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頭おかドラゴン(あらすじも読め)  作者: アルティ・メット
6/6

待っていたぞ勇者よ!

なんか長くなっちった(てへっ

 マーリンの館こと熊田ん家には、チルの私室が設けられている。

 そこはチルの成長に合わせて内部の空間が広がっていく、不思議な部屋だ。

 生前の熊田はチルを溺愛していたため、なるべくチルにストレスを与えないような環境作りに苦心していた。

 そのためチルの部屋は、常にあの大きな生き物が自由に動き回れるスペースを確保し続けていた。

 そして現在、軽トラよりも大きくなってしまったチルに合わせるために部屋は、学校の体育館並みに大きくなっていたのだった。

 

「ククク、ようやく来たか」


 暗い暗い部屋の奥で、クッションの山に身を預けながらチルは鏡を覗いていた。

 もちろん、ただの鏡ではない。死に際に熊田が製作した館の警備用魔道具の一つ、『|深淵より覗くもの』だ。

 役割的にはただの監視カメラだが、館内部であれば死角がないという何気に優れモノではあるのである。しかし、あそこまで御大層な名前を付けられほどの物なのかと言えば、ちょっと返事に迷う。

 そんな便利鏡に映っていたのは、ちょうど館に侵入を始めた良晴ら冒険者たちの姿であった。


「さぁ、身の程というものを分からせてやろうではないか人間」


 ちなみに、さっきからちょっと気になっていたこの魔王っぽい口調は、漫画の影響である。

 良晴たちが全然来ないものだから、しょうがなく暇つぶしで読み始めたのだけど、思いのほか熱中してしまったらしい。

 中でも、特にお気に召した敵役のキャラにすっかり感化されていた。

 すぐに影響を受けちゃうところとか、本当に熊田パパによく似ている。


 「人類抹殺計画、最初の犠牲者は貴様らだ!」

 

 とんでもなく物騒なことを言い放つや、チルの首筋から腹部にかけて怪しげな光を放つ魔法陣が出現した。

 直後、館全体が音を立てて揺れ始める。チルの意思に反応して、館内部の構造が組み変わっているのだ。

 と言っても、チル本人には何かした自覚はないのだけれど。

 

 激しい揺れが収まって数分後、大きな両開きの扉がゆっくりと開かれて、チルの部屋にうっすらと光が差し込んできた。

 そして規則的な金属音を鳴らしながら中に入ってきたのは忘れもしない、全身を黒い鎧で覆った良晴であった。


「随分暗いな……」

「もしかして、ボス部屋ってやつですかね?」


 その後に続いて入ってきた竹中が、室内にペンライトを投げ入れて光源を確保する。そうして確認できたのは、だだっ広いダンスホールのような空間だった。

 竹中が特殊能力アビリティで確認した感じ、奥から若干嫌な気配を感じるが生死に直結するような危険は無さそうだと判断した。


「とりあえず大丈夫そうなんで入ってきてください。あ、念のため菊ちゃんは外で待機でお願いします」

「分かった」

 

 菊は、万が一の場合の保険だ。室内の三人にもしもの時が起きたら、この中で一番移動速度が速くて、尚且つ危険地帯ダンジョン『外なる森』を確実に抜けられる菊が、本部に救助要請なりをする連絡役を担う算段である。

 

 ――のだが、菊が部屋の外で一人になった瞬間を狙うような形でトラップが作動した。

 唐突に発生した凄まじい威力の突風が菊の身体を吹き飛ばし、あっさりと部屋の中まで押し出されてしまう。

 そしてその直後に勢いよく扉が閉じた。


「姉貴、無事か?」

「当然」

「すいません……俺のミスです。あークソッ、なんで気づかなかった!」

「反省は後だ。竹中、周囲に異常は?」


 チャラい雰囲気の竹中だが、根は真面目な青年である。責任感は人一倍強い。


「奥から何か来ます――」

「わーはっはっはっー!」


 暗闇の中で金色に輝く鋭い眼光。徐々に迫ってくる地鳴りのような足音。

 そして、相手を威圧するカッコいいセリフ。


「よく来たな、愚か者どもよ!その無様にうろたえる姿、実に愉快である」


 凄い、まるで悪の親玉の登場シーンみたいではないか。この生意気な顔をしてそうなロリボイスの主は、いったい誰なんだ!?


