魔女として、私が処刑されるまで。~何も分かってなかったわたし~
夢のない(希望もない、とは違います)、異世界転生です。
(こちらは一応異世界としていますが
現実問題として中世における「魔女裁判」で、無実の女性たちがすさまじい数、虐殺されてきたことは歴史上の事実です。拷問も詳細は載せませんが本当にひどいものがありました。漫画などもたくさんありますので興味があるかたはそちらを。
ほかにも色々ありますが、今の価値観だとあり得ないくらいひどいことが普通に起きていたのが「中世」くらいの世界。
そしてそれを実施していたのは「悪い王様やお后さま、我欲にまみれた(庶民を人とも見なさないなども含む)貴族」とか、そんな単純な善悪構造でもないです。そしてそういうひどいことが起きるには、背景にそれなりの事情があります。
私たちは、先人が培ってきた「知識(≒理科や歴史などの教科書で教えるような、概ね正しい事実(歴史については異論もあり))」という地盤の上で、守られて生きています。
昔の人のたくさんの血と苦しみの果てに得られた、多くの利益を享受した世界のなかで、私たちの現代社会における「常識」を「あたりまえ」として、ふつうに受けとめて生きている、(その常識のなかで、たくさん守られているのだという事実を)、考えたこともない……そもそも知らないから気付けないだけだと思います(堀田が知っているのは単純に、学んでいるからです。法学部でしたし、自分でも気になったことは本を読んだりしていたので)。
それこそ、明治大正……下手すると昭和初期の日本くらいでも、今の感覚で転生したら場合によっては普通に殺されることはあり得ると堀田は思います。ましてそれがそれより以前なら――
悪いことは悪い人がするものなんて、幻想です(そういう場合もありますが、半分以上はその辺にいるような普通の人が、悪くもない人を傷つけたり迫害したり、場合によっては殺したり。するもんです)。歴史上の事実がそれを証明しています。
小説のなかでちょっとずつ描写していきます。自分の中にある夢を壊したい人は是非どうぞ。)
上記の記載で伝わると思うのですが、この小説は、けっこう皮肉です(が、ほんとに異世界に転生したら、たぶん、こうなる確率がけっこう高いんじゃないかな――という部分を意識した小説でもあります。)
でもあえて、そういう、たぶん人の気分を害することも多いであろう、トゲのある世界を描くのは、理由があります。
生まれ変われたら(転生ものと銘打たなくても異世界ものの多くは、読み手は自分を主人公に投影して読むのではないかと思うのです)、苦労はしても――前向きに頑張ることができたら、きっと、うまくいく。そういう世界にダイブしてみたくなる気持ちも分かるし、そういう小説が、日常にほっと安らげるひとときを提供してくれることはもちろんあると思います。
でも、なんでしょうね。
転生もの(異世界もの)が好きな人って、もちろんリアルが充実している人もいるんでしょうけど、現実につらい気持ちを抱えながら生きる人も、なかにはいるんじゃないかなと思ったんですよ。
だからこそ、夢が必要なのもわかる。
サクッと読める、楽しい話(少なくとも読んでいて快感の大きいもの)を読みたいですよね。
でも……いっぽうで、現実に絶望した人が、もしかしたら、なんて儚い夢を描いて、そんなわずかな可能性にすがるような気持ちで、
命をたつことがあるとしたらとちょっとだけ思ってしまったんですよ。
堀田がぶち壊したいのは、そういう希望です。
だから現実と同等かそれ以上に厳しいだろう世界観を叩きつけたい。ほんとうに読んでほしい、そういう思い詰めた人に、この話が届くか、読んでもらえるかどうかは分かりませんけどね。
多くのひとは、「異世界(転生)もの」これは夢物語だって現実としっかりと線を引いて割りきるだろうし、夢を見るのは素敵なことだと思うけれども、
ほんとうに苦しんで思い詰めた人というのは、ときに、心が健康なときには考えもしない思考回路で動いてしまったり、夢にすがってしまうこともある気がしたから……
夢をぶち壊す異世界転生があってもいいんじゃないかな、と思ったのです。今の現実より素敵な人生が待っている(かも)と一縷の希望を抱いて命を絶つことはしてほしくないからです。
宗教が廃れた弊害で、自殺をしたらひどい地獄が待っている(あるいは、最後の審判ののちに復活できないなど。)という感覚が多くの人から消えたのもあるかもなと思っています。
ここで終われば楽になれるかもしれない。
もしかしたら、大好きな小説の異世界のなかに行けるかもしれない。好きなゲームのなかに。
そんな優しい世界じゃなかったらどうすんの?
