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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第3章》 碧い髪の少女

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死神の悪あがき

股間を潰されたワイズマン!

これでこの戦いは本当に終わり!?

 地面に沈み込んだワイズマンを、僕らは見下ろしていた。


英星えいせい、ワイズマンはどうする?」

「そうね、とりあえずひっ捕らえましょ」

 

 紫電しでんがリュックの中からロープを1本持ってきた。

 このロープで入念に縛り上げる。

 うん、これだけ固く縛れば大丈夫なはず!

 ワイズマンを連れ、寝室を出る。

 こいつの物騒な大鎌は、何かの拍子に反撃されないよう激戦を繰り広げた寝室に置いておいた。


「さあ、こっちに歩くんだ、ワイズマン!」


 紫電がすっかり観念したワイズマンを連行する。


「いいから私の大鎌を返して下さい。話はそれからです」

「だーめ! 絶対返さない!」

「ああ、私の友人はあの大鎌しかいないというのに」

「やっぱりボッチなんじゃんこいつ。…………!」

「あはは、いきちゃんって結構言うなあ。……ん? どうしたの……?」


この本の世界に入って来た時にいた、あおい髪をした20代後半の男女は…………白骨死体と化していた。


「パパ! ママ! いやああああああああ!!」


 粋が駆け寄る。


「や、やっぱり粋のお父さんとお母さんだったの……!?」

「い、粋ちゃん、しっかり!」

「あぁ……パパ……マ……マ…………!」

 

 粋は震える唇でそれだけ言うと、女性の方の死体に覆いかぶさるように倒れた。


「我々がいるこのページは、粋の記憶の世界も兼ねています。彼女が正気に戻り……父と母も本来の殺された姿に戻ったのですよ」


 ワイズマンが空気を一切読まずにいつもの調子で言い放った。


「やっぱり殺されたの……? 粋のお父さんとお母さん……!」

「ワイズマン! お前……!」

「本当のことを言ったまでです。それとも何ですか? 人間に思いやりを持てと? 到底無理な話です」

 

 とにかく粋をなんとかしないと……!

 その時、テーブルの上の新聞記事が目に入った。見出しには「都内で謎の光が多数確認」と書かれ、日付は4年前になっていた。

 僕は気を失った粋を背負おうとするが……重い。背負ったまま潰れるように転んでしまった。

 紫電が思わず僕に駆け寄る。

 ――迂闊だった。

 ワイズマンは不気味に口角を上げると、紫電に背後から体当たり。紫電は吹き飛び、流し台に頭から激突した。

 更に笑みを浮かべたまま、紫電の首に蛇が獲物を絞め殺すように足を巻きつけ、絞る。


「ん――――――ッ! んん――――――ッ!」


 僕はそんなワイズマンの腰に手を密着させ、初級炎スペルを発動。下半身を吹き飛ばした。


「紫電! 大丈夫!?」

「げほごほっ! うっ……!」

「……惜しいですねえ。もう少しで貴公らを殺せたというのに」


 ワイズマンが悔しそうに浮いている。

 そして口笛を吹くと、その手にあの大鎌が瞬間移動したように戻った。


「私の友人はこの大鎌ただ1人。言ったでしょう?」


 くっ、これ以上は戦う自信がない。これまで、あまりにも消耗しすぎた。


「……ふふふ、これ以上は戦えないのでしょう? 惜しいですねえ、私もなのです。今日は少し疲れました。ここは……」


 ――去ってくれ!


「貴公らを本の中に永遠に閉じ込めます!」


 ……え?


「早い話が私だけここから脱出するということです」


 えええ? 本の中から出られないなんて!

 じゃあこのままずっとここで紫電と粋と3人暮らし……?

 粋は邪魔だけど紫電と暮らせるなら、それはそれでいいかなあ。


「さようなら……ごきげんよう」


 闇の魔法陣がワイズマンの周りに展開され……。

 ずる賢い大鎌使いは姿を消した。


「げほっ……どうしよう英星……閉じ込められちゃったよ……!」

「うーん、もうここで暮らす?」

「何言ってんだよ! 単純に飢え死にするでしょ!」


 僕らは粋をゆっくりと寝かせると、脱出のアイディアを出し始めた。


「なんか玄関も開かないんだけど」

「うむむ、万策尽きたねえ」

「諦めるの早すぎでしょ……あっ、そういえばあのヌンが落としていったボワボワ文字は?」

「……ダルボワ文字のこと?」


 僕はあまり期待せずにポケットからヌンの落としたメモを出し、ダルボワ文字を宙に刻む。


「《ウィンドスピア》! って、えええええ!?」


 なんか強そうな風の槍が古民家の玄関引戸を粉々に破壊し、僕らは脱出に成功した。

 ……古民家からは。


「ボクが以前使った時はこんな効果じゃなかったよ?」

「誤字が多くて効果がガタ落ちしたんでしょ!」


 話しながら、粋の古民家を出た。

 紫電は粋を身体の前で抱いている。リュックも背負ってるのに、こやつ11歳の体力じゃないな。

 すると、庭の真ん中に突如として魔法陣が出現した。

 光に包まれてよく見えないが、中央付近に黒い影が見える。

 新手の死神族か!

 僕らは身構える。


「《ウィンドスピア》!」

「ボクは炎の基本スペルで!」

「ぎょええええええッ!」

 

 あれ? この声は……?

 なんと魔法陣から出てきたのはお兄ちゃんだった。


「お兄ちゃん、そんなところで何してんの?」

「アホ――――ッ! せっかく敵の魔力結界を破って来たのに! この出迎えはなんだ!」

「ご、ごめんごめん、槍に刺されて炎に焼かれて焼き鳥になっちゃったね」

「誰がうまいこと言えと。とりあえず……元の世界に帰れるぞ」

「さっすが! お兄ちゃん大好き! って……どうしたの紫電?」

「いや、最後にこの古民家の写真を撮っておこうと思って……さ」

 

 それだけ言うと紫電は粋を優しく芝の上に寝かせ、写真を撮っていた。

 こういうさりげない優しさが紫電の魅力の1つなんだよなあ。


「じゃあ、バイバイ……粋ちゃんの記憶の世界」


 魔法陣に足を踏み入れる。

 視界が白い光に包まれ……僕らは粋の記憶の世界を後にした。



ようやく現実世界へ!


次回もお楽しみに!

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