「我こそは――」


 その瞬間、部屋中のカーテンが一斉に開き、差し込んでくる日の光によって遂に闇のベールがはがされる。


「――チル・バーコン・ハイ、ハイ~……ちょっとタンマ!」


 何ともカッコいい演出ではないか。……っと、おや?どうしたのだろうか。

 まだ名乗りの途中だというのに奥に引っ込んでしまったチル。何かを探しているようだが、大丈夫なのだろうか?


「あ、あった!」


 あぁ、良かった良かった。探し物は無事見つかったらしい。

 それでは気を取り直して、


「我こそはチル・~以下略~・クマダリアン三世である!」

「なっが……。てか、自分の名前覚えてねーのかよ」

「ドヤ顔?可愛い……」


 しょうがないだろ。長い名前カッコいいという熊田の謎感性のせいで、チルのフルネームはピカソ並みに長いんだから!むしろ、カンペ見ながらとは言え噛まずに言えたことを褒めてやるべきだろう。


 ともあれ、冒険者チームからすれば肩透かしもいいところだ。特に良晴

や菊などとは違って、青木や竹中の二人は戦闘特化タイプではないのだから。『ワンチャン死ぬかも』とか覚悟して身構えていたのに、チルのこんな気の抜ける緩さ具合。緊迫感の緩急で風邪ひいちゃうよ。


「よ~、また会ったな。傷は大丈夫か?」

「お前が言うな!誰のせいだと思ってるの?乙女の柔肌に傷をつけておいて、責任取りなさいよ!」


 責任感取りなさい。チル的、人生で使ってみたいワード上位にランクインする言葉をここぞとばかりに決めていく。

 さすがは熊田の薫陶受けし者。


「それ、ちゃんと意味分かって言ってるのか?」

「馬鹿にするな!あれだよ、えーと……ほら切腹とか?」

「お前は武士かよ。つーか、お前のこと斬ったの俺じゃなくて姉貴――」

「そうよ良晴。アンタ責任取って腹斬りなさい」

「いや、おかしいだろ!」


 何故か実の姉に、言外に死ねと言われる良晴。あんまりチルに嫌われたくないな~という菊の心理が、良晴に罪をかぶせるという方向で事実を歪めようとしているのだ。


「お二人とも、姉弟仲を深めるのも結構ですが、もう少し真剣に……」

「そーすっよ。それにチルちゃんでしたっけ?傷物にしたんだから責任取れーってなら、良晴君がチルちゃんをお嫁に貰うって方が適当なんじゃないすっかね?」

「何言ってんすか竹中さん。勘弁して下さいよ」

「そうですよ。こんな馬鹿が相手じゃ、チルちゃんが可哀想ですよ。そうだよねー、チルちゃん」

「だから、もう少し緊張感を……」


チルのグダグダ登場シーンのせいで、完全に緩み切っている冒険者チーム。

――ッハ、まさかそれを見越しての作戦なのか?


「あ、あ、アタシが、けけ結婚!?ああああり得ないし。だって今日会ったばっか……。いいい、いくらアタシが美少女で一目惚れしちゃったからって、そんなの早すぎるし!」


 あれ、おかしいな。何だこの、ちょっと満更でもない感じ。


「……意外と感触良さそう?よかったじゃない良晴。念願の人生初彼女――いえ、初嫁ゲットのチャンスよ!」

「嫁って……こいつトカゲじゃん」

「なによ、トカゲでもチルゃんは、れっきとした女の子なのよ(たぶん)。アンタならイけるって。ほら、検索履歴にもその手のやつあったじゃない」

「勝手に変な属性付けないでくれ。俺はドノーマルだ!」


 年頃の弟の検索履歴を勝手に覗くとか、あまりにも鬼畜過ぎる所業。まぁ、流石に今の菊の発言は事実無根の口から出まかせである。

 良晴は、その手のことを検索したら速やかに履歴を消去するタイプの人間だし、そもそもそんなにレベルの高い趣向は持ち合わせていない。強いて言えば巨乳が好き、くらいのごく普通の平凡な性癖だ。