この小説のなかで、堀田が描きたいのはそういうものです。
ただ、だからといって、単なる鬱展開にするつもりはありません。
苛酷な世界で、それでも生きていく。
つらくて苦しい。それでも、あきらめないで。
道を探そう。堀田のそんな願いをこめた……この話は、そんな方針で描いていくつもりです。
もし、理解できるかたがいたら、読んでくださるとありがたいです。
転生したのは中世という雰囲気の世界だった。お城があって、領主がいて、お姫様がいて……甲冑に身を包んだ騎士や兵士がいる。貴族などの特権階級のもとに、平民がいて……奴隷という存在は人間としてカウントされていなかったかもしれない。
ひとつ忘れていた。私が生きていた21世紀の日本には馴染みが薄かった、けれどもこの世界には皇帝といった存在と並んで大きな影響力をもつ存在、それは聖職者の存在だ。教会があり、その経典は教科書というか―――
神の言葉、神の意思として―――絶対に等しい。
たとえば、それが、21世紀の日本では、ありえない迷信で……人を傷つけ社会全体に有害な、間違った情報であるとしても、である。
そうして、もうひとつ。
この社会では、前世の日本の比ではなく、女の立場が弱かった。はじめはそんなに気にならなかった。セクハラもなかったし、ちょっと昭和?なのかな~くらいのイメージしかなかった。貴族は一夫多妻のようだったけど、平民だった私の周りは夫一人に妻一人が普通のことで、わたしの両親となった人たちは、母親は父親に普通に反論していたし、「かかあ天下」「嫁の尻に敷かれて」と言われるような、なごやかな家庭環境だったから。
だから、わたしは気付かなかった。
異世界チート、と呼ばれるほどには、何か飛び抜けたギフトと呼べるような能力など授かることはなかったし、飛び抜けた美人に生まれたわけでもない。特権階級のお姫様や、あるいは貴族のお嬢様としても生まれなかった。それでも奴隷などの階級で蔑まれることもなく、平民として平凡に生まれた、
前世の記憶があるだけの転生者。
前世では、それほど充実した人生を送っていたわけでもない、どちらかと言えば不遇な人生だった気がする――わたしは、今生こそは、前向きに生きよう、そう頑張っていたのだ。
せっかく前世の知識があるのだから、それを活かして、みんなの生活がより良くなるように。積極的に人とかかわって、みんなの役に立てるような――必要とされる人間になって、平凡だけど……仲間に囲まれて、生き生きと笑って。充実した人生を生きたいと思っていた。
その前向きな努力が、人のためだと思っていたことが、空回りしていることに気付かずに。
ここは日本じゃない。
ちょっと昔風の世界観というだけで、
時代が遅れているけれど、信仰心の厚い人間たちは素朴で、正直で、打算的ではなくて。
はじめは戸惑ったけれど、かえって、だからこそ、前世の複雑な人間関係よりはあっさりしていて、付き合いやすいのだ――と、思っていた。
実際、それはほとんど間違っていなかったと思う。ただひとつ、「だからこそ、あっさりしていて、付き合いやすい」という部分を除いては。
ひどいことや悪いことは、悪い人がするもので、自分が正しく生きていたら。周りの役に立てることを大事にして、明るく振る舞えば、前向きに努力していれば――きっと大丈夫。そう思い込んでいた。
ここは日本じゃなかったのに。
なんというか、私はそのあたりのことが、分かったつもりでいて分かっていなかったのだと思う。
それでも、途中までは上手くいっていたのだ。
前世の記憶、知識を活かして、周りの役に立つことを積極的にしていった……少女の頃は、ちょっと変わり者だけど、明るく活発で、賢い子どもとして周囲から可愛がられた。
父親は嬉しそうに笑ってわたしの頭を撫でてくれていた。母親は怪訝な顔をして、女の子がそんなに前に出るものではない、と私をたしなめていたけれど、古い価値観の世界で生きてきた女性だからだろうな、と……深く気にとめることもなかった。
そんな母が、流行り病で突然いなくなって――状況は変わり始めた。優しかった父は、酒に溺れ人が変わったように怒鳴り散らすように変わってしまい――耐えきれなくなった私は、家を出た。
築いてきた人間関係を足掛かりにして、自立した女として生きてゆこうとした。
果てに待っていたのは、
終わりの見えない、理不尽な拷問。
耐えかねて「魔女だ」と認めた私は、くくりつけられ……石を投げられ罵声を浴びせかけられながら、火炙りとなった。
なぜ、こんなことになったのか。
自分が何をしたのか。分かりもしないままに。
そうして私は転生先で、前世の日本より遥かに非業の死、と呼べるような終わりを迎えた。
――――
再び、同じ世界に――生を受けるまで。
ご意見ご感想など、お待ちしております。
(ご批判、誤字報告などもありがたいです。
読んでいて鬱な気分になる!なども参考にしたいので、評価なんかできるかぁ!胸くそ悪いわ!とか、傷ついたとか ここはおかしいだろ、などでもありがたいです。)
こちらはできるだけ(できない日はごめんなさい)毎日更新していきたいと思っております。
読んでくださってありがとうございます!
似たような挿絵がダブっていますが、
色を鮮やかにしたほうがいいのか迷った末のことです。髪の毛が青いのは 派手にしようと思っただけであんまり(全然)意味はありません。
ちょっと髪の毛の膨らみのバランスがおかしいのが気になるのでそのうち調整します。
本の握りかたが独特なのは、「幼児(かなり乳幼児に近い年齢)であること(ただし前世の記憶がある影響で知能の発達は早い)」を前提に、
小さな子どもにたまに見られる独特の握りかた(まだ神経系が発達途上で、手先が不器用なので、指を巻き込んだり左右で持つ高さが違っていたり、親指を握りこむような形になるなど独特の握りかたになりやすい)ことを前提に描いています
下半分がないのは ごめんなさい
未完成で 描くつもりないところを適当に処理したせいです(そのうちカットするか加筆します)