1>>■カハル視点1
自分の心なんて自分でも操れない。
駄目だと思った事を心から駄目だと思えたのなら良かったのに……。
子供の頃か侯爵家を継ぐのだと言われてきた。それに疑問を持った事も一度もない。6歳の頃に顔を会わせた婚約者は可愛らしくて……妹の様に思った。
大切な婚約者だと、自分と力を合わせてシェイロズ侯爵家を守っていってくれる存在だと理解していた。
“大切な女性”として理解していた。心の底から可愛いと愛らしいと思っていたけれど…………何故かどこかで一歩引いてしまっている心があった。
それが何か分からないままに時が過ぎ、義妹の婚約者だと紹介された1つ年下のセッドリー・ミロセリー伯爵令息と、初めての同性の友達になった。
次期侯爵家当主として周りは皆どこか薄い膜が張ったような付き合い方しかしてくれなかった。そんな中で親しく義兄として慕ってくれるセッドリーと一緒にいるのは楽しかった。
セッドリーの前では、ティナリアの前でも出せない自分を出せる事にも気付いた。
気楽、に、初めてなれたのがセッドリーといる時だった。
当主になる為の勉強も楽しかったけれど、俺はセッドリーと剣を打ち合っている時が1番楽しかった。
そして、打ち合っている時のセッドリーの顔を見て、あぁセッドリーも俺と同じ気持ちなんだな……と思えた。
ティナリアとアリシュアを挟んでのお茶会も当然楽しかったのに、俺の気持ちは気軽になれるセッドリーとの時間を1番の思い出に選んでいた。
みんなと別れた後の一人の時間……、俺は知らずにセッドリーとの時間を思い返した。
もっと遊びたい。
もっと一緒に騒ぎたい。
もっとセッドリーと話したい。
友達への依存を拗らせただけの様な感情が、それでも俺の中では意味を持ったんだ。