 だと言うのに、この姉ときたら……


「良く考えなさい良晴!ここでアンタがチルちゃんを嫁に貰えば、私が嬉しい。私が喜べば、アンタも嬉しい。ほら、誰も損してないわよ?」

「俺が損してんだよバカ!姉貴の中の俺のイメージどうなってんだよ……」


 俺はそんな極まったシスコンじゃねえんだと、声を大にして主張する良晴。


「いや、でも待ってください。案外アリかもしれませんよ」

「えっ!?あの、竹中さん?」


 まさかの援護に良晴は驚愕した。


「あー、その。……チルちゃんってマーリンの眷族である可能性が高いですよね?で、生前のマーリンはグリモワールを眷族に託したって言ってる。なら、ここでチルちゃんと友好的な関係を築けたら、任務遂行にググっと近づくんじゃないかと……ね、青木さん!」


 油断していた青木に竹中からキラーパスが飛んできた。多数決の原則で言うと、ここで青木がその作戦にGOサインを出せば、これから良晴は巨大トカゲを口説くという奇妙な行動を取らなくてはならない。

 彼女いない歴=年齢の女性に幻想を抱きまくってるピュアボーイにとっては、あんまりにも酷な仕打ちだ。

 しかし、竹中の言うことも割と理にかなっているからたちが悪い。

 

「(……すまない良晴君)そうだな。もともと暴走状態という話だったが、今のところ会話も通じている。それに戦闘をしないで済むならば、そちらの方が良いだろう。なら試してみる価値はありそうだな」

「嘘だろ……。青木さんまで」

「え、演技ですよ演技!あくまで、情報を引き出すためのね」


 良晴、孤立無援!もはやここにお前をかばってくれる仲間は居ない。


「早く、はやくー」

「うっせー姉貴。(ったく、任務終わったら絶対何か高い飯奢らせますからね!)」

 

