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【月光狼】1

 土方充ことツミルは突然の出来事に混乱していた。金色の狼を鞭の一撃で倒したことを含めてだが、一番混乱したのは経験値が【25000】獲得したことだろう。


 levelは14から25へと上がっていた。


「横取りされたぁ! くそっ」

「あんたのせいよ。考えなしに攻撃するから」

「寝転がってた奴に文句言われる筋合いはないな」

 

 狼が来た方向から二組の冒険者が歩いてくる。一人は片手で斧を持つ黒い短髪の青年。もう一人は金色ツインテールの中学生くらいの少女は片手剣と盾を装備していた。


 ツミルは二人組と目を合わせる。


「ねぇ、そこのあんたさ」

 金髪の少女は右手を大きく振る。

「てめぇ、普通にシークレットモンスター横取るとか鬼かよ。このハイエナ野郎」

「こらっ、怯えてるわよ。どうみたって野郎じゃないでしょ」


 金髪の少女は青年の脛を蹴る。青年は期限が悪いようにツミルを睨んでいる。


「これは……」

 理由は分からないがとにかく逃げるべきと彼は判断する。手を動かしメニューを開く。


 金髪の少女はツミルの行動を悟ると片手剣を構え、振るう。


「【震・音切り】」


 風切る音は刃と化してツミルを襲う。ログアウトに触れようとしたとき、刃は直撃する。

 

【MISS】


 中級区ではプレイヤーの攻撃によってダメージは発生しない。しかし、追加効果は別である。音の刃は体に響きツミルは麻痺状態になる。


 動きを止められログアウトができない。


 金髪の少女はツミルとの距離を詰めると下から覗き込むように顔を上げる。


「ログアウトしようとしてたよね?」


 少女の笑顔が怖い。ツミルはそう思うと緊張のあまり気が動転する。

「そんなに怖がらなくてもいいのに」


 少女は拗ねたように頬を膨らませる。

 システム的には可能だが体を動かすことができずログアウトができない。その事実がツミルの心臓の鼓動を早くする。


 ━━精神状態に異常が発生しました。強制ログアウトを実行しますか?


「あれ、何か顔色悪くない? って、待って危害とか加えないからっ!」


 金髪の少女はその青い瞳でツミルの緊張しきった顔を捉えると彼の腕に剣の刃を当てる。ツミルは麻痺状態から解放された。


 ツミルの視界は黄色く点灯していている。状況が分からないが体が動くことにツミルは安心すると、視界は元に戻った。

 

「えっと、あの、ごめんなさい」


 とりあえず謝るのはツミルの癖だ。早々にログアウトしようと腕を動かす直後、両腕を握られる。少女の腕を振りほどこうとしても微動だにしない。


「だから、待ってて言ってるでしょ」


 先ほどまでの柔らかい表情からは想像できないほど少女から鋭く睨まれた。


 蛇に睨まれた蛙のようにツミルは委縮する。


「ラミラ、中級区でもプレイヤーに不快な思いさせてたら通報されるよ」


 優しい声音を響かせ、トンガリ帽子を被るローブの少女が森の奥から現れた。


「ミリーシャっ、私悪いことしてないわよ」


「いやいや、ログアウトをさせないために動きを止めるのは迷惑行為の一つだろっ」


 短髪の青年は呆れた声でラミラと呼ばれる金髪の少女に近づく。

「馬鹿のレイズにまともなことを言われるなんて」

「俺は馬鹿だがルールは守る」

「罵倒も通報ものよ?」

 金髪少女は細い視線でレイズと呼ばれる斧使いを見る。

「あれは言葉の綾だっ」


 自分の行為により誰かの敵意を買ってしまったとツミルは悟る。リアルでもそうであり、何気ない行動で誰かの敵意を貰う。いつからか人と接するのが苦手になっていた。


 ツミルは逃げられないと悟るとどこか冷静になる。物事はなるようになるとログアウトを諦める。


「あの、何が目的ですか?」


 どこか冷たくその瞳に光はない。


「目的って、私はただ君と交渉がしたいだけなのよ」

「交渉?」

「そうっ、私たち三人ね君が倒した【月光狼】に会うために一ヶ月費やしてやっとの思いで遭遇したの。後少しで殺れるっておもったら今までの苦労を君にとられたのよ」


 ラミラの主張を聞くとどう考えても自分が悪いとツミルは悟ってしまう。


「交渉って何を渡せばいいの? 所持金は300ペルくらいしかないよ。リアルマネー渡せって言うなら無駄だよ。ログアウトしたらすぐに運営に訴えるから」

「違うよ。発想がひねくれてない? 君が【月光狼】からドロップした装備の交渉ってこと」


 ツミルは何のことか分からず眉をひそめた。

 ドロップ品は自動的にアイテム欄や装備欄へいく。初めて一週間のツミルには理解するまでに時間がかかる。

 ツミルはアイテム欄を開きドロップ品を確認する。

「【月光狼の牙】と【月光狼の毛】のこと?」

「いやいや、それもレアちゃレアだけど【装備】ドロップしてない?」

 ツミルは言われるがままに装備欄を開くと見たことがない装備が十三個ほど追加されていた。


「何これ?」


【月光・三日月斧】【月光・鞭紅蒼月】【月光・双刀水面月】【月光・餅鎚】【月光・影苦無】【月光・月読杖】【月光・新月槍】【月光・無弦】【月光狼のフード】【月光狼の腕輪】【月光狼のコート】【月光狼の耳】【月光狼の尾】

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