魔窟(まくつ)の住民達その一
1935年1月10日木曜日午前9時
帝都東京 扶桑国防技術研究所
扶桑技術研究所
そこは民間では扶桑の中でも選りすぐりの様々な分野の研究者や技術者達が、日夜様々な新技術の開発や新技術による新たな研究が行われているされる重要な研究機関である...もっとも実際の現場を知る者達はそこをこう呼び恐れている
魔境に住む人外共の住処である魔窟だと...
今そこに直哉は入ろうとしていた
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「ここが魔窟ねぇ...」
「ええ、人外共の住処です。」
執務がある神楽と別れた直哉は、神楽から付けられた監視兼護衛の女性近衛に連れられて研究所に来ていた
そこは外壁が蔦で覆われた刑務所と言った方が言い外見をしていた、周りにある建物は全て軍事関係の施設であり、そこを守る兵士達も外から守るというより内部からの脅威に備えるというような警備をしていた
「幸さん(女性近衛の名前、本名は清水幸)、これどっからどう見ても刑務所なんだが?」
「人外共を閉じ込めている点では同じですね、あいつら民間に放すと何しでかすかわかったもんじゃないので...なまじ有能な人外共なので首輪付けて研究させてます、行きましょう」
幸は直哉の突っ込みにそう答えると研究所に入っていった
直哉もそれに続いて入って初めに目にしたのは完全武装歩兵一個小隊が守る入口だった
「なんのご用で?」
隊長格と見られる兵士が入って来た幸と直哉に誰何の声を上げた
幸は右手を胸の心臓の位置にする扶桑式の敬礼した後懐から
「お疲れ様です、神隠しによって来た挙句に陛下に見初められた直哉近衛武官殿をお連れしました。」
神楽からの命令書と許可証を兵士に渡した
「拝見致します...あなたが直哉殿ですか、新聞で拝見しました、世間では大騒ぎですよ『あのいつも突拍子も無いことをして婚姻出来ない我らが皇帝陛下が婿を見つけた』と」
兵士はそれに返礼し、命令書と許可書を確認しながらそう直哉に告げた
直哉はその話を聞き
「神隠しじゃなく婚姻した事に大騒ぎするのか...てかあいつ何してんだ?」
どういう事か幸に尋ねた
幸は溜息を吐き昔を思い出す様に話し始めた
「色々しました、私陛下の幼馴染なんで付きあわされましたよ...
ある時は皇族なのに学校帰りに駄菓子屋いって毒見せず駄菓子食べたり、ある時は護衛を撒いて銀座で歌舞伎を見ながら売っている幕の内弁当や相撲を見ながら焼き鳥弁当を食べたりしました、皇帝になったら視察先のおばあちゃんに誘われてお茶ふるまってもらったりしましたね
一番ありえないのは皇帝の座を受け継ぐ前と受け継いだ後もよく御所を抜け出しては近衛御用達の安くてうまい居酒屋で酔っ払っている近衛に混じって宴会したり...
いつもそういう時毒見とか私してたので学校卒業した後大帝陛下から『あの子の面倒を見てやってくれ』って言われて近衛に入りましたからね、まあ大帝陛下もその居酒屋よく行ってましたが...
挙句の果てハワイ王国の女王へのもてなしにも使われましたからね、今じゃその居酒屋では皇族や他国の王族がいても何の違和感も持たれませんよ。」
「あのアホ何やってるんだ、銀ブラ事件以上の事してるじゃねえか。」
直哉は頭が痛くなったのかこめかみを抑えながらそう呟いた
ただ兵士は
「まあ、そんな行動のおかげで陛下は今じゃ『国民全員のやんちゃ娘』や『国民全員の家族』とか言われ国民に愛されています、もし仮に陛下を他国がバカにしたり屈辱的な事をすれば手が付けられなくなるでしょう...なんせ国民からみたら直に生活とかの問題を聞いていただけるんです、しかもそんな意見を参考にして問題を解決してしまいますからなぁ、怒れませんよ、大帝陛下も公認なされていますし。」
と言った幸と直哉に研究所の扉を開けた
「確認が取れました、どうぞ...直哉殿、お気を付けて。」
「え? なんでえぇぇぇぇぇぇぇ!」
兵士の言葉に疑問の声を上げた直哉だったが、扉の奥から伸びてきたたくさんの手によって奥へと連れ去られていった
幸は
「やっぱりこうなったか...」
と言い歩いて行った
終わらなかったぜ