 菊に背中を押される形で一人、前に出る良晴。きっと、フルフェイスの下では、ぎこちない笑顔でもしてるんだろう。


「あー、トカゲ――じゃなくてチル」

「な、何よ。言っとくけど、ちょっと強いからって調子に乗らないでよね。アタシはそんなに簡単に靡く女じゃないんだから!」


 典型的なチョロインの言動。まぁ、仕方ない。チルの好みのタイプは、強くて優しい人なのだ。

 とすると良晴は、優しいかはともかく、強さという点では十分以上に合格していた。

 案外チルから見た良晴は、年上のチョイ悪系イケメンに映っているのかもしれない。


「あーうん。分かった、分かった。それでちょっと聞きたいことが有るんだが――」

「私は美味しいご飯なら何でも好きよ。でも、一番はやっぱりお肉ね。生もいいけど、ちゃんと調理されてるのどっちも好き!」

「そ、そっか。じゃ、今度美味い肉を喰わせてやるよ……あのおじちゃん達が奢ってくれるからさ」

「ホント!わーい、チョー楽しみ!」


 親指で後ろを指す良晴。当然、向いている方向は青木と竹中の居場所だ。たとえ偶然でも復讐の危機は絶対に見逃さない。流石良晴だ。

 チルは見ての通りあの巨体だし、いくら掛かることになるのだろうか。

 竹中と違って養うべき家族を持っている青木は、顔を青くしながら指を折って何か計算している。


「いつ、ねぇー何時食べれるの?今から?今からがいいな!」

「あー、そうしたいのは山々なんだがな。俺たちは、どうしてもここでやらないといけない事が有るんだ。それが終わるまでは無理だな」

「やらないといけない事?それ何?どれくらいで終わるの?」

「そうだな、明日――いや、もしかしたらもっと掛かるかもしれないな」


 さも深刻そうな声色で話す良晴。コミュ障・陰キャのくせに、やたらと小芝居が上手い。

 おかげでチルもすっかり騙されている。


「えーヤダ。すぐがいい。すぐお肉食べたい」

「あぁ、そうだ!お前が手伝ってくれれば、スグに終わるかもしれないな」

「ホント?じゃーやる!アタシも手伝う」


 七歳児を言葉巧みに騙す20歳男性。字ずらだけ見たら、完全に犯罪者だなコイツ。

 だが、おかげで変に口説くようなことを言わないでいい流れを作れた。


「そうかそうか。じゃー、今からする質問に正直に答えてくれ」

「分かった!」

「そんじゃ質問だ。ここに住んでるのはお前だけか?」

「そうだよ。前はパパも住んでたんだけど、もう死んじゃったから、今はアタシだけ」

「パパ?そのパパの名前は何て言うんだ?」

「へ?パパの名前はパパだよ」


 何を当たり前なことを聞いているんだという空気。

 さっそく良晴は頭を抱えたくなった。


「あー、そうだな。じゃ、そのパパの事を教えてくれないか?」

「パパのこと知りたいの?」

「あぁ、どんなことでもいいから話してくれ」

「(何でアタシじゃなくてパパの事?……そっか!お婿さんはお嫁さんのパパに挨拶するのが礼儀だっておば、じゃない。お姉さんが言ってたっけ)分かった。話してあげる。だけど、アタシまだちゃんと(告白を)OKした訳じゃないから、勘違いしないでよね!」

「ん?あぁ、そうだな(OKって何が?)」


 まだ心は許しませんよって強がっているつもりなのだろうが、話してあげる時点で半分以上OKって言ってるも同然な気がする。

 どうやらチルは、コテコテのツンデレ少女なようだ。


「えっとね、パパはすっごく優しい人だったよ。いつもアタシに美味しいご飯をくれるの!あとね、アニメも一緒に見てくれるし、撫でてくれたり日向ぼっこ用のライトも買ってくれた!だからアタシ、パパのこと大好き!」

「そうか。他にはないか?例えば『魔法』が得意だった、とか」

「魔法?パパが?使えるわけないじゃん!魔法が使えるのは妖精と契約した魔法少女だけなんだよ。そんなことも知らないの?」

「(魔法が使えないだと?てか、妖精ってなんの話だ。魔法なんて五十半ばの青木さんだって使えるんだぞ?コイツが嘘をついてる……って感じじゃないよな。バカそうだし。ってことは、そもそもコイツはマーリンの眷族じゃないのか?)……そうか、すまん」


