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3>>■カハル視点2





──明日のダンジョンの話を詰めよう。


 そう言ってセッドリーを自分の部屋に呼んだのは、本当にただダンジョンの話をしたかったからだ。



 寮生活は思いの外快適で、自分で部屋の片付けをしたり洗濯物を指定の場所に出したりそれを回収して棚に自分で仕舞う事は、最初こそ手間取ったけれど慣れてしまえば全然苦にはならなかった。

 細かい事に慣れてしまえば、寮生活は親の目を気にせず自由に出来て楽だった。

 騒がなければ夜ふかしを怒られる事も無い。本棚が剣技や武術の物ばかりになっても誰も何も言わない。

 必要な事をちゃんとやっていれば、誰にも何も言われなかった。


 だから消灯時間後にセッドリーを部屋に呼んでも怒られる事は無い。


「こういうのワクワクするな」


 自然と小声になる声がなんだかおかしくて俺は笑った。


 消灯後の自室に呼んだセッドリーが自分のベッドに一緒に並んで寝ている事が不思議でそれすらも楽しかった。

 最初は困っていたセッドリーも、寝落ちしても良いようにと進めたら戸惑いながらもベッドの空いた場所に横になった。

 貴族の令息として産まれて、こんな風に友人と1つのベッドに並んで寝るなんて事は一生しないだろう事を俺たちはしていて、それが気持ちを高揚させた。


 明かりも点けない部屋の中で、開けたカーテンから差し込む月明かりで互いの顔を確認する。

 ダンジョン内でどう動くか、あの魔物をどう対処するか、互いの連携をどうするか……余り声が大きくならないように2人で静かに話していると不思議な感じがした。

 心が穏やかで、耳に馴染むセッドリーの声をただ聞いていたいと思った。


 ふと途切れたセッドリーの声に顔を向けると、仰向けに寝ていたセッドリーか目を閉じ寝息を立てていた。


「セド?」


 声をかけてその肩を小さく揺する。

 でもセッドリーは起きなかった。


 月明かりに照らされたセッドリーの寝顔を見つめてしまう。

 セッドリーの特徴である赤い髪が柔らかくその額に落ちる。閉じられた瞼の上の眉がいつもより眉尻が下がっているようだった。

 まだ幼さの残るその顔から目が離せない……。

 その頬に手を触れさせるとセッドリーはむずがるように少しだけ身動いだ。でも起きない。


「………セド……」


 名前を呼んだ声はかすれていた。

 不思議な気持ちだった。


 友を……兄弟を……こんな気持ちで見つめる者はいないだろう……


 そう自覚していたのに止まらなかった。


 気付いた時には、俺はセッドリーの唇に自分の唇を重ねていた。



 婚約者であるティナリアにさえ感じたことのない気持ちを、俺は素直に受け入れていた……





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