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アノマリー -from SCP foundation-  作者: 梶原めぐる
閑話⑤
99/104

財団日本支部お見合い計画

 うららかな春のある日――関東のとある地方気象台〈特別観測所〉にて。



 

 「マモル。お見合いとは何だね?」



 雨宮衛は、レナードの言葉を頭の中で反芻した。彼は日本文化の勉強中で、こうやって突拍子な質問してくることが少なくない。今回もその類いのようだ。



「お見合い、というのは……。一般的には、結婚を望む男女が交際を開始する前に顔合わせをすることだ。……アメリカにはそういう文化は無さそうだな」

 

「まぁ、そうだな……」



 レナードが興味深そうに見つめるPC画面を覗くと、「財団日本支部お見合い計画」の文字。日本支部のHPに掲載されているものだ。それで、合点がいった。日本支部の周年記念イベントが行われているのだ。



「あぁ、噂で聞いたな。財団フロント参加のSCプロパティーズが保有するアリーナで、ライブイベントがあるらしい。参加して、そこで恋愛関係に拘らず親交を深めろってことだろう。……へぇ、凄い!後醍醐 勾まで出るのか」


「ゴダイゴ コウ?誰だい、それは」


「アイドルだよ。今若い子に人気なんだ。娘がファンでね。……俺との会話なんかそっちのけで、彼女が出演するTV番組に釘付けになっているよ」



 今をときめく華々しい彼女も、実は財団職員だ。そのたぐいまれな才能を生かしつつ、TV局などで発生した事案などを主に対処しているらしい。彼女ほどの一流アーティストが出演するとなると、これはかなり気合いの入ったイベントのようだ。



「そうなのか。……ところで、日本支部はこういったイベントをよく開催しているのか?」



 なんと答えるか、逡巡する。レナードは日本支部の資金繰りが正式なものか調査する為の、本部からやってきた監査員だ。あれこれと難癖をつけて日本支部の活動を無駄遣いだと判断しかねない。……そんな彼が何故この気象台に居着いているのか分からないが。

 


「……まぁ、そうだね。色々企画してやっているみたいだ。こまめにHPをチェックすると興味深い企画が開催されていたりするね」



 かなり言葉を選んで答えたが、日々業務に追われる財団職員にとってこういったイベントは大事なものなのである。

 仕事とプライベートの境界が曖昧になりがちなハードワーカーが集まりやすいせいか、いつの間にか社会から疎外されているような気分になって、心を病む者がいる。そんな彼らに必要なのは”つながり”だ。イベントは、業務へのモチベーションを高めて、結果的に業務の質に還元されるのだと雨宮は理解しているつもりだった。従って、レナードにイベントに対して悪いイメージを持たれるのは好ましくなかった。

 


「君は行かないのか?」


「私には家庭があるからね。休日は家族サービスさ。そんな暇ないよ」


「ふむ……」


「……」



 彼の表情を伺うが、特に悪い印象を持っているわけでは無いようだ。単純な好奇心なのだろうか。



「…………レナード、君、行きたいのか?」


「……まぁ、適切に運営されているか確認すべきとは思うね」



 予想は的中したらしい。厳つい外見の米国男がお見合いイベントに行ってみたいだなんて、途端に可愛く思えてきた。



「行ってみたら良いじゃないか」


「パートナーがいない」


「お一人様でも参加可能だ。現地で良い出会いがあるかもしれないぞ」


「出会いが欲しくて行くわけではない。視察だ」



 視察。何と都合の良い言葉だろう。雨宮はレナードがライブイベントを満喫している様子を想像して内心愉快で仕方が無かった。



「じゃあ、マモル、君が一緒に来てくれ」



 ――予想外の一言に、思わず眼鏡がずり落ちた。

 


「……私が?」


「そうだ。」


「断る。仕事が忙しい。それに、お見合いイベントだろ?君と行ったらあらぬ疑いを掛けられる。そもそも既婚者だ。」


「純粋にライブを楽しむだけだよ。恋人に拘らず、と言ったのは君だろう。それに……後醍醐 勾のライブを見たら、君の娘さんとの良い会話カードになるぞ。」


「う…………」

 


 痛いところを突かれた、と雨宮は苦々しい表情を浮かべた。確かに。”娘の好きなアイドルに理解を示す父親”はかなり好感度が高い。

 彼はレナードがはっきりと”ライブを楽しむ”と言った事をそっちのけで、娘との会話シミュレーションを繰り広げた。



「…………駄目か?」


「……いいだろう、行こう」

 


 そして、2人は握手を交わした。お互いの利益のために。



「で、開催日時はいつなんだ?」


「6月14日だ」

 

「……有休を取るよ」



 

 ――後日、ライブ会場にてペンライトを一心不乱に振る2人が目撃されるのは、また別のお話。


後書き

この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。


Author: SCP-JPイベント委員会

Title: 財団日本支部お見合い計画2026

Source: http://scp-jp.wikidot.com/matchmaking2026


Author: kyougoku08

Title: エージェント・後醍醐姉弟の人事ファイル

Source: http://scp-jp.wikidot.com/author:kyougoku08

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― 新着の感想 ―
オタ活にハマった外国人と娘が見てるから見たらハマってしまった父親の図 職員間で結婚してガキこさえても記憶処理とかカバーストーリーが楽だから財団も推奨してるんだろうね、そのガキも将来職員になるかもしれん…
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