 良晴も色々考えてみたが、どれも憶測の域を出ない。

 それも当然だ。今チルが話した内容は、ただの国民的女児アニメの話なのだから。

 魔法なんて妖精と契約しなくたって使えるし、熊田だって当然使えた。ただ、娘の夢を壊したくなかったというパパの想いゆえに、チルの前では使えない風を装っていただけだ。


「じゃ、質問2だ。グリモワールって言葉に聞き覚えはあるか?」

「グリモワール?どこかで聞いたことあるような、ないような。」

「よく思い出してみてくれ。そうだな、パパが死ぬ前に何かお前に渡したりしなかったか?」

「……ううん。何も。パパは元気じゃなくなってから、ずーっとお家のリフォーム?っていうのしてて、あんまりアタシに構ってくれなかったから」

「リフォーム?パパが死ぬ前はどんな感じだったんだ?」

「うーんとね。もっと狭かったし、階段も動いたりしなかったよ」


 チルの発言を受けて、良晴は何かを思い出したのか後ろに振り返る。


「青木さん、確かこの館って」

「えぇ。確実に何らかの魔法の影響下にあります。お恥ずかしながら、何の魔法が使われているのかは全く分かりませんがね」


 そう言って力なく笑う青木。

 だが、大きなヒントを得た。


「つまり、この館の元住人――コイツのパパは、魔法の扱いに長けている」

「もしくは、そう言った者と縁がある。ということは間違いないでしょうね」


 青木は、国内でも魔法についてトップクラスの技術と知識を持つ人物だ。であるからこの任務のメンバーに選ばれたと言ってもいい。

 そんな青木でも、全く知らない魔法を使う謎の人物。

 

「そいつがマーリンである可能性は……」

「高い、でしょうね。空間を迷宮化させるなんていう高度な魔法は、他国にも存在しないと断言できます」


 魔法に関する知識を得る方法は皆平等である。

 すなわち、熊田が運営していたブログ『マーリンのグリモア日記』の閲覧だ。

 未だどの組織や個人でも、この知識の源泉を独占することは叶っていない。

 与えれた魔法を応用するにしたって、まだこの技術が生れ広く研究されるようになってか数年しか経っていない。

 つまるところ、どの国家間でも魔法については大した技術格差などなかった。


「なぁ、チル。パパがこの家をリフォーム知る時に、誰か客が来たりしなかったか?例えば、マーリンって言う人とか」

「マーリン?そんな人来てないと思うけど……。それより、まだ用事終わらないの?」

「あと、もう少しだ。なぁチル、マーリンって人以外でもいいから、誰かここに客が訪ねて来たりしなかったか?」

「えー、まだなの。うーん、ここに来る人なら、パパの知り合いだって言う変な恰好のおば……お姉さんと、あとは、アタシの魅力に悩殺されちゃった人かな」

 

 悩殺といった所で、セクシーなポーズ(チル的に)をとる七歳の♀トカゲ。


「あ!そう言えば、そのお姉さんがパパのことマーリンさんって呼んでたなぁ。変だよね、パパの名前はパパなのに」

「マーリン!」


 その言葉が出た瞬間、菊を除く全員が同時に声を上げた。


「わぁ、ビックリした。どーしたのいきなり。はっ!もしかして、さっきのアタシの悩殺ポーズで……。だめよ、アタシは軽々しく唇を許すような安い女じゃないんだから!」

「そんなものは要らん。それより、お前のパパのことで聞きたいことが――」

「あ?」


 低い声がした。とても、さっきまで萌え声生主のような声で喋っていた者と同一人物――同一トカゲとは思えない。殺気すら籠っていそうなドスの効いた声だった。

 

「アンタ今なんつった?アタシの唇が、そんなもん?しかも、要らないって……」


 次の瞬間、轟音と共に良晴が吹っ飛んでいった。


「ふざけんじゃないわよ!」


 勢いよく壁に激突した良晴に向かってチルが吠える。


「アタシは世界一の美少女なんだからね!舐めんじゃないわよ!」


 一方、大ダメージは免れないと思われた良晴だが、なんとその場でスクリと立ち上がって見せた。

 歩く足取りも確かなもので、全くの無傷らしい。


「いきなり何すんだよクソトカゲ。パパに人を傷つけてはいけませんって教わらなかったのか?」

「うるさいバーカ!お前が悪いんだバーカ!」


 もはや、ここからどうあっても戦闘は避けられないであろう。

 吹き飛ばされた良晴は、堂々とした態度で歩きながら仲間たちの前に立ってチルと向かい合った。

 ちなみに先程の挑発めいた発言は、殴られて苛立ったからとかではなく、チルのヘイトを自分に集めておくことで仲間を攻撃されないようにするための作戦である。

 まともにチルの攻撃なんて喰らったら盾役の良晴以外ワンパンだからと、冷静に考えての行動だったのだ。

 

「そうね、さっきのは良晴が悪いわね」

「……姉貴」

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