「粋……いってらっしゃい!」


 お母さんが粋の両肩をばしりと叩いた。

 再び抱き合う親子を見て、僕は口を開く。


「粋……愛されてるんだね」

「ボクの父上も……あんな風だったら……よかったのに…………」


 顔をうつむける紫電しでんの胸に、僕は優しく拳を置いた。



 両親に手を振り、いよいよ粋は旅立つ――――。




「……はあ、最初会った時はまさかこんな一緒に旅立つなんて夢にも思わなかったわ」

「改めまして! ボク、紫電! 荒波あらなみ紫電っていうんだ! よろしく粋ちゃん!」

「あたしのことはもう知ってるかも知れないけど。あたしは…………広瀬ひろせ粋」

「……粋ちゃんも複雑な事情があるからね」

「粋でいいわよ! あたしも紫電って呼びたいし」

「本当に? じゃ、じゃあ……粋……! よろしく!」

 

 なんか紫電の奴鼻の下伸ばしてないか……?


「えーっと、僕は川上かわかみ英星。こっちの竜がお兄ちゃんの川上雷星らいせいね」

「よろしくう!」

「事情は聞いたけど、竜がお兄ちゃんってやっぱりスゴいわね……」

「じゃあ、とりあえずあのワイズマンとキルンベルガーを探してレッツゴー!」

「――あっ!」

 

 紫電が前かがみになった。何か拾ったようだ。


「一円玉が落ちてた! 交番に届けなくっちゃ!」

「あんたねえ。それぐらい貰っときなさいよ」

「いやいや、困ってる人がいるかも! 英星は無頓着すぎるの!」

「困ってる人なんていないってば! あんたが神経質すぎるだけよ。うーん、あった場所に置いときなさい。それに、先頭は僕が歩くんだよ!」


 僕はずいっと前に出た。


「ちぇっ……」

「紫電はなんか純粋無垢って感じね」

「えへへ、そう?」


 こいつ何が「えへへ」だ。

 そんな奴は粋の前でカッコ悪い姿を晒してやる!


「……そういえば紫電は~、昨日コンビニでナニか買ってたみたいだね~♪」

「そーそー! このマセガキ~!」

「え……! いや、何も……」


 急にしどろもどろになる紫電。

 あー楽しい! この調子で粋をドン引きさせてやる。


「へえ~? なんか気になる言いかただなあ」

「買ったもん見せてみろーッ!」

「ええっ? みんなの前では……ちょっと……」

「ほうほう~。みんなの前で出せないモノなのね?」

「えっと……えっと…………!」

「まあ、主に……夜に読むモノなのかなー?」

「…………ん! これ!」


 紫電が顔を下げて、1冊の本を僕に差し出してきた。

 まあなんて大胆な。

 ……って、これは……「穴だらけの一家」……?

 漫画本だ。僕が昨日ファミレスで面白そうって言っていた漫画本。


「あれ? 言われてみりゃ成人向けコーナーにフツーの漫画本も売られてたな! すまん紫電、俺ら早合点しちった☆」

「し、紫電、これ……?」

「ボク……余計なことしちゃった……?」


 眉尻を下げて紫電は困ったような顔を向けてくる。


「ご、ごめん……余計なことしちゃって……き、嫌わないで……お願い!」

 

 両手を合わせて懇願する紫電を、僕はたまらず抱きしめた。


「馬鹿! なんで言ってくれなかったの! 僕てっきり……てっきり……!」

「だ、だって……友達にプレゼントなんてあげるの初めてで、全然勝手が解らなかったんだもん……」

 

 不意を突かれて涙が溢れてきた。


「おや? 英星泣いてるのか? ぷぷーッ! お前も泣き虫だなあ!」

「うっうるさい馬鹿兄貴っ! 僕だって友達からプレゼントもらうの初めてなのっ! ぐすっ……」

「よ、喜んでくれた……?」

「あっ、当たり前でしょっ! あんまり泣かせないでよっ!」


 紫電を強く強く抱きしめる。


「痛いよ英星! 本がシワになっちゃう!」

「そんなことどうだっていいのっ!」

「……ッたく、ガキのくせに青春してんじゃねえよ……」

「あの~、そろそろいいかしら? あたし置いてけぼりなんだけど」

「え! あっ……!」


 ぶすっとした粋の一言で僕らは我に返った。


「男同士でなにイチャついてんのよ……意味解んない。まあ今はそういうのも許される時代みたいだし? あたしもとやかく言わないけど」

 

 それだけ言って、少女は笑った。

 ひまわりのように。


 これから、このひまわりとも仲良くやっていかなくちゃ。



やっぱり笑顔が一番!


次回もお楽しみに!

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