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【始まりの森中級区】裏

「ミリーシャ、加速バフお願いっ」

 ラミラは金色の狼の攻撃を盾で受けながら右手で持つ片手剣で反撃する。

「了解、ラミラに【加速付加】」

 杖を持ち黒いトンガリ帽子を被るローブの女の子は金髪ツインテールの少女に杖の先を向ける。

「俺は先いくぜ。【三連無双】!」

 斧を両手で持ち狼の懐へ走る青年はレイズ。

「レイズのバカっタイミングが早すぎよっ」

 ラミラは【加速付加】の効果により青く光を纏い、金色の狼の背後に回り込み動きを牽制する。



 黒髪の青年は金色の狼に斧を大きく振りかぶり、右足を前に出すと同時に斜め右上から重い一撃を食らわす。その勢いを殺さず体を軸にして斧と左足を反時計回りに前へ出す。左足を踏み込み斜め右下から振り上げ、最後に振り上げた斧を素早く持ち替え右足を前にだし左斜め上から叩きつける。動作が終わるまで約五秒だ。


「目が回る。気持ち悪い」


 レイズは目を回しふらふらと頭を揺らしていた。


「アンタね。三半規管揺らすような技使ってんじゃないわよっ」


 金色の狼は大きく雄叫びを上げる。周囲に張っていた結界は崩壊する。

「やべっ、俺まだ【加速付加】貰ってない! ミリーシャ!」

「でもっ、今するとっ」

「無視よ。炎攻撃が優先、逃げられるわよっ!」


 金色の狼は白い光を纏う。


「ミリーシャ!」

 ラミラは叫ぶ。


「はいっ、【フレイムシャベリン】」


 杖を光らせ、ミリーシャの頭の上に炎の槍ができる。杖を振り下ろすと炎の槍は狼を貫くと同時に金色の狼は彼等とは真逆の方向へと走り出した。


「月光狼に逃げられだぞっ」

「あんたのせいでしょ、とにかく私は追いかけるわよ」


 金髪ツインテールの少女は走り逃げた狼を追う。


「ミリーシャっ! 俺にも【加速付加】くれっ!」

「だめ、ここ炎優先」


 杖を光らせ炎の槍を作り出す。【気配感知】により狙いを定めて投げ飛ばす。


 ***

 

 二度目の炎の攻撃により金色の狼は動きが鈍くなる。【加速付加】と【加速】を重複させAGI200を一時的に240したラミラより狼が少し速い。


 【月光狼ライトウルフ】はHPが瀕死域になると白い光を纏い設置型のスキルを破壊して逃走する。

 白い光を纏うとHPを1000ずつ回復して炎攻撃をうけるとステータス減少デバフ状態に殆どの確率でなる。


 【月光狼ライトウルフ】は【始まりの森】においてランダム周期でマップの何処かに現れるシークレットモンスターだ。今までの目撃情報は今回の遭遇を含めず二回。


 【月光狼ライトウルフ】の討伐報酬はパーティー全員に特別な装備ととあるスキルの解放である。


 彼ら三人は一ヶ月前から【始まりの森】に隠り、【月光狼ライトウルフ】の捜索をしていた。遭遇できる確率はかなり低い。


 そして今日、彼ら三人は【月光狼ライトウルフ】と遭遇したのだ。


「【震・音切り】」


 ラミラは技を使うため走りながら強く足を踏み込んだ。彼女は助走の勢いを乗せた片手剣を縦に振るうと、空気を切る音の刃を飛ばす。剣を振り下ろすと同時に転倒した。


 音速の刃は金色の狼の右足に直撃すると体に伝わる振動で麻痺状態になる。


「何寝転がってんだ。ラストは俺がいただくぜっ」


 仰向けに倒れたラミラを放置してレイズは斧を片手に麻痺状態の狼へと走る。彼はミリーシャから【加速付加】をもらい、追いかけてきたのだ。


「バカっ、【震・音切り】の麻痺効果は攻撃しない限り十五秒もつのよ。って聞いてないか」


 レイズの一撃は狼の頭部へ刺さる。麻痺から解放された狼は走り出した。


「あれ?」


「バカっ、足を狙いなさいよっ。とにかく追うわよ」


 ラミラは立ち上がり狼を追う。【加速付加】の効果が切れ【加速】のみ使っている状態だ。レイズは【加速】と【加速付加】の影響を受けているがラミラより遅い。


 狼と距離を離し二人は焦る。このエリアにいるのは雑魚モンスターと低レベルなプレイヤーくらいで、狼に攻撃してもダメージにならないだろう。もし、高レベルプレイヤーに遭遇されたら今までの努力が無駄になる。


「【フレイムシャベリン】」


 背後から炎の槍が狼の足を襲う。ミリーシャの遠距離攻撃魔法だ。射程が長くなるほど詠唱も長くなり、狼が麻痺した瞬間には打ち出していた。

 炎の槍が二発三発と貫くと足を引きずり逃げる。最後に炎の槍が狼の体を貫くと纏っていた白い光は拡散した。この状態まで持ち込めば狼は最後の悪あがきで最も近くにいるプレイヤーに襲いかかる。


「ラストいくわよっ」「おうよっ」


 金色の狼は予期せず方向へと敵意を向けた。


 ペチと柔らかい音と共に倒れ、光の粒子へと化した。



 